私には常に「テルミ―後悔」というのがあります。

あの人にテルミ―をしてあげればよかった、もっと何回もやってあげたかった…という後悔です。

叔母もその一人です。

大腸がんで亡くなった叔母には、たった1回しかテルミ―をやってあげられませんでした。

言い訳をすれば、場所が福島で遠かったことと子どもがまだ小さかったと言うのが行けなかった理由です。

家族のいない叔母は私を子どものように可愛がってくれたので子育てが落ち着いたら恩返しをしたいと思っていた矢先、大腸がんが発覚したのです。
子どもが夏休みになってやっと行けた時はもう手遅れで大腸は腫瘍だらけで膨れ上がり複雑にねじ曲がり絡み合ってどうしようもない状態でした。

叔母は一人きりで暗い部屋に横たわっていました。
枕元には大量のかき氷を食べたカップがありました。
これしか食べられないと言っていました。

なんでこんなになるまで放っておいたんだろう。

私が一緒に住んでいたら絶対にこんな状態にはさせなかった…と無念の思いでテルミ―を掛けました。

叔母はグッタリとして話す気力も無さそうで「そんなことしても無駄だ」と言いました。

掛け終わったあと、梅しょうがの醤油番茶を入れてあげると、
「美味しいね~、こんな美味しいものがこの世にあるんだね」
と本当に美味しそうに飲んでいました。

こんな番茶一つを宝物のように飲んでいる叔母の姿を見ながら申し訳なさが込み上げてきました。

しかし、奇跡が起こりました。

翌日、叔母の家に行くと、叔母がきれいにお化粧をしてスクッと玄関に立っていました。
「ゆっこちゃん(私)テルミ―ってすごいね~!」
と昨日とはうって変わって張りのある声で昨日何ヵ月ぶりかで便が出たと喜んでいました。

いつも、テルミ―は掛けた本人が面食らうほどの効果をもたらします。
でも、さすがにこの時は本当に驚きました。

私にもたれ掛かりながらもしっかりとした足取りで病院へ向かいそのまま入院しました。

でも、それっきりまたテルミ―を掛けることなく叔母は亡くなりました。

あのまま毎日テルミ―をしたり手当てをしたらもしかしたら良くなったのでは…とか考えると今でも落ち込みます。

こんな後悔は二度としたくないと思ってしまいます。