ム  03













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頭を働かそうとするも、やけに重たく鈍く感じる。





(あの映像は・・・・これから起きる事を示しているのか・・・?)





そのあまりの鮮明さに、一度ここへ来たことがあっただろうかと、自分の記憶だったのかと自分に問い始める。





すると金庫の横に座っていた女将は着物の裾を掴みながらすっと立ち上がった。

そしてそそくさと部屋を出て行った。

母のネックレスは首につけたまま・・。






(・・・・!!)




はっと我に返る



このままではさっき見た通りになってしまう、そう感じた瞬間私は女将の後を追いかけた。




襖を開けて部屋から飛び出ると、女将は階段を降りていくところだった。





「お前っ!!!!」



母の泣きすがった顔を思い出して、苛立ちながら相手の肩を掴んで振り返らせた。




女将「っ・・・・・・!!」




ビクッと体を震わせて女将は目を見開き、私が目の前にいる事が予想外だとでもいうかのように硬直したままだった。



(・・・・なんで・・・・立って・・いる・・・・)









「自分が何したかわかってんのか!!!」




私が怒鳴ると、女将は途端に表情を変えた。

私が苛立ちを隠せないでいるのを楽しむかのように、女将は不適な笑みを浮かべていた。




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(・・こいつは・・・今の状況を楽しんでいる・・・?)


手を相手の襟に持ち替えて、間髪入れずに相手の顔目掛けて打ん殴った








女将「っ・・・・・・・・!」





咄嗟のことに反応できず、私の拳は見事に頬に命中し、女将は反動でその場に倒れる。


殴ってもなお、高ぶった気持ちが収まらない。






「はぁっ・・・・・はぁ・・・・・っ・・・・」





荒立った息を落ち着かせる


女将はまだ状況が飲み込めてないと言わんばかりに、放心しきった様子でいた。

まだ怒りを抑えきれない私は、相手の胸倉を掴みあげた。





「・・・・ふざけんなよ・・・・・。」





女将の胸元で暗く濁った石のネックレスを掴み取ると、女将はおびえた様子で階段を駆け下りていった。



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女将の姿が見えなくなったとたん、スイッチが切れたかのように気持ちは静まっていく

私は階段の手前でぺたりと座り込んだ。





(どうして・・・あんなに・・・・苛立って・・・・・・)




自分でも理解できなかった。

その収集のつかない程の威力で、自制が追いつかなかった。





(まるで薬にでも侵されたような・・・・)




自分でも歯止めが利かなかったことを疑う。






(・・予知のような映像といい、自分では制御しきれない気力といい、、。変だ。・・・・・・まさか操作・・・・・されている・・?)






そんなことはないだろうと余計な気持ちを振り払うように大きく頭を横に振った。

そしてネックレスを手に握り締めて立ち上がり、振り返って部屋へ向かった。





??「ヒナ」





顔を上げると母がやわらかい表情で私のほうを見ている。


母は私の手の中にネックレスがあるのに気づくと、にっこりと微笑んだ。





(あ・・・・・・・・・・)





頭の中で加点の音が鳴り響いた。






(・・・・この音・・・・・・・)




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