先日、テレビを観ていると、本のカバーのデザインを専門家が解説していた。夏目漱石の『こころ』は出版当初、タイトルは漢字で、いろいろな書き方がされていたらしい。(本のカバーの漢詩は漱石の自筆らしい。)
そんなマニアックな話を聞いていたら、無性に夏目漱石が読みたくなった。その場で、夏目漱石の本を3冊、Kindle にダウンロード。
こういう時、夏目漱石は版権が切れており、Kindle版は無料なのが嬉しい

まずは、『坊っちゃん』。そのテンポの良さと、極端な無鉄砲さ、竹のように真直な人間性に、心が洗われていくのを感じる。何度読んでも傑作だ。
先日、職場の同僚と2人で飲んだ時、「どうしたら君みたいな人間が育つのか、君の親にお会いしたい」と言われた。
本音かどうかわからないが、私を褒める文脈だ。気分を良くした私は、自分の親はどんな子育てをしていたか振り返ってみた。
私の両親、特に母親は私の事ばかりで、子供としてはそれが窮屈でしょうがなかった。いま思うと常に愛情が注がれていた。
反抗期にグレたいという気持ちがあったが、自分の周りの大人(特に両親)は真面目で良い人だったから、グレる理由が見つからなかった
(笑)

そして、今の自分がいる。
では、当該本の主人公(坊っちゃん)は?
もちろん、フィクションではあるが、この真直な人間性の背景には、親から見放され、兄から冷たい目で見られていたにもかかわらず、一心に愛を注いでくれた「清(きよ)」(下女)の存在が大きい。そして、主人公の清に対する愛が、この物語に明かりを灯し、心の安らぎを与える。
赤シャツや野だのような邪念の塊のような人間に対する憤りや、性格の悪い田舎の中学生に対する苛立ちに相対するものとして、清への愛が描かれている。
この主人公の性質は、最後まで変わることがない

この本を読み終えた時、自分の中で存在が大きくなっていたのは、両親への感謝の気持ちだった
