今回は上司から借りて読んだ本を紹介します。
『日本エリートはズレている』道上尚史著(角川新書、2017年)
http://www.kadokawa.co.jp/product/321605000643/
この本の著者、道上氏は在ドバイ大使。これまで在中国大使館公使、在韓国大使館総括公使を務めた外交官です。
この本は外交官として海外に駐在し、外から日本を見つめ、駐在中に多くの外国人との交流を通じて日本人の問題点を肌で感じ、現在の日本人に対して警鐘を鳴らす。
その論調が、政治思想から距離を置き、交流した外国人の言葉や多くの事例を紹介しながら浮き彫りにしていく手法をとるため読みやすい。
私は天の邪鬼で、他人に自分の問題点を指摘されると、一瞬カッとなってしまうタイプだが、この本を読んでいて著者の指摘する下記の点については、ミョウに納得してしまった。
<現在の日本人が陥ってしまっている問題点>
①「日本、イチバン」という錯覚
②日本は”超絶国際化”したという誤解
①とは、戦後、日本人の先輩方(自分の祖父や父親世代)が復興のために必死に努力し、培ってきた日本の地位が、必死さが失われたその後も恒久的に続くと思い、先輩方と同じように必死で努力をしている中韓、中東がすぐ背後までに迫ってきていることに気がつかず、見下している(少なくともそのように思われる)姿を指している。
この指摘は、大変重要な指摘だと思う。
私は2012年から2016年までベトナムに家族とともに駐在していた。この間、3年周期で駐在員が交代する日本企業に対し、期限が言い渡されていない(「成功するまで帰国するな」と言われているかのように思われる)韓国企業とでは、その存在感に大きな差があることを感じた。
これは、日本人は英語すらできずに日本語のできるベトナム人を雇いビジネスをするのに対し、韓国人は半年間、現地の大学が開講しているベトナム語クラスに通いベトナム語を習得し、現地の人々の生活に入り込んでビジネスをしていることにも表れている。(日本語のできるベトナム人には優秀な人が多く、一緒に働くメリットは多いのだが)
②とは、日本は中国や韓国などの他国よりも国際化していると誤解しているという指摘です。
日本人が「自分たちは国際化している」と考えているかは疑問だが、少なくとも私は「国際化できていない」と考えているが、ここでの指摘の重要な点は、「日本は国際化していない」という事実です。
この要因として、日本の市場が大きいため、外国へ目を向ける必要がないことが考えられる。しかし、高齢化社会の進行、周辺諸国の急速な成長の中、将来、日本の市場がこのまま大きい状態であるとは思えない。
この「国際化できていない」という事実が、将来の日本(自分の子供達や孫達の世代)において、韓国が直面し、もがき苦しみ努力を重ねている状況と同じ状況を生み出しかねないのです。
そこで、著者は日本人に対して、優しくアドバイスをしています。
我々日本人がこれまで上述のような問題を抱えながら、今の地位を維持しているのは、皮肉ではなく、日本人の凄さを示していると。そして、日本人は自分の問題点を冷静に評価し、それを修正する能力も有する。上述の2つの問題点を把握し、冷静に対応(発展のための努力を)すれば、また、日本の発展が期待できると。
日本のさらなる発展のため、子供達や孫達の未来のため、日本人の先輩方と同じように国際社会の中で努力をつづけよう、そのように考え、気合いが入った一冊でした。