ブッククラブ第三回は先回に引き続き、”崩れゆく絆” 今日は物語の後半を語った。
今日はクリームパフ(日本で言うシュークリーム)をオーダー。
サイズも大きくて、はみ出んばかりのホイップクリームといい、見た目は良いのだけど、味は今ひとつ。
今度は違うスイーツを選ぼう。(これがブッククラブへ来る楽しみのひとつ)
出席者は私、ホストのカサウン、二人の常連紳士、カサウンと音楽活動をしている美しいジリアンさん。
彼女はカサウンがプロデュースするバンドでボーカルをしている。そのほかにも舞台女優をしたり、いろんな活動をしているようです。
なんだか若い頃のホイットニーヒューストンを思わせるようなスレンダーなアフリカ系アメリカ美人。
ディスカッションの最中、わたしが作者アチェベ氏のスタンスを”キリスト教側にも立たず、部族文化にも立たず、とても客観的”という持論を展開、
それに対してホストのカサウンから
”僕はそう思わないんだよねー、それに関して,どうして君がそう思うに至ったか、質問をしたいんだけれど、”
というするどい突っ込みがあり、返答の準備をしようと思考を巡らしていた所、他のメンバー達がいろんな持論を展開、なんだか流れ的にカサウンが私に質問をしにくい感じになり、成り行きで他の話題に行ってしまった。
実は私も言い足りない事があった。私とて作者アチェベ氏が徹頭徹尾、第三者的スタンスを取っていたとは思わない。
しかし少なくとも表面的には、彼は最後までどちらの文化にも深く偏りせず、第三者的な立場を取っていたと見える。しかし最後の最後でミステリアスなどんでん返しが。。
ナイジェリアの部族で尊敬される地位に上り詰めていた勇敢な男オコンクオ。
生まれ育った村にイギリスからの宣教師が入って来て人々の心をつかみ始める。
最初は部族の主立った人々も、変な宗教として無視していたがキリスト教への改宗者が増え、キリスト教の宣教師やその組織が政治的な力まで持つようになり、部族の崩壊をおそれたオコンクオは他の村の有力者とともに教会に威嚇をしに行く。
しかしキリスト教組織側からひどい報復をされる。威嚇をした村人たちはとらえられ,さんざん暴力を振るわれ、牢獄に押し込められて辱めを受ける。やっとの思いで家族達からの身代金で釈放される。
ある日オコンクオは村のマーケットでいろいろないきさつの後、衝動的にそのキリスト教団のメッセンジャーを殺してしまう。
報復を恐れた彼は、追っ手が来る前に自宅に逃げ戻る。キリスト教団の追っ手が来たときには、彼は自宅の裏庭で首を吊って死んだ後。
その彼の死体を見た白人キリスト教団の長官が述懐する:
わたしはアフリカのさまざまな地域で、文明をもたらすらめ、大変な苦労をしたものだ。
そのうちこの経験を本にしよう。メッセンジャーを殺して首を吊ったこの男の話はさぞかし面白いエピソードになるだろう。
その本でこの男の話の為に一段落ぐらい費やしても良いだろう。でもその本には他にもいっぱい書くべき事があるから、”細部”は省略しなければ。
本のタイトルは、”南部ナイジェリアの原始部族の和平交渉”できまりだ。
長官のこの述懐で物語のすべてが終了する。なんというどんでん返し。作者は長官の声を借りて、征服者側のメンタリティーを痛烈に批判しているのだ。
征服される側の悲劇も屈辱も、かれらにとってはいっぺんのおもしろいエピソードに過ぎない事。
制服された側は声を持たず、当時の記録として私たちが受け取るのは、それら”細部”を省略された、未開の原始部族が見事に啓蒙され、文明人になっていく物語。
その他にも,メンバーから上がったのは、特定の時代(19世紀半ばくらい)のナイジェリアという特定の場所にこだわり、具体的な儀式や生活ぶりを生き生きと伝えているにもかかわらず、親子の葛藤や、社会の枠組みが変わるときに適応できない人の悲劇など、普遍的なテーマを伝える文学にもなっている。
なにか、特殊な事や個人的な事にこだわって、突き詰めて行けば行く程、それが普遍的に、説得力のある作品になって行くのではないか、という意見。
それから、そのグローバルな展開に関連しての面白い意見は:
キリスト教の聖書と、古代エジプトの死者の書、そうしてチベット仏教の死者の書で同じ事が書かれている。天上の高みに達するには、最初に深くもぐらなければだめだと。
いろんな意見が聞けて面白かったです。ちょっと残念だったのは、ジリアンの次の仕事が決まって(演劇公演)彼女がしばらくブッククラブに来れなくなった事。
来年の五月までアラバマ州で、彼女の所属するシアターの公演があるそうです。
詳細はまだ未定だけど、今決まっている出し物はシェークスピアの”十二夜”と”マクベス”だとか。
ハグしてお別れ。次回はお土産話を聞きたいものです。
カサウンからは、次回のブッククラブの課題図書の告知が。
次の本は:トマス・モアのユートピア(Utopia by Thomas More 1516)
がんばって読まなくっちゃ。