猫と裁判 | マリアの憂鬱

マリアの憂鬱

Maria in gloomy time

原作を読んだあとの観劇。

原作では描写の少なかった和也が、動き回り、物語を進める。他の皆が動かない法廷を悠々と歩む和也、自分の声が聞こえないはずの相手に問いかける和也、舞台ならではの演出が際立ち、彼が生前とった行動に辻褄が与えられた。

断罪者を気取っていた彼は検事に代わり、求刑した。だけど裁きを与えるのは彼ではなく、判決を言い渡すことは出来なかった。そんな皮肉な終わりに見えた。
最後の笑みは満足の表れなんだろうか。一人の馬鹿を始末してやったと、充ちたりた気分だったのだろうか。死してなお、彼は万能感の呪縛から抜け出せないままだったのだろうか。それとも、死んだあと、彼は望んでいたとおりの特別な存在になれたんだろうか。