今回製作したアンプで毎日の様に聴いている。部屋は12畳の洋間だが音量を上げて聴くことが多いので、取り敢えず出力だけでも測定しておこうと思った。
折角シャーシーを裏返すので初段増幅管の供給電圧を上げて出力電圧を稼ぐことにした。
12AX7は6SL7の改良型と云われている。小型になり増幅率も上がった。ヒーターカソード間の耐圧も上がった。ところが無歪み出力電圧となると6SL7の半分近くまで下がってしまっている。ただ歪みは殆どが第2調波なので単体で歪みが多くても2段重なると相殺され低下することは充分考えられる。
小型化はアンプを製作する立場からするとソケットの電極間が狭くて老眼ではハンダ付けが大変である。
出力は5.6Wと計測された。ソフトデストーションなので出力は更に増加していく。
方形波は問題無かった。10kHzではほんの少しリンギングが見られるがこれはOPTの特性と思われる。
以上はボリューム最大で測定した状態でありボリュームを絞ると10kHzの波形は完全に変形してしまう。高域が減衰してしまうからである。でも聴感上は気にならないと云うか判らなかった。
良いアンプは電源がしっかりしていること。回路がシンプルで明快な事。構成部品が充分吟味されていることだと思う。
改造アンプがようやく完成した。
電圧チェックを済ました段階で試聴したが低域が延びメリハリの効いた音に生まれ変わった。先ずは成功である。
設計では初段の12AX7カソードバイアス抵抗器に1.8kオームを使用したが
電圧が低く1.14ボルトだったので300Bをドライブするに必要な出力電圧が取れない。
出力電圧は(カソード電圧-0.7ボルト)X(増幅度)で計算できるから増幅度を70取れたとしても出力電圧は31ボルトと計算出来 結局出力は4ワット弱と小さくなってしまった。
このアンプに使用している部品はトランスがタンゴ、平滑コンデンサーがセラファイン、バイパスコンデンサーがブラックゲート、抵抗器は金皮、酸金、カーボンと混ざっているのは手持ちの関係である。抵抗器を除けば現在はメーカーが廃業や製造中止で入手不可能の物ばかりである。
好みの部品を使用したアンプなので大切に使用しようと思う。
部品箱をひっくり返してみたら3.3kオームの抵抗器が見つかったので1.8kオームを3.3kオームの抵抗器に交換することにした。
カソードバイアス電圧が1.45ボルトになり出力電圧も計算上53ボルトとなった。
まだドライブ電圧は不足気味である。
初段管の出力電圧にそれ以上を要求した場合は初速度電流がグリッドに流れ込むため歪みが急激に増加することになる。この辺が増幅段数1段アンプの難しいところで有る。
現実にはフルパワーで音楽を聴く事は無いのであまり神経質になる事も無いと思っている。
その内気が向いたら測定してみたい。
それにしてもアンプ製作は大変な作業である。鉄と銅のかたまりであるトランスが4個も乗って居るのだから兎に角重い。測定にはシャーシーを裏返す必要があり測定には気が重い。
私がタンゴに始めて出会ったのは大学1年生の時であった。中間試験を受けていたが開け放した窓からはそよとも風が無く答案用紙に汗がしたたる様な暑い日であった。
そんな時どこからともなく音楽が流れて来た。
思えばその頃までまともな音楽と云うものを聴いた事が無かった。
戦時中は音楽を聴く事自体禁止で、僅かに軍歌は唄ったり聴いたりすることが許されていた。
そんな時代に育ってきた私は音楽に興味が持てずにある期間を過ごしてしまった。
さて流れて来た音楽はあとで調べたらタンゴで「さらば草原よ」であることが判った。
当時タンゴが全盛で「ラ・クンパルシータ」を知らない人はいないと云った時代であった。
タンゴは元々アルゼンチンの場末から生まれた音楽と踊りでみだらなものと評価されていたが、ヨーロッパに渡り洗練され日本でも愛されるようになったと聞いて居る。
当時私もタンゴの虜になった。
友人がダンスに凝ってダンス教室に通い私も誘われたが、私には踊りの素質が全く無いことを知り直ぐに止めてしまった。
ダンス教室で使って居たタンゴはバルナバスフォン・ゲッツイの「碧空(あおぞら)」であった。
バルナバスフォン・ゲッツイの「碧空」は珠玉ものだが今ではLPでもSPからの焼き直しで聴くしかない。
日本でも「早川晋平とオルケスタ・テピカ・東京」を初めとして幾つかのタンゴ楽団があったし、藤沢蘭子はアルゼンチンでもトップクラスの歌手だった。
現在タンゴを生で聴ける機会が少なくなってしまったのは誠に残念である。
映像ではカルロス・サウラの「タンゴ」がDVDで入手出来る。全編タンゴの踊りは洗練された素晴らしいものである。

絵はCDのジャケット写真をモデルにして描いたもので古き時代のショーダンスと思われる。
アンプ製作の方はハンダ付け1点毎に虫眼鏡でチェックしているので捗らない。おまけに寒いときは作業をする気分にもならないので未だ時間が掛かりそうです。作業する姿勢も悪く足腰を痛める度合いも寒いと増す様です。


