勇気を出して書いた手紙は、恩師の元に届き、恩師は電話をくださいました。
先生とは年賀状で40年以上も繋がっていたものの、改めて手紙を出すことに少しだけ勇気が入りました。
「会いたい」という気持ちをどう伝えたら良いのか........
いくら年賀状で繋がっているとは言え、突然「会いたい」などと言い出されたら、びっくりするでしょう.......
そんなことが私の頭をよぎったからです。
今日も短いので、最後までお付き合いくださいね。
耳元に聞こえる先生の声には、力強さがありました。
しかし、だんだんと言葉を選ぶように話されます。
来てもらっても、お茶を出すにも よたよたしてしまい、足元がおぼつかないから....
それが先生の答えでした。
「おもてなしなんて、いらないです。
お茶なんていらないです。
ただ、お目にかかってお話ができればそれでいいのです」
心の中でそう思いましたが、それをそのまま伝えることができませんでした。
「..........お伺いしたら、ご迷惑がかかってしまうのですね」
私の問いかけに、5秒ほど沈黙があったあと、
「そうです」と、先生は言いました。
来月の3月には94歳になられるという先生。
2年ぐらい前からだいぶ、弱くなってしまったそうです。
普段は、近くに住む子供さん達に、買い物をしてきてもらったりしているようです。
でも、「耳と口は元気」
「いつでも何かあったら電話をしてきていいよ」
その口調に、私は一気に小学生時代に引き戻されました。
先生はいつでも私たちに優しく話しかけてくれた.....
その優しい先生、そのままだったからです。
こうして私の「会いたい」という願いは叶いませんでしたが
電話が互いに通じ合ったことに希望を感じながら、携帯を切りました。
一筋の希望の光とは、こういうことを言うのでしょう。
心から愛おしいと思うと自分から電話を切ることができない、という気持ちを私は味わいました。
先生の電話も、すぐには切れませんでした。
電話が ぷつり と切れる音を耳元で確かめて、私は手に持った携帯電話をぼんやりと眺めました。
今日も最後までお読みくださいましてありがとうございます。


