ナイルパーチの女子会を読みました。









とぉーっても可愛いタイトルと表紙ですね✩


で、ナイルパーチってなに?甘いカクテルの名前???


と思いながら本を開くとナイルパーチの説明書きがあります。


ナイルパーチとは、スズキ目アカメ科アカメ属の淡水魚。淡白な味で知られる食用魚だが、一つの生態系を壊してしまうほどの凶暴性も持つ。要注意外来生物。」(本文引用)




(^q^)




なにそれ怖くね??釣り堀に一匹放ったら一家全滅みたいな???

そんな名前のタイトルなので、女子会メンバー内のマウンティングや諍いの話なのかという印象があったものの、読み進めると働く女と専業主婦が出会う話でした。


【登場人物】
栄利子
商社に勤める30歳(未婚)東京生まれ東京育ちで両親と暮らしている。女友達がいない。ブログ「おひょうのダメ奥さん日記」のファン

翔子
「おひょうのダメ奥さん日記」の主。栄利子と同じ30歳で女友達がいない。地方に生まれて、今は栄利子が住んでいる街に旦那と二人暮らし。えんがわが好き

圭子
栄利子と同じマンションに住む同級生の無職の女。過去に栄利子と何かがあったらしい



他にもふたりを取り巻く人間がいろいろいるけれど、主立って動くのは栄利子と翔子2人。たまに圭子が出てきてちょっかいを出します。

ナイルパーチは商社勤めの栄利子が取り扱っています。ナイルパーチは昔、スズキの代わりに回転寿司で出されていたらしいです(これ重要)


栄利子は翔子のブログを読むのが日課になっていて、毎日読んでいるせいか、ブログの中身から翔子が自分の街に住んでいるって薄々感づいています。

栄利子は翔子の飾らないスタイルのブログを半ば心酔していて、名前の「おひょう」は好物のえんがわに掛けているところに知性を見出していました(これ重要)

そしてある日、翔子とバッタリ会うんですよ。思い切って栄利子から声をかけたら、お互い好印象を抱いて、次に会う約束をします。

その約束が声をかけて三日後に叶って、翔子は翔子でたまの茶飲み友達ができたと思って安心。話も弾んで栄利子も大満足。しかし栄利子、何を思ったか





翔子を無二の親友だと思っちゃうんですよ



......びっくりするだろ??まだ会って二回目なんだぜ??



そしてここから栄利子の暴走が始まります。


翔子は両親が離婚していて、実家にはお父さんと再婚した奥さんと弟がいます。
その奥さんが家出したとかで、弟のSOSにより掃除をしに帰省します。

その時にケータイを東京の自宅に忘れてきちゃうんですね。で、ほぼ毎日更新されているブログの更新を、四日間忘れてしまいます。


こんな事今まで無かったし、ましてや自分と会った後にこんな事態(本当はただケータイ忘れただけ)になったので、栄利子ちゃん気が気じゃありません。


何か悪い事言っちゃったかな?


怒らせたかな?


傷つけたかな?



などなど、不安でたまりません。メールの返事もないので身がちぎれそうになっていました。


そしていきなり






翔子の自宅に突撃します




突撃していいのは今も昔もヨネスケだけです。


翔子にとってみれば、自宅の住所なんて栄利子に教えていないし、挙句に栄利子、自分でブログの記事から翔子の居住を推測したと何の悪気も無く言うんですよね(ここテストに出ます)。
当然ながら




翔子も旦那も不信感MAXです




そしてその後、栄利子から


「あなたのブログはあなただけのものではない」


というメールを見てなんだか意気消沈するものの、回転寿司で会う約束を取り付けます。


栄利子は家に押しかけたことを、翔子は栄利子に黙って東京を離れたことを謝ります。

少しだけ気まずい空気になったなかで、栄利子は場を和ませようとスズキの話をしだします。



栄利子「あ、スズキがある。こういうところのスズキって、昔はナイルパーチだったんだよ」
翔子「ナイルパーチ?なにそれ」
栄利子「私が輸入を担当している魚だよ(中略)翔子さんが好きなえんがわも、かれいやひらめのえんがわじゃなくて、おひょうのえんがわでしょ。ナイルパーチもおひょうも凶暴なところは同じだよね(中略)おひょうは仕留めるためにショットガンを使うくらい獰猛だし」
翔子「なにそれ」
栄利子「え、知らないの?」
翔子「高校の男友達がつけたあだなだよ(中略)ひょうひょうとしてるから、おひょう。おひょうなんて魚がいることも、今の今まで知らなかった」
栄利子「そうなんだ......。なんだ、私、てっきり......」(本文引用)



ここからお互いの会話や価値観、人との距離感の考えの違いが見えてきて、読んでいくうちに栄利子の翔子への期待と依存、翔子の人間関係への怠惰と自己中心的な態度が目につくようになります。

というか、


栄利子の語りが長すぎて引きます



栄利子や翔子の一部の心理状況に共感する部分もあれば、全く共感できない部分もあります。

特に栄利子の言動や考え方にはビックリしました。実際にいたら絶対友達になれない(笑)いや、なりたくない(笑)



栄利子は、三十歳になる今も実家を出るつもりはない。母親のサポートなしに、これほど身綺麗さを保ち体調を整えて働くことは不可能だ。(本文引用)


まぁ実家暮しならお母さんに適度に頼るのもアリだと思うからわかる。


母だって、自分が家を離れたら、無口な父と二人きりの日常に息が詰まるだろう。(本文引用)




すげー自信だなおい



子供が実家から出たら出たで、夫婦の時間も変わるだろうに。家にお金入れてるかはわからないけど、なんでサポートしてもらって当然、みたいな態度なんだろうこの女、と思いました。



母親が蛍光灯の輪郭まではっきり映るほど磨き抜いたTOD’Sのパンプスを交互に絨毯に沈め、自分の持ち場をまっしぐらに目指した。(本文引用)





靴ぐらい自分で磨けや



栄利子は自信を持って、この世の中で一番価値があるのは「時間」だと言い切る。(中略)時間をたくさん費やしたものはそれだけで評価される。正しい食事の作法や柔らかな季節の挨拶で始まる便箋三枚以上の手紙、(中略)よく手入れされた革製品が素敵とされるのも、そこにかけられた時間への敬意なのだ。(本文引用)



君、靴の手入れかーちゃんにさせてるけどな


これ、翔子と会う前のシーンなんですが、この時点で栄利子のこと相当嫌いになりました(笑)


翔子は自己中心的でめんどくさがり屋なところがあるものの、ひょうひょうとしているので憎めないところがあります。

一方栄利子は、相手との距離やテリトリーを無視して近づき、時には「あなたのためを思って」心臓を抉るような発言をします。全ての事柄を型にはめて、相手の立ち位置や考えに配慮しない言動や行動をする様が私は嫌いでした。

そして本編は栄利子と翔子の関係がズルズルと続き、やがて栄利子はネットストーカーの成果(   )もあってか、翔子の弱味を手に入れます。その時の栄利子の心理は



歪んだ同性愛みたいで気持ち悪いです



同性愛が気持ち悪いのではなく、愛のあり方が気持ち悪いです。相手を思いやらず、自分のエゴを愛情という形にして押しつけるのは性別問わず気持ち悪いです。

この気持ち悪さの最高潮は、翔子を連れ出した箱根旅行のシーンなのですが、これは実際に読んでみて感じてください。



親友でもそこまでしねーよ!?


というシーンがあります。もう本当に怖かった...............


でもこの本で問いかけている内容って、世間巷でいう「女の友情は脆い」という風潮を疑問視しているんですよね。

男の友情は長く続いて、女の友情は片方のステータスが変わっただけで崩れるのは本当なのか?本当に性が違うだけで友情のあり方は変わるのか?と疑問を投げかけています。

そして女性の上辺の社交性の善し悪しについても語られています。最後の栄利子と圭子のシーンは深く考えさせられます。



栄利子と翔子のやり取りにハラハラしますが、最後は少しだけ日が射すような終わり方なので読後感は悪くないです。どちらかが最悪人になるような終わり方ではないので。

ただ、夜に読むのはオススメしません。寝不足になると思います(笑)