いつ戻ってくるんだい?


開いた画面に静かに浮かぶその一行を眺めながら

これまでも静かに耳をすませてきた。


そよぐ風の音を聞き

行き交う人々のささやきや足音を聞き

自らの呼吸のリズムを聞き。


そのうちにね。でも、まだ。


そのうち って?

まだ って?


最初は返されてきた問いも

もう最近では来なくなった。


昔は私自身も弄んだであろう

はがゆくやり場に困るいじらしさというものを

どういうわけかすっかり忘れてしまったようで

おぼろげに浮かぶ記憶を

押し寄せる切なさを宥めながら

小さく背中を丸めているであろう彼に重ね合わせてみては

でもやっぱりなんだかとりとめなくて

まぁいいや、と画面を閉じるのだった。


行き場を、帰りつく場所を捜し求めて

泣いてばかりいた私だった頃はそう遠い話でもないのに

かといって確たるものを手にした訳でもないのに。


要するに、以前までの

天の邪鬼な私に飽きたということなのだろうか。


こんな、結局どちらでもかまわない

うつろに何かを探してさすらう

私の戻りを強く待ち望んでいる人がいるというのは

どこかしら奇妙な感じだった。


私が探しているものははじめからそこにあるんじゃないか?

だったら私はどうしてここにいて

さらに遠くへ行こうとしているのか?


そこに何かが待っているからなのか?


わからぬなら進めばよいだけと

以前よりは幾分かさっぱりと

日が明ければ別の町へと旅立つ。


心は、湖を囲む町のさらに深い部分を探り進めながら。


彷徨う私が留まり続ける密やかな町が、ここにある。