数え切れないほどの人の渦のど真ん中にいるけれど


誰の目にも映らない。


気配すらも届かない。



すべての人が目の前で出会い、交わり、別れる。


時に一時的に


時に永遠に。



何かを手にし 何かを失い


来たときより少なくとも何かひとつ


状況を変えて去ってゆく。




私にできることは


手のひらを押し付けたガラスが絶えず体温を奪い取っていき


為す術のない体からすこしずつなにかがこぼれ落ち続けるのを


じっと感じとることくらいだ。



誰とも交わらない視線を追いつつ


動かない空気の筒の中で立ち尽くし


何者かである人たちを眺める。



何者でもない者として。