エルサレム(加藤賢治)イスラエル沖の地中海で31日、パレスチナ自治区ガザへ向けて支援物資1万トンを積んで航行していたパレスチナ支援団体「フリー・ガザ・ムーブメント」

の船団をイスラエル軍の特殊部隊が強襲。イスラエル軍によると強襲の際に、支援団体側少なくとも9人が死亡、34人が負傷した。国際社会も民間人に多数の死傷者を出したイスラエルの対応に非難を強めており、国連安全保障理事会はこの問題を協議する緊急会合を米東部時間31日(日本時間6月1日)に開催することを決めた。



 フリー・ガザ・ムーブメントは、トルコやギリシャなど五つの人権団体で構成し、イスラエルによるガザ境界封鎖(のちに説明文)への抗議を掲げている。今回は6隻にトルコや欧州のパレスチナ支援者約600人が分乗し、30日午後、集合地点のキプロス沖を出発した。

 イスラエル軍は、公海上で、6隻が停船命令を無視したため拿捕することを決め、海軍特殊部隊による各船の強襲に踏み切り、その際、船団を組んでいた1隻のトルコの船で発砲を受けて、銃撃戦になったと説明している。

 一方、団体側は本紙に「我々は人道支援の、民間人で、武装などしていない。イスラエルの安っぽいプロパガンダだ」と真っ向から反論している。死者の大半はトルコ人という。

軍は、拿捕した6隻をイスラエル中部アシュドッド港に移送している。

 イスラエルは、イスラム原理主義組織ハマスがガザを武力制圧した2007年以降、ガザ境界を封鎖。ハマスの武力強化を阻止するという理由で、物資搬入を制限している。今回の支援物資もハマスに横流しされる可能性があると主張し、団体側にイスラエル国内で物資を選別後、陸路でガザに運ぶと伝えていた。

 AP通信によると、この団体がガザへの航行を試みたのは2008年8月以降、9回目。このうち5回は成功したが、今回は大規模の船団で、イスラエルは断固阻止する構えを取っていた。ガザへの人道支援のため、国連は封鎖撤廃を求めているが、イスラエルは「支援物資は十分に届けられており、ガザに人道危機などない」と反論してきた。今回の事件後も、バラク国防相は「責任は団体側にある」と非を認めていない。

 ただ、作戦への批判は、イスラム諸国にも広がっており、ネタニヤフ首相は31日、「イスラエル軍とガザ支援船団の衝突事件に対応するため」として、6月1日に予定していたオバマ米大統領とのワシントンでの会談を取りやめ、帰国することを決めた。



ガザ封鎖 =説明= ハマスがガザを武力制圧した2007年以降、イスラエルがハマスの弱体化を狙って実施している。陸上では、ガザとの境界の検問所を封鎖し、人道物資以外の流入を阻止、海上でも軍の艦艇がパトロールし、外からの船をガザに近づけない措置を取っている。エジプトも境界の検問所を封鎖しているため、ガザの住民はエジプトとの境界に地下トンネルを掘り、食料や燃料を密輸している。

エルサレム(井上道夫、貫洞)

イスラエル軍は31日、パレスチナ支持の人権活動家が乗った船団を拿捕する作戦を実施、同軍によると船団の10人以上が死亡した。

 船団側は、パレスチナ自治区ガザへ支援物資を届けるため人道目的で航行していたと主張している。だが、軍報道官は、「刃物を持った船団側のメンバーが兵士を襲い、奪った銃2丁で発砲した」と説明し、正当防衛として武力を行使したと説明している。

 衝突の中で、兵士7人を含め、数十人の負傷者も出た模様だ。イスラム組織ハマスが実行支配するガザについて、イスラエルは境界封鎖を続けており、国連などが人道上の理由で封鎖解除を求めてきた。人道支援を掲げてガザ入りを目指した船団に死傷者が出たことで、国際社会からの批判が高まるとみられる。

 船団はトルコや欧州などの人権活動家、政治家ら600人以上が6隻の船に分乗。セメントや医療機器など約1万トンを積んでいた。イスラエル軍は、船を拿捕する過程で衝突が起きたと主張している。軍報道官は作戦実施場所を「公海上だった」と説明した。

 船団を送った国際人権団体の一つの広報担当は朝日新聞の取材に「イスラエル兵らは突然、私たちの船を襲ってきた。我々が武装していたなんてばかげている」と答えた。

 事件を受けてイスラエルのネタニヤフ首相は31日、1日の訪米予定を中止し、訪問先のカナダから急遽帰国することを決めた。首相府の報道官が確認した。

 首相は1日にオバマ米大統領と会談する予定だった。先週末に閉会した核不拡散条約(NPT)再検討会議で、条約非加盟だが核保有が確実視されるイスラエルの加盟を求める内容の最終文書が採択されたことなどを受け、米国と協議するとみられていた。

 一方、AFP通信によると、国連の安全保障理事会は31日、同日中にも緊急会合を開き、事件について話し合うことを決めた