ソクラがあるよ
一軒家に引っ越してから、学校から帰ると、母がいない日が多くなった。玄関の植木鉢の下に鍵があって、それで家に入ると、台所のテーブルに、「おかえり。ソクラがあるよ」と書いたメモがあることが多かった。即席ラーメンがあるから作りなさい、という意味だった。カップラーメンのなかった時代だ。でも、時々 植木鉢の下に 鍵がない時もあった。慣れたもので、庭づたいに どこか窓が開かないか 窓を触ってまわった。すると たいてい一ヶ所は 鍵をかけ忘れているところがあって、そこから入っていた。最悪 台所の小窓から・・・ところがある日 どこも開かなくて、困って、隣のおばちゃんに「家に入れない」と言いに行った。そしたら、笑いながらやって来て「どれどれ」と、 迷わず 南側の大きなガラス戸の真ん中の横さんをつかんで、2枚のガラス戸をゆっくりゆすり始めた。すると、(ねじる式の)鍵が すこ~しづつ回り始めた。時間はかかったけど、ガラガラ~と開けられた時の安堵感!その後、1~2回 自分で開けて入ったような覚えが。持ち家だったけど、会社が斡旋した土地だった関係か、隣の家も同じ会社の人。庭の境の柵に 軽く開く扉があって、そこからお隣同士 出入りする、そういう関係だったんだよね。