”ブロッコリー” 第七小節・・・What's Wrong With Groovin.
ピピピピピピー・・・・・・・ ピピピピピピー・・・・・・・
ピピピピピピー・・・・・・・ ピピピピピピー・・・・・・・
静かな郊外の高級住宅地・・・
2階のガラス張りの部屋から、中庭の駐車場に並ぶ高級車が見える。
黒光りのセダンの高級車に、隣に並ぶ赤いスポーツカーが映り込んでいる。
壁際には、年代物のバイクが4~5台斜めに綺麗に並べられている。
白い大理石の床に、茶色の大きな円形ラグが敷いてあり
黒の革張りのソファーにグレーのタイトなスーツを着た男が、座っている。
その男の目線の先には、ポマードできめられた頭の黒いスーツの男が
ガラス越に、中庭のバイクを眺めながらシャンパンを持っている。
「なぁ・・・竹見・・・・このソファいくらするんだい」
「なんだ・・・値段でも聞いて座り心地でも変わるのかい・・・」
「そりゃ・・・○の数がちがけりゃ・・・気持ちは・・・ちがうだろ・・・」
「池田らしい・・・考え方だな・・・・ふぅふふ・・・」
「おれの立場なんて、おかまいなしな事いいやがるねぇ~・・・・・」
「ああぁ~・・・・例の火事の件か・・・・」
「責任とらされるのか・・・・・・?」
「ど~だろ~なっ・・・」
「なにかと・・・うるさい連中だからな・・・・・」
「いろいろ手はまわしているよ・・・」
「まぁ~・・・いざとなれば、あの趣味でやってる店が、あるじゃないか・・・」
「おいおい・・・池田・・・」
「あの店だけじゃ・・・この生活は、できねぇ~よぉ~・・・」
「予想外の風当たりに・・・戸惑いを感じるよ・・・」
「理想ねぇ~・・・・うまくいかないもんだねぇ~・・・・・・・」
「竹見・・・いいじゃないか・・・」
「きっと・・・おまえはむくわれるから・・・」
「だと・・・いいんだけどね~・・・・」
「まぁ・・・出来るだけ、やってみるさ・・・」
「いざとなると・・・おしくなるもんだね~・・・・まったく・・・・・」
部屋にかすかに、ただよう女性物のフレグランスのにおいが
二人の男に寂しげな思いをかんじさせた。
だいたい昼下がりのころ、眠気が襲ってくるもんなんだ。
店に流れる選曲のせいか・・・・店内のレイアウトのせいか・・・・
スーツを着てバリバリ仕事している人間には
到底理解できないであろう、悩みの一つだが・・・・・
すべて自分で作った空間だけに・・・・・・・関心もする・・・・・・・
よくぞ作った・・・オレ・・・・非現実空間・・・・・・
なんてな・・・・・
「あの~・・・これ・・おねがいします・・・」
「はいはい・・・・」
「おお・・・水色とオレンジとパープルにしたんだね」
「はい・・・」
「綺麗なのえらんだね」
「置いとくだけでも良い・・・組み合わせだね」
「なかなか見当たらないガラス瓶だから・・・ラッキーだよ」
「ええ・・・とても気に入ったわ」
「このへんの人?・・・・」
「ええ・・・でも最近こしてきたばっかりで・・・まだ全然なんです」
「そっかそっか・・・まぁ・・・いつでも気楽によってよ」
カランッ カランッ
「コウタロー・・・コーラもってきてやったぞー」
「おおー・・・モッチー・・・」
「マメタローにもおやつ買ってきたぞー・・・」
足下で、寝ていたマメがモッチの声に反応する
そりゃそーだろな・・・来るたんびにおやつもってくるんだから・・・
完全に餌付けされてるな・・・・・・笑
モッチがこんなにも犬好きだったとわ・・・・・
そのせいか、店に遊びに来る回数も増えてるね
まあ・・・そのたんびに何か買ってってくれるし・・・ありがたい友達だ・・・
「ああ~・・・トイプードルですね・・・」
「かわいいですね~・・・・どこにいたのかしら・・・」
「マメタロウかわいいだろー・・・ガッハッハッハー」
「コウタロウが、女の子に夢中でマメタロウが寂しがってるぞ・・・ガッハッハッハー」
「おいおい・・・接客だっつーの・・・まったく・・・」
「あっ・・・ごめんね・・・いま包むからさ・・・」
「ちょっと・・・マメタロウでも触ってって・・・笑」
「はい・・・コウタロウさん・・・笑」
「名まえ・・・覚えられちゃったね・・・笑」
「モッチのせいだな・・・・・笑」
「キミ・・・・名まえは?・・・・」
「個人情報は、教えない方が良いぞー・・・・ガッハッハッハー」
「ミズキです・・・二人とも、よろしく・・・・」
「おおー・・・こちらこそ・・・・ガッハッハッハー」
「はい・・・お待たせ・・・ありがとね・・・」
「いつでも・・・あそびにきてよ・・・・」
「はい・・・ありがとうございました・・・またきますね・・・」
カランッ カランッ
彼女の優しくほがらかな雰囲気は、とても店の雰囲気にピッタリで
違和感がなかった・・・
マメタロウもいつになく、なついていて・・・
親近感を感じていたのであろう。
いつになく、気持ちのよい昼下がりだった・・・
「コウタロウ・・・ラスリルの火事覚えてるか・・・」
「ああー・・・先週のだろ・・・・」
「そうそう・・・写真できたから・・・ココ置いとくぞ・・・」
「ああーありがとな・・・これから、まだ仕事か?」
「あとチョッとだけのこっててな・・・・又連絡するよ」
「ああー・・・気をつけてなー・・・」
”ブロッコリー” 第六小節・・・ガラス瓶
カラッン・・・・・ カランッ・・・・・
若い人々・・・そこに住む古くからの人々・・・昼間の太陽の下
様々な夢や期待・・・を抱き行き交う・・・
店先のレンガでくまれた小さな花壇には、パステルカラーの小さな花が風にゆらいでいる
横にはラックにかけらてた古着が、春を・・・これから来る夏を、感じさせる。
無数にある店先にも同様に、様々な形で季節を演出している。
昭和を感じさせる入り口の木製のドアのガラス部分には、カラフルなステッカーが貼ってあり
60年代・・・70年代の、心の自由と現実の不自由とかを、感じさせてた。
白く薄汚れたガラスから、カラフルな様々な物であふれかえっているのが、見える。
ネオンの看板には、英語で「Empty Paints.」と表記されている。
カラッン・・・・・ カランッ・・・・・
「いらっしゃ・・・ませ~・・・」
オレは、イツもけだるそうに挨拶をする。
ここで働いて・・・もう三年かな・・・
雇われだけど、店長だね
他に従業員いないし・・・・・・
まぁ・・・気楽で良いかな・・・・・
「あの~・・・これっていくらですか」
「たぶんね・・・・底に値札はってあるはずだよ・・・」
「あっ・・・ホントだ・・・ありがとうございます・・・」
「それ・・・綺麗でしょ・・・」
「はい」
「それ先週入ってきたヤツでさ・・・」
「デッドストックらしいんだ」
「色が凄くいいんだよね」
「ゆっくり・・・見てって・・・」
「ありがとうございます・・・」
まぁ・・・女の子は綺麗な色の雑貨がすきだね
一生懸命見てる姿は、ほほえましいよ・・・・
なんて思いつつ・・・・ポケットからタバコをとりだした・・・・・・
綺麗な色をしたガラスの瓶を眺めている彼女をみながら。
店内に流れる曲が、おだやかな気分に今日もしてくれる。
若い人々・・・そこに住む古くからの人々・・・昼間の太陽の下
様々な夢や期待・・・を抱き行き交う・・・
店先のレンガでくまれた小さな花壇には、パステルカラーの小さな花が風にゆらいでいる
横にはラックにかけらてた古着が、春を・・・これから来る夏を、感じさせる。
無数にある店先にも同様に、様々な形で季節を演出している。
昭和を感じさせる入り口の木製のドアのガラス部分には、カラフルなステッカーが貼ってあり
60年代・・・70年代の、心の自由と現実の不自由とかを、感じさせてた。
白く薄汚れたガラスから、カラフルな様々な物であふれかえっているのが、見える。
ネオンの看板には、英語で「Empty Paints.」と表記されている。
カラッン・・・・・ カランッ・・・・・
「いらっしゃ・・・ませ~・・・」
オレは、イツもけだるそうに挨拶をする。
ここで働いて・・・もう三年かな・・・
雇われだけど、店長だね
他に従業員いないし・・・・・・
まぁ・・・気楽で良いかな・・・・・
「あの~・・・これっていくらですか」
「たぶんね・・・・底に値札はってあるはずだよ・・・」
「あっ・・・ホントだ・・・ありがとうございます・・・」
「それ・・・綺麗でしょ・・・」
「はい」
「それ先週入ってきたヤツでさ・・・」
「デッドストックらしいんだ」
「色が凄くいいんだよね」
「ゆっくり・・・見てって・・・」
「ありがとうございます・・・」
まぁ・・・女の子は綺麗な色の雑貨がすきだね
一生懸命見てる姿は、ほほえましいよ・・・・
なんて思いつつ・・・・ポケットからタバコをとりだした・・・・・・
綺麗な色をしたガラスの瓶を眺めている彼女をみながら。
店内に流れる曲が、おだやかな気分に今日もしてくれる。
”ブロッコリー” 第五小節・・・雲
ガサッ ガサガサッ
モフモフ・・・ モフモフ・・・・・
限りなく黒に近い紺の夜空に、真っ白の雲が
流れる様に動いていた。
重みを感じるような風に、季節を味わい
動く雲の隙間から、星がきらきらと電飾のように輝いている。
ガタガタガタガタ・・・・・・
「おいおいおいおい・・・・・ 」
「ん・・・・・・!?」
「何にもないなー・・・」
「コウタロウー 車は、どうだ・・・・!?」
「ちょっと中見てくる・・・・・」
「オレの、バイクは異常はナシだな・・・・」
「物音、気のせいだったか・・・風か何かで、音がしたのかな・・・・!?」
「中・・・ 大丈夫っぽいねー」
あけた車のドアに、手を置き車内をボーッと眺めた。
先ほどまでの出来事で、多少気が張っていたのか
気にしすぎだったのであろうか・・・・・
「こんな人が来ないような場所でも、鍵はヤッパリするべきかな・・・ 」
「コウタロウー・・・ カギしとけ・・・!!!」
「コウちゃん・・・ 念のためだね・・・・・ 」
「だな~・・・」
バタンッ・・・
「ん・・・・・・・・ !?」
足下に何か感触を、感じた・・・
凄く柔らかくて・・・ なめらかな、まとわり具合・・・
「ねぇ・・・・・ コウちゃん・・・ 足下・・・ 」
「あぁ・・・・・」
足下に、白くてフワフワしたものがいた・・・・
そっと両手で優しく持ち上げ胸に抱いた。
「なんだこれぇ・・・ すげーかわいいぞ!!!」
生まれて、まもないであろう・・・ 白いトイプードルだった。
「かぁ~・・・ ちっちゃいな~・・・!!!」
「コウちゃん・・・ オレにも、さわらせてくれよー」
「おぉ~・・・ やさしくだぞ・・・」
「なんだこれ~ すげー軽いな~♪」
「どっから迷い込んだのかね~・・・」
「ノラ犬・・・!?」
「親犬・・・ いないな~」
「迷子犬か・・・!?」
「あ・・・」
「コイ・・・ 牛乳とかって無いの・・・!?」
「あっ・・・!!! あるよっあるよっ!!!」
「とりあえず・・・ 部屋にあがろうーぜ・・・!!!」
「そうだな・・・」
「そうしよ~♪」
「いや~ これほんと・・・ かわいいな・・・ ♪」
「豆粒みたいなサイズだな!!!」
「豆粒は、言い過ぎだろ~」
「豆粒のマメタロウだな~」
「・・・ いやっ だから・・・豆粒のマメタロウって・・・」
「マメタロウのマメちゃんだな」
「・・・・・ マメちゃんか・・・ アリだな!」
「かわいい存在には・・・ かわいい名前だな・・・ ガッハッハッハー」
「マメか~・・・ 似合ってるかもな(笑」
「おいっ・・・ マメタロウ・・・ !」
「クゥ~ン・・・ 」
”ブロッコリー” 第四小節・・・鼓動
ウィ~・・・・ン ガサガサッ・・・ ボー ボー
ドコンッ・・・ ドコンッ・・・ ドコンッ・・・
メトロノームのように、響く道路のつなぎ目。
黒く染まったハイウェイを、走る一台の車。
黒光りしたボディーに、周りの景色が次々に映り込む。
「あぁー 私だ」
「どうなった・・・!?」
「そうか、火はだいぶ治まってきたのか・・・」
「あれは、まだ見つからないのか・・・!?」
「そうか・・・」
「そうだな・・・ まずそれを確認しないとな・・・」
「念のため、用意はしといてくれ・・・」
「ああー・・・ わかってる」
「なにかと・・・ うるさい連中だからな・・・」
「今向かっている・・・・」
「じゃあ・・・ そっちは、頼んだぞ・・・」
「ああ・・・ 頼むよ・・・」
なびく、ポマードで湿った髪。
男は、ジャケットの内ポケットからタバコを取り出し
火を付けた。
「まいったねぇ~・・・ 春かぁ・・・」
ハンドルを握った人差し指で、リズムを刻んでいた。
深夜のハイウェイはどこまでも・・・どこまでも、続いていた。
一定の間隔で、鼓動を刻みながら。
「すげー・・・よく撮れてんじゃん」
「コイのモニターでかくて良いなー・・・」
「コウちゃんも、買っちゃえ・・・」
「これ見ちゃうとな~(笑」
「モッチ・・・ センスいいな・・・」
「写真は、良い趣味だぞー・・・ ほらっこの辺なんか・・・」
「ああぁ~ いいかんじだなぁ」
「にしても、まぁ~・・・ すげぇー色の炎だなぁ・・・ これ・・・」
「これって・・・ 絶対燃えちゃいけないもんだよな・・・ 色からしてさぁ~」
「ああぁー・・・ 明らかにヤバいな・・・ こりゃ・・・」
パソコンのモニターから映し出される絵は、とても綺麗だった。
さっきまで、目の前で起きてたこととはいえ、やはり・・・あらためて見ても
非現実的な表情をしていた。
三人は、囲む様にモニターの絵に、群がっていた。
「あれ・・・」
「・・・」
「ここ・・・ちょっと拡大してみて・・・」
「ここ・・・!?」
「そうそう・・・ あっ・・・もうちょい右のとこ」
「・・・」
「おっ」
「コウちゃん見つけるね~」
「コウタロウは、こーゆーのホント見逃さないなぁ~・・・ ガッッハッハ」
「かわいいな~♪」
「この娘・・・ 工場関係者・・・!?」
「だろ~・・・ 顔ちょっと黒く汚れてるし・・・」
「でも・・・ なんか、おかしくねーかー・・・!?」
「確かに・・・ 格好も関係者っぽくないし・・・なぁ」
「救急隊さけてるようにも見えるね・・・ !?」
「にしても・・・ きれいな娘だなぁ~・・・♪」
「コウタロウ・・・ 顔がキモイぞぉ・・・ ガッハッハッハー」
そこには工場から出てくる、女性の姿があった・・・
なにか不思議な空気をかもしだしていた。
その時は、写真から考えられるであろう疑問点が、いくつかあったが
ただただ・・・彼女の容姿に、興味をいだいていた。
ガタンッ ガタッ
「おい」
「今・・・ 外で物音したぞ!!!」
「オレの、車か~!?」
「コウタロウ鍵閉めてないだろー!!!」
「いやっ モッチのバイクかも・・・・・」
「おいおい・・・ 」
三人は、もの凄い勢いで、ドアを開け
階段を駆け下りた。
”ブロッコリー” 第三小節・・・ランナーズハイ
「ハァ・・・ ハァハァ・・ァ」
「フゥ~・・・ ウゥ~・・・」
電子部品の基盤のように、複雑に入り組んだ鉄の管・・・ 大小様々の・・・
どこからか来て・・・ どこかに続いていて・・・ 中を何かが通っている。
建物の側面を這いつくばり
建物と建物を、つないでいる。
無数の無機質な造形物が、混じり合う
必然なのか、偶然か・・・
迷い込んだら、抜け出せなくなりそうな
人工的な、ジャングル・・・
油と鉄に、混じる科学的な複雑な匂い。
ダッダッダッ・・・ ガサッ
「ハァー・・・ ハァァー・・・ 」
「ここから・・・ どうする・・・・・・・」
「そうだな・・・・ ・・・予想外な火の回り方だな」
「あなた・・・ 足けがしたの・・・」
「たいした事、無いさ・・・ それよりどうするかだな・・・ 」
「とりあえずキミだけ先に・・・ タイミングを見てぬけだせ!・・・ 」
「しかし・・・ アナタ一人で、のこりの作業は・・・ 無理よ・・・・・ 」
ボンッ ガラガラ・・・ ボッゴーン
「ウワァー」
「急がないと、まずそうだな・・・」
「キミは、それを急いで安全な場所まで運ぶんだ!」
「・・・ 」
「急げ!!!」
「必ず・・・ モドル」
「必ずよ」
「あぁ・・・ じゃあ頼んだぞ」
頭の中で、現実の光景だと認識するのに
時間が、必要だった・・・
すべてがスローモーションだった・・・
駆け回る銀色の、消防隊。
オレンジの炎から、爆発がおきるたび
七色に変わって行く炎・・・・・・・。
ぞくぞくに集まり増える野次馬の人々。
デジタルカメラを、取り出し様々な角度で
撮影している・・・モッチ。
野次馬のおじさんと、話している・・・コイ。
すべてが、映画を見ているような緊張感のない気分だった。
ブルー・・・ イエロー・・・ ライトグリーンにピンク・・・ パープルと・・・
Dr.Ph.Martin'sのインクのような発色の良さに
皆、花火を見に来ているような、表情だった。
たしかに・・・ すごく綺麗なんだ。
花火の比じゃないな・・・ こりゃ・・・
いままで見た事の無い、人工的な芸術作品だよ
前に見た・・・60年代のサイケな映画より数倍ものダイナミックさが
目の前に、3D映画のように繰り広げられているからさ・・・
すげー興奮で、我を忘れた・・・・・
ボーンッ バッドゥーン
突然・・・ 今までに無い規模の爆発音に、人々が叫びはじめた・・・
消防隊による、緊急的な退避勧告
あわめふためく人々
急に現場の雰囲気が、危険一色に染まり始めた。
「おいっ!!! コウタロウ!!!コウタロウってば!!!」
「あ・・・あぁ・・・」
「やべー感じだぞ」
「オレらも、この場から離れんぞっ!!!」
「そうだな・・・ 」
「オーイ!!! コイー そろそろ行くぞー!!!」
「モッちゃーん コーちゃーん まってくれよ~」
花火大会の帰りのような、人ごみの流れ
気持ち焦っているぶん・・・ 収拾がつかない。。。
オレらは、走った。
人々を軽やかに、すりぬけて・・・
左に・・・ 右に・・・
サッカーで、ドリブルしながらゴールを目指すように。
人々の流れに、反して
立ち去る事さえ快感に、していた。
コイの家が、野次馬達の住む住宅地の方ではなく
工場地帯にある為
パニック状態の人々から、抜け出すのは用意だった。
科学的な匂いが、かすかに鼻にかかるように
なるころには火災現場が、小さく見える距離に達していた。
「なんか・・・ すげー綺麗だった」
「おっオレも思ったよ」
「めちゃくちゃサイケだったね」
「なかなかなー あんなの見れないぞー」
忘れていたかのように、ジャケットの左ポケットに手を入れ
タバコを、取り出し火をつけた。
午前一時すぎ・・・ 気持ちのよい春風が
さっきまでの科学的な、ニオイを和らげてくれる。
「モッちゃんさー さっきの写真帰ってからパソコンで、見てみよーよ」
「そーだな!」
「やばいの・・・とれてそーじゃんね」
スゥ~・・・ プッファ~・・・・
「爆発音だいぶ・・・ へってきたかな?」
遠くに見える火災現場を、振り返りながら春風を感じていた。
”ブロッコリー” 第二小節・・・深夜の工業地帯
ガッ・・・ ガアッッガッ
ガサガッ・・・・ スゥ~ サッサ・・・・・
手慣れた動作で、ハッパを巻いて行く。
火を付けると、甘い香りのお香の煙と
かすかにフルーティーな、香りの煙とが混ざりあい
部屋の隅々まで、優しくつつみこむ。
煙の向こうから、音が静かに低く足から伝わってくるのがわかる。
コイの部屋は
レコードの倉庫と、いったぐあいの状態なんだ・・・
フローリングの床に、ふかふかのベージュのカーペットが敷いてあり
水色のソファーに小さなテーブル、大きなレコード棚に入りきらなくなった
無数のレコード・・・様々な機材に、楽器・・・・・
壁には様々な、ポスターや雑誌の切り抜きが
気持ちよく貼られている。
静かな工業地帯に、ただただ流れる音楽と会話の音しか響かない。
静かに・・・深くおもい煙のように
ドンッ ドンドンッ
突然ドアを叩く音がした。
コイがドアを、開けると
モッチが現れた・・・・・
「よぉー・・・コイ!!!コウタロウ!!!」
「あぁ~モッチかぁ~」
「モッちゃんのバイクの音、気付かなかったよ
コウちゃんと今ちょうどさぁ~・・・モッちゃん遅くねぇ~って言ってたとこなんだよ」
「いやぁ~さぁ~・・・家出るときさぁ~・・・バイクの鍵が
見っかんなくてさぁ~・・・・参ったよ・・・ガァッハッハッハァ~」

モッチは豪快な男だ
バイクが好きで、よく自分で色々手を加えて改造しているようだ
なかなか真似できない、独特のセンスをもっている。
「そうそう・・・今、来る途中でさ~」
「あぁ~・・・・?」
「なんかぁ・・・ラスリル製粉の工場あたりで火災が、あったみたいでさぁ~
消防車が、すげぇ~集まってたよ・・・!!!」
「まじでぇ~」
「やばくねぇ・・・・」
「オレェ・・・見てぇなぁ~・・・」
「みんなで。ちょっと行ってみようぜぇ~」
まだ冬の匂いが残り、春の入り口に入ったばかリのような
独特の空気の中、薄手のジャケットに袖を通し
先ほどまで、コイの部屋で流れていた曲が
三人を、工業地帯の中へ・・・導いていた
優しく・・・包み込み・・・守るかのように・・・
コイの家から現場まで、歩いて10分~15分
けして遠くもなく近くのなく・・・気持ちのよい空気の中
歩くには、ちょうど良い散歩の距離だろう。
コイのたわいもない会話に、オレがあいづちをし、モッチが豪快に笑う
「コウちゃん・・・バイク・・・マジで買うの」
「ん~やっぱりぃ・・・ハーレー欲しいかな」
「なんだっ!!! コウタロウ・・・ハーレーに決めたのか・・・?」
「そうだなぁ~・・・モッチのトラも良いなって思ったんだけど」
「いやぁ~・・・ ハーレーは、やっぱりサイコーのバイクだからな・・・ ガッ ハッハッハ~」
「だよな~」
モッチに背中を、押してもらうと安心する。
イツもなら、静けさに寂しさと休息の感じを、あたえてくれる深夜の工業地帯
だが目の前に広がる光景は、騒々しい昼間のようだった。
数えきれないほどの消防車の赤い回転灯
飛び交う緊張に満ちたかけ声
煌々と照らされる大きなスポットライトの数々
周りに群がる野次馬の人々
深夜の工業地帯とは思えないほどにオレンジ色に染まる空
あたりをすべて・・・・・・
そして、オレたちを オレンジ色に染めていた。
”ブロッコリー” 第一小節・・・雨の匂い
チェッ・・・ チェッチェッ・ジュポッ~・・・・・
スゥ~・・・ プゥファァ~・・・ 「ふぅ~」
さっきまで降っていたであろう雨が、道を黒く染めていた。
昼間の喧騒を、舞台に例えるなら
今は、公演終了後 客も出演者も大道具もスタッフも
皆いなくなった後の、劇場に一人たたずみ
先ほどまで、様々な人々の感情が
まだ・・・確かに・・・っといった具合に
心に響いてくる感じに似ている。
商店街に家があり
そこで生活をしていると昼間と夜の表情の違いが
とても当たり前なのに、イツも不思議な気分にさせてくれる。
家を出て駐車場に向かう
ジャケットの左ポケットから、イツものように黄色いアメリカン・スピリットを取り出す
イツものようにバスキアのジッポで火を付ける
イツものようにくわえタバコで
イツものように自販でホットの缶コーヒーを買う
イツものように・・・
薄暗い街灯の中、独特な商店街の匂いにタバコの匂いが、とけ込んでいく。
ジャッケトの右ポケットから、鍵を取り出しドアを開けると
タバコとナグチャンパの合わさった車内の匂いが漂い。安心感に包まれる。
右手で、エンジンをかけて
運転席と助手席の間に、吊るしてあるラジカセのスタートボタンを、左手で押す。
ゆっくりと JON KENNEDY の曲が流れ、またタバコに火を付ける。
左手で、缶コーヒーを開け 一口 口にし
クラッチを踏み、ギアを入れる。
けして格好の良い車ではないな
白の4ナンバーのマニュアルのワンボックスのバン・・・仕事で使うような車だ
オートマの車を、買えば良かったと思う時もあるが
マニュアルの一連の動作が、運転している感じを
とても実感させてくれて、気分がいい。
高速道路の下の産業道路に、つきあたり左折するとラジカセから
ちょうど CHOSEN FEW の DO YOUR THING が流れる。
窓を開けると、春のはじまり頃の少し暖かい風に、雨に濡れたアスファルトの匂いが絡まり
車内に流れ込んでくる。
普段は砂埃が舞う道路だが、先ほど降ったであろう雨のせいで
視界が澄んでいる。
右手には永遠と、大手企業の工場が建ち並び
左手には線路が永遠と、つづき
道路の上には高速道路が屋根の様に、そびえ立つ
工業地帯特有の、産業道路の様々な表情
ダンプや大型トレーラーが、川の様に行き交う姿
年に数回行われるであろう、国際マラソンの時の沿道で人々賑わう姿
通勤ラッシュ時の、全く動かなくなり赤く光るテールランプで染まる姿
そして 夜中に一台、音楽を流しながら走る白いワンボックスカー
薄汚れたフロントガラスに、薄暗い街灯の光があたり
ワイパーの後が映し出される。
黒く湿ったアスファルトを、煌々と照らすヘッドライト
全くといっていいほど、違和感が無い
むしろそうあるべき な光景だ。
突然 LEE PERRY の曲が流れる・・・・・・・・・・・・電話の着信音だ。
「おぉ~」
「今どのへんっ?」
「今、産業走ってるから・・・もうすぐだよ」
「わかった・・・あっ 飲み物かってきて」
「あぁ~・・・じゃあな」
今から会う小池君だった。
普段は、コイと呼んでいる
周りの連中も、皆そう呼んでいる。
コイは、良いヤツだ
普段は何を、考えているか解らない感じだが
ちゃんと自分のこだわりを、持っていて
自分なりの正義が、ちゃんとある。
なにより無類の音楽好き・・・音楽好きに、やなヤツは あまり存在しない。
コイの家の前に車を止め、自販で飲み物を買い
外のサビた鉄階段をのぼり、コイの部屋のドアを叩く
そうするとコイが、鍵をあけてくれる・・・イツも通りだ。
「おぉ~・・・今日ちょっと暖かいね」
コイがドアを開けた瞬間に、お香の甘い匂いが入り口の外まで、漂ってきた。
イツものように、両手にたばこを一本づつ持った
コイが、現れた・・・

「おぉ~・・・入って入って」
履いていたバンズの靴ヒモを、緩めて
部屋にあがった。
部屋は、間接照明のオレンジ色の光で染まっていた。
部屋中に FREUND DER FAMILIE の曲が不思議な空気感を醸し出していた。
ソファーに腰掛け
買って来たコーラを渡した。
「おぉ~・・・ありがとうっ」
イツものたわいもない、不思議な時間が始まろうとしていた。
