とっさに周りを見渡せば
案の定、車の中に公安がいた。
それと遠くから感じる
強い視線。
何処かで
誰かが
俺を監視している。
最近、急に俺の身辺が騒がしくなってきた。
・・・・
本格的に乗り出してきたか。
平穏な日常は、終わりを迎える。
あの人がやって来て
俺を殺しに来て
ああ、あの時から随時経ったようだったが。
まだ数日だったんだな。
あの人はあのまま放置した。
あの橋の上、あの場所に。
最後に聞いたのは
祖国を称える言葉
ただ
それだけだった。
あの人は俺よりも国家を選んだ。
ただ、それだけ。
だから、俺も選んだ。
あの人よりも
自分自身を・・・
すぐに遺体が発見されるかと思っていたが
北の工作員が後で始末したんだろう。
だがそれももって数日。
やがて遺体が発見され、俺を追い詰めにくるだろう。
公安に、そして北。
どこにいっても俺を追い詰める。
もうそんな事からは逃れたいのに。
逃れる手段は
ただひとつだけしかないのだろう。
まだ逃げない。
まだ
逝けない。
いや
逝きたくないんだ。
肉親を踏み台にしてまでも
俺は
まだ
生きていたい。
そんな浅ましい自分に嫌悪しながらも
本来は追われる立場では無かった俺。
巧妙な手口で追い詰められ、末永に罪を着せられ
もはや、汚名だと
そんな言い分も通らないまでに、俺の罪が上書きされていく。
信頼し、ただひたすら忠誠を捧げてきた国家からの反逆者扱いに
絶望し、生きる手段を奪われたのに。
なぜ
俺は
此処で
生きているんだろう
生きていたいと
望むんだろう。
リョファンであることは、もう捨て去ったのに
ユンセンとしての日々は
長すぎた。
いや、長すぎたのではない。
この名前での生活に
この過ごしていた環境に
俺は愛着を感じすぎていたんだと思う。
長く一箇所にとどまることは危険なのに。
わかっていたはずなのに・・・
もう、ユンセンでも
いられないんだな・・・
次はどこに
向かえばいいんだろう。