普通、人間が持っている一番古い記憶というのは
どこまで遡るのだろう。
よほどインパクトのある出来事でなければ、
せいぜい5~6歳くらいではないだろうか。
僕の場合、それが2歳まで遡る。
「インパクトのある出来事」があったのだ。
左ヒジ骨折。
大して広くもない家の中を走り回っていて、
壁に激突したのだ。
その瞬間痛かったとか、泣いたとか、
そういう記憶はないのだが、
部屋の間取、どこにぶつかったか、といった
ある意味では第三者的な目線の記憶が
鮮明に残っている。
もちろん直後に医者に連れていかれたそうなのだが、
その記憶もない。
そして、その医者がいい加減で、
「たいしたことない」と言われて応急処置程度で帰されたものの、
翌日になっても僕があまり左腕を使おうとしないのを、
不審に感じた母が別の医者に連れて行ったら
「折れてます」と言われたこと、
更にそれを聞いた父が激怒して
最初の医者に怒鳴り込んだこと、
そんなことも当然記憶にはない。
そう思うと不思議な気がする。
感情的な記憶は全く残っていないのに、
無感情な部分の記憶のみ残っているという。
自己防衛的に精神のコントロール作用が働いたのだろうか。
だとしたら人間てやっぱり凄い。
ちなみにこの話、未だに母との会話に出てくることがあるが、
(父は既に亡くなっています)
父が激怒した気持ち、
自分が子を持った時、身に染みてよくわかった。