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 富岡町夜ノ森にある西原さん宅に到着して、私は息を呑んだ。

門は雑草と伸びた庭木に埋もれて、そこが門だったことも分からない。

人間の背丈ほどに伸びた雑草が枯れて倒れ、

庭だった地面を覆い尽くしている。

鉢植えの観葉植物でしか見たことがないアイビーが

2階建ての家を包み込もうとしている。

 「手入れをしていたときは、もっときれいだったんですよ」

 清士さんがつぶやいた。

 「フェンスに沿って色の違うあじさいを植えていったんですよ

……ピンクとか紫とかね」

 千賀子さんが指差すほうを見ると、茶色く枯れたあじさいが見えた。

 腰をかがめ、雑草の隙間から草の葉を摘むと、

指先で揉んで匂いをかがせてくれた。

ミントだった。

 「ここにはレモンバームやタイムも植えててね

……フレッシュハーブティーを作るのが楽しみでねえ」

 千賀子さんは懐かしむように言う。

 「楽しい日々でした」

 「住むにはいい場所だったねえ」

 2人はつぶやいた。

2011年3月11日以前の庭を思い出しているのだろう。

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