【情けは人の為ならず】

有名なことわざである。

『人に情けをかけておけば、いずれ巡り巡って自分の為になる。
だから、人にはどんな時にも親切にしておいた方がいい。』


という意味であり、


『情けはその人のためにならない』
と解釈するのは誤りである。




先日のこと。

同居人(ダ)がお婆さん(ば)に道を聞かれた。

ば「瀬戸大橋を観に東京から来たんたけど、
この辺で今日泊まれる旅館ないかしら。」


ダ「ホテルなら近くにありますけど、旅館は思いあたりませんね。」

ば「ホテルは嫌なのよ。旅館でゆっくりしたいんだけど。」


ダ(ホテルでエエやん…そんなら予約しとけよ)

と、思いつつも
調べてあげたらしい。


ダ「あ、ここなら、近くですよ」

ば「貴方、電話してよ。はい、これで(携帯を渡される)」

ダ「あ…はい」
(なんで俺が…ラクラクフォンやん。自分ですればエエのに…)


一件目は満室。
幸いにも二件目にして、宿泊先が見つかった。



良かったですね。
と立ち去ろうとしたら、

お婆さんが小声で何かを呟きながら、
おもむろに手を握ってきた。


そう、

アレである。



もちろん目配せ付き。


ダーリンの手の中には
小さく折り畳まれた夏目漱石さんが一人。


慌ててお婆さんを見返すと…

ありがとうの気持ちをダーリンの手の中に置いて
そそくさとお婆さんは立ち去って行った。



江戸っ子である。



情けは人の為ならず。


巡るの早っ。