私の姉は、
真面目というよりは生真面目。
純粋。
人を疑うことを知らない。
だから、
冗談が通じ無い。
そんな人である。
同年代に姉のような人がいたら、
友人にはなれないであろうタイプだ。
そんな何事にも真っ直ぐな姉だから、
心の病にかかってしまったのだと思う。
誤解の無いように。
私は姉が大好きで、尊敬している。
実家に連れ帰ることになったはいいが、
一人で飛行機に乗せるわけにもいかず、
両親が鹿児島まで車で迎えに行った。
愛媛に向かうフェリーでのこと。
姉が眠ったと思った母はトイレへ。
父はウトウト。
その隙に姉は逃亡。
母は焦ったらしい。
飛び込みでもしたら大変である。
外で姉を見つけ、ホッとして近寄った瞬間…
ポイッ
鞄を投げた。
生活費(20万)。
携帯。
財布。
鍵。
着替え。
など…
正気の沙汰ではない。
この時に初めて、
母は姉の病状の深刻さを実感したらしい。
姉が言うには、
『神様が、
鞄を投げてみろ。
お前には出来ないだろう。』
と言うから、
出来ることを証明したのだそうだ。
実家に着いてからも大変であった。
神様に呼ばれては
逃走するのである。
夜は夜で、
一人で置いておけないので
私も何度も添い寝をした。
ずっと喋っているのである。
返事をしないと、
怒り出す。
泣き出す。
笑い出す。
もし、
人間形ロボットがバグってしまったら
こんな感じになるんだろうな。
と、
他人事のように思っていた。
私も疲れていたのである。