現在、全国的な新型コロナウイルスの感染拡大で日本中の人々が先の見通せない不安に包まれています。今以上の感染拡大を防ぐため、政府からは人と人との接触を8割削減する事が要請されています。
この「8割削減」の根拠になっているのが厚生労働省のクラスター対策班の構成メンバーの一人でもある北海道大学・西浦先生のシミュレーション結果です。この計算結果について、神戸大学・牧野先生が計算方法など含めて解説しておられます。
牧野先生のメモ
http://jun-makino.sakura.ne.jp/articles/corona/face.html
計算方法などの解説(上記ページで紹介されている「科学」5月号の原稿)
ttps://www.iwanami.co.jp/kagaku/Kagaku_202005_Makino_preprint.pdf
私は科学技術計算を専門としていますが、医学や社会学に関してはただのアマチュアです。ですが私自身、今後の先行きがどうなるか不安で、ここ数日感染シミュレーションなどの情報を集めており、上記ページにたどり着きました。そこで私も西浦先生(の結果を再現したとする牧野先生)の計算結果を再現してみました。
再現結果
アマチュアの情報発信などデマのもとになったり混乱をもたらす危険が非常に高いので、計算コードやパラメータ設定の詳細は控えますが、当方で計算してみた結果は以下の図のようになりました。
基本、牧野先生のドキュメントにある図と同じような結果が得られていると思います(図の意味の詳細については牧野先生のドキュメントを参照してください)。
計算を通して思うこと
この計算を通して分かった事は、西浦先生のシミュレーションとは
● R0(基本再生産数) というパラメータを、ある時を境に小さくした時、その後新たな感染者数がどのように変化してゆくか(新規感染者数が増え続けるか、減るか)を計算したもの
であることが分かりました。
この R0(基本再生産数) とは
「一人の感染者が、周りにいる非感染者のうち何人にウイルスを伝染させるか」
を表すものになります。
https://www.afpbb.com/articles/-/3276018
この数値、つまり一人の感染者が周りの人々に伝染させる人数が、ある時を境に急に20%とか、80%減った場合を想定します。
R0の値が非常に小さくなる、つまり一人の感染者が伝染させる人数が減り、感染者が治癒(または死亡)してゆく数より下回れば、感染拡大は止まり収束します。
逆にR0の値がそれほど小さくならず、新規感染者数が治癒者数を上回ると、感染拡大が止まりません。
新型コロナウイルスの感染は、感染者との接触によりウイルスを取り込んでしまうことで起こります。従って人と人との接触を減らすと、人々の中に紛れている感染者と接触する機会も減るので、新たに感染する人の数が少なくなり、R0の値は小さくなります。
そこでこのR0の値を小さくし、短期間で流行を収束させるための具体的な行動が接触の8割を減らすという取り組みになっている訳です。
さらに再現計算から以下のことも分かりました。
● 計算自体はかなりプリミティブ
● R0は都市部、地方といった違いを考慮しない全国一律の値を用いている
少なくとも牧野先生の再現計算は、かなり単純化されたプリミティブなものです。計算コードはpythonなら数行で書けてしまいます。
また都市部と地方では感染拡大の度合いが異なっていると想像できますが、主要パラメータである R0 には、そういった細かい状況は反映されておらず、全国で同じ蔓延状況のときに、全国一律にR0を設定した場合の計算になっています。
しかしこれは情報戦略の一つなのかもしれません。
実際に各地方の感染予測をする場合には、もっと精密で緻密な(ややこしい)議論をしていると思います。しかし西浦先生が発した(発すべき)情報は、今後数週間、全日本国民が何を目指すべきかを具体的に示すものになります。そういう意味では、具体的で分かりやすい目標を提示する事が何よりも(学術的な精密度より)優先されるべきです。
またモデルが単純であるということは、得られる答えのゆらぎが小さく、従ってその計算結果は大枠で正しい事が期待できます。即ち、現実に接触の8割を減らしR0を小さくすることが出来たなら確実に感染拡大が止まることが期待できるのです。
西浦先生が8割おじさんとして情報発信されているのはそういう想いからと想像できます。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200411-00010003-bfj-soci&p=1
他者との接触を8割減らすということ
先に述べたように、R0は全国一律の値として設定されているものです。ですから他者との接触を8割減らし、R0の値を小さくするという事は、全国民が取り組み、実現しなければならない事です。一人ひとりが接触の8割減に取り組めばR0の値を小さくすることにつなげられます。そしてそれは、感染拡大防止・収束という結果につながります。
「東京に比べてうちのところは感染者がそんなに出てないから関係ない。」
そう考えるのは間違いです。今は日本中のどこでも感染するリスクが有り、感染が拡大する可能性が有ります。なので都市部でも地方であっても、外出自粛などで他者との接触を減らし一人ひとりが罹患するリスクを減らすことで、R0は確実に小さくなり流行の収束に間違いなく貢献します。
いつまで続くのか分からない底知れなさに不安しか感じませんが、他者との接触を減らそうとあなたが今日行った小さな取り組みの一つ一つが感染拡大をくい止めることに間違いなく貢献しています。折れずに、諦めずに、どんな小さなことでもいいから、接触8割減の取り組みを続けてゆきましょう。
