将来住みたい街 ブログネタ:将来住みたい街 参加中
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かつて考えられないほどの静けさを
保っている新宿。
数年前までは細木和子先生とテウィ
夫人の間で頻繁に抗争が繰り広げ
られていたが、それも今は全く
絶えていた。
とは言うものの、その戦いが完全に
終結したのではなかったのだが・・
・・・・・・・・・・・・・。

その新宿でテウィ夫人が人生最後の
一大イベントと言っても過言ではない
『新宿大舞踏祭』の開催を企画し
ついにそれが実現へと向け、動き
出したことでそこで披露するつもり
である夫人のフラメンコ、その練習
も熱が入ると言うものであった。
そして夫人は『新宿大舞踏祭』の
宣伝も兼ね、自ら新宿の街に出て
フラメンコを披露するというプランを
思いつきで口走ったりした。
テウィ夫人は昼に口走ったその言葉
を夕方には実現させるつもりで
あったが、実際に夫人が街に出て
フラメンコを踊ることになったのは
その一週間も後の話であった。

その間に側近の高橋はフラメンコ
バンドの調達や、夫人が用意しろ
と命じた『新宿大舞踏祭』の幟
を準備したりと、その他色々な
ことに忙殺された。
『新宿大舞踏祭』の幟など、すぐに
印刷したものなど準備できるはずも
ないというので、高橋は布団のシーツ
を買って来て、それにマジックで『新宿
大舞踏祭開催』と書き込んだものを
用意することにした。
そうして準備した突貫の代物と以前
からあった印刷会社に作らせた幟
で15本ほどのそれが用意された。
そしてテウィ夫人は最初の舞台に
新宿駅周辺を選んだのだが、高橋は
その偵察にも余念がなかった。

毎朝テウィ夫人の練習に付き合う
スペイン人のカホン奏者ホセを中心
にした演奏者、そして高橋を含めた
8名が各自2本の『新宿大舞踏祭』
幟を持ち、さらにその他2名とともに
夫人の警護をしつつし新宿駅
へと向かった。
『新宿大舞踏祭』幟に取り囲まれて
テウィ夫人の姿は全く見えない
その行列の中、しかし自意識過剰
が当たり前の夫人は皆が自分に
注目しているのだという思いに
捉われ始めていた。

新宿駅前に着くと早速ホセ達、演奏者
は準備へと入る。
どれも電気を通さない楽器のために
たちまちの内に準備を整えた。
夫人の警護に帯同した者達がその
間、幟を置いて、舞踏祭案内のビラを
配り始めていた。

『夫人、いいですか、10分ですっ!
10分で切り上げてください』
高橋は周辺のトラブルなどを考え、
テウィ夫人にそう伝言し、夫人はそ
れについて何か言おうとした
のだが、
『ホセ!!』
と片手を上げ、演奏開始を命じた。
心の準備も何もあったものではなかった
が音楽が始まった途端、テウィ夫人は
それに反応し、踊り始めた。
それもこのところずっと熱心に続けて
きた練習の成果だと言えなくもないものが
そこにはあった。

賑やかな音楽と何だか判らない派手な
オバサンのダンスに新宿駅周辺を
歩いていた人々が足を止め、やがて
夫人の前へと集まり始めた。
これがテウィ夫人の感情を高ぶらせ
夫人のダンスにも熱が入っていく
ことになった。
とは言ってもそれは新宿駅周辺に激しく
埃を巻き上げただけとも言えなくもない
のだが・・・・・・・・・・・・・・。

テウィ夫人が激しく埃を巻き上げている
間、警護の者達は夫人とバンドの周囲を
『新宿大舞踏祭』幟を両手に持ちつつ
周囲ににらみを利かせ、その他にも数名
が募金箱を持ち、駅周辺を行き交う人々
に『新宿大舞踏祭』のチラシを手渡しつつ
舞踏祭へのカンパを呼びかけていた。

高橋はというとその間、時計の針を眺め
つつ、そして手の指で数字を現しつつ
ホセへの指示を出していた。
あらかじめ高橋からの支持があり、ホセ
やその他メンバーもそれなりの準備を
してきた。
しかしそう時間通りにうまく事が運ぶはず
なかった。
演奏者も夫人も、時間と共に益々熱を
上げていくことになった。

高橋は10分を過ぎた頃から何度も両腕
で×のサインを出し、演奏終了を指示
した。
やがて高橋の苛立ちが伝わり、それで
やや強引ではあったがホセ達は演奏を
切り上げた。
その瞬間、夫人と演奏者の周囲を固めて
いたうちの二人がテウィ夫人の両脇から
夫人を抱え上げ、そうしてその他高橋も
含めて、2列になりつつ夫人を両側から
挟みこむようにして新宿駅前広場から
拠点であるテウィダイナミックビルを目指し、
動き始めた。
その列に遅れるようにして、ホセたちも楽器を
抱えつつ続いたのだった。

『何をするざあます、私はまだ踊るざあます
!!!』
『新宿大舞踏祭開催』と書かれた幟を持ち
小走り気味に歩を進める男達の中から、
そんな女の叫び声が響いていた。
しかしその声に気を止めるものは誰もいな
かった。