長々と書きましたが、前回のエントリーでは、

(1)警察と検察は、独立した別組織である。

(2)犯罪の捜査は、通常、第1次的には警察が担当し、検察官送致(送検)の後、検察官が補充捜査を行う。

(3)通常、検察官送致の前に検察官が警察における捜査に関与することはない。

と記載しました(したつもりでした)。その上で、信田検事が、自ら東村山警察署の警察官を指揮して捜査したとは考えにくい、と述べました。


 今回のエントリーでは、まず、朝木市議の万引き事件について、警察と検察がどのように捜査に関わったかを実際に見ていくことにします。万引き事件の捜査の経過は、下記のとおりです:


平成7年6月19日 「万引き事件」発生

            洋品店の店主が、東村山駅前交番に万引きの被害申告

            東村山署刑事課捜査係長が洋品店の店主を事情聴取


平成7年6月30日 東村山署において朝木明代市議に第1回事情聴取

              朝木明代市議からは何も聴取できず


平成7年7月4日  東村山署において朝木明代市議に第2回事情聴取

              朝木明代市議がレジジャーナルを持ってアリバイ主張


平成7年7月12日 東村山署において朝木明代市議に第3回事情聴取

              朝木明代市議が主張するアリバイが成立しないと判断

              同日に東京地検八王子支部に書類送検


  東京地検は、同年9月5日の事情聴取で万引き事件を否認すれば、起訴との方針を固める


平成7年9月1日  朝木明代市議の転落死事件が発生。


 以上の経過は、原則どおり、警察が第1次的な捜査を行い、検察官送致の後に検察が万引き事件の捜査をしようとしていたことを示しています。「検察官送致」の前の警察における捜査は、(検察官ではなく)警察官が指揮するのであり、信田検事が警察官を指揮する余地はありません。実際、万引き事件にしても転落死事件にしても、千葉英司副署長が捜査の指揮をとっています。


 そして、東村山署が、検察官送致を最終的に決断したのは第3回事情聴取の時であることに留意してください。瀬戸センセーは、10月31日のエントリー「【連載】朝木明代市議万引き未遂冤罪事件(3) 」において、信田昌男検事が万引き事件の捜査において不当な指揮を行ったと匂わせていますが、瀬戸センセーは、検察官送致に付されるかも分からない段階から東京地検八王子支部では信田検事を担当検事として決めており、更に、その信田検事が警察における捜査を指揮していたとでも言いたいのでしょうか?


 付記しておけば、警察としては、本件のような軽微な(被害額が1900円のような)万引き事件については、検察官送致に付さずに「微罪処分」とすることもできた、ということも指摘したいです。犯罪事実が明らかであっても、それが軽微であり、また、情状もよい場合には、警察限りの処分とすることができるのです。万引きは「微罪処分」の最も典型的な事例です。朝木市議が素直に最初から万引きを認めてしまえば、検察官送致されなかった可能性が高い。この点からも、やっぱり、信田検事が捜査に関与しているとは考えにくい。


 ところで、瀬戸センセーは、万引き事件を「冤罪事件」と呼んでますが、これはいかがなものかと思います。というのも、検察における捜査が本格的に開始される前に、朝木市議の死亡によって捜査が中止されてしまったわけです。朝木明代市議は、万引き事件で起訴されたわけではなく、ましてや有罪判決を受けたわけではありません。検察による捜査の結果、嫌疑不十分で起訴されなかったかもしれないじゃないですか。実際、検察は、起訴に対しては慎重な態度をとるのが通例です。検察が起訴もしていないのに冤罪というのは言い過ぎではないですか?大体、書類送検されても不起訴になる事件なんていっぱいあるんですが、それについては誰も冤罪とは呼びませんよ。