黒澤明 赤ひげ | ブッチャー山のブログ

ブッチャー山のブログ

ブログの説明を入力します。

言わずもがな、黒澤明監督の、全盛期の最後の作品であり、良くも悪くも日本映画に残る作品であります(悪くもは余計かな(笑)ーしかしながら日本映画を背負いこむのは欲張りな意識であります。小津や溝口を意識した段階で格が落ちる(笑))。いわゆるマルチカメラを使った、動く被写体を形式的なスタイルに嵌め込む、という、矛盾したパーツを強引に結びつけた黒澤明監督のスタイルの、ある種の頂点であり、貪欲さに満ち満ちたスタイルの、長所と短所が、作品の物語などの構造上から、また、対立のパーツが少ない関係からも、わかりやすく露呈した作品であります。何事も巨大で、何事もただ事ですませない性質から(エイゼンシュタインの影響か?)、作品としての持続力が途絶え気味になる瞬間もあり、常に自意識過剰な性質から、あまりにわかりやすく、羞恥心をくすぐりたくなるパーツ(桑野みゆきと山崎努が再会した時の鈴の音など)もありますし、加山雄三の扱いにもー加山雄三の一世一代の奮闘ですがー疑問を感じさせなくもないがーこれは原作のせいもあるかもしれませんがー、種々の欠点があるかもしれませんがー確かにアカデミックになりがちで、巨大な蟒蛇に付き合っている感もありますがー、壮大なスケール、表現主義的なスタイルも入りながら、いわゆる物語を超えたいという野望の故の空回りもありながらも、ある種の欲求を満たしうる物語と共に、結局は、イベント屋になりながらも、黒澤明監督の類い希なる努力と、天才的な才能の決まり場所も撒き散らしもあり、三船敏郎の名演技と名優たちの良い仕事もありー必ずしも全員ではないが(笑)ー、立派で、テクニック、スケールで特大な作品になりました。映画としての面白さを持ちながら、美術、演劇を意識したアートを目指しながら、一定の成功を獲得しています。この自意識が、映画としての歯止めになっているのは残念ですが、それが、まさに黒澤明というわけであります。三船敏郎のアクションシーンはワイヤーアクションなどを凌駕する迫力で必見であります