休日の朝だが、駅前なので客は多い。店先では若い娘さんが3,4人、忙しそうに
くるくる動いている。
男女を問わず、若い子がきびきび働く姿を見るのは、気持ちがいい。同じ動きを我々
中高年がすれば、さぞかし暑苦しいことだろう。
そのスタッフの中に昔の教え子とそっくりの子がいて、つい彼女を探してしまう。
小柄で童顔、黒髪の小振りなポニーテール。薄化粧をしているから高校生以下ってことはないだろうが、うっかりすると中学生でも通じてしまうかもしれない。おとなしそうな顔つきで、一生懸命明るく声を出して、コマネズミのごとくクルクル動いている感じが初々しい。顔の形は見事な卵形。ひそかに「タマちゃん」と命名している。
先日もパンをほおばっていると、タマちゃんがすぐ隣にやってきて、トレイを整理しながら、店内の客に向かって商品案内を始めた。
「只今、××パンが焼きたてでございますーっ。是非、ご賞味くだいまちぇーっ…!」
クダイマチェ? 何?、ムエタイの選手の名前かなんかか?
一瞬静まる店内。こらえきれずにくつくつと笑い出す同僚の若いスタッフ。
ばれないようにそっと、新聞のかげからタマちゃんの顔をうかがってみたら、
かわいそうに、ゆでたてになっていた。
…
やあ、おじさん、完璧に固定ファンになっちゃったよ。
若い人達っぽい言い方でまとめよう。
「タマちゃんがんばれ、マジがんばれ!」