暑い、熱い、先日のことだ。

私は、歩道を、歩いていた。

向こうから、面妖なイデタチの女性が、歩いてくる。


六十歳前後、だろうか。

ウルトラマリンブルーの、鮮やかなワンピースを、着ていた。

巨大な、ショッキングピンクの花柄模様も、光り輝いている。




運よく、比較的、遠い位置から、確認できた。

何となく、危険なオーラを察知し、俯きながら、歩き始める。

すれ違いざま、奇しくも、唐突に、彼女は、話しかけてきた。


こんにちは~!


アッツイ、わね~~!!


人のことを言えた義理ではないが、驚くほど、親しげだ。




思わず、しっかりと、見つめあった。

やはり、断じて、知り合いでは、ない。

また、視線を落としながら、私は、答えた。


え?


ええ・・


捨てられた子犬のような声で、小さく、答えた。




私は、歩くスピードを加速させながら、猛然と、立ち去った。

ふと、すれ違う人すべてに、声をかけているのかもしれない。

そう思い、離れた場所で、振り返って、見てみた。


誰にも、声はかけず、歩いていた。

最近、なぜ、私だけ、声をかけられることが多いのだろう?

しかも、なぜ、露知らずの、珍妙な女性ばかりなのだろう?



  梅雨知らず 紅を咲かせる 愛の毒花