公開日: 2021/12/7
タイトル: Max Brooks: How Zombies May Save Us
ポッドキャスト: Clear+Vivid with Alan Alda
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概要: 俳優・監督である父親の影響か想像力豊かな少年だったマックス・ブルックス氏は、ゾンビ映画により植え付けられた恐怖に打ち勝つために本気で対策を考えた。脅威や不安感からただ逃げるのではなくつまびらかにして対応する彼の思考エクササイズは、時を経て"The Zombie Survival Guide"として実を結び出版された。

 

架空の脅威とはいえリサーチは本格的だった。海軍大学校の読書会に識者として招かれ、人違いではないかと確認をしたところ、彼の著作はゾンビを抜きにすれば世界的危機への対応そのものだという。ゾンビ発生はマクロレベルの災害であり、ゾンビに遭遇しなくてもインフラ崩壊による飢えや病死等、二次、三次災害で人命が失われる。これは戦時下でも想定される事態であり、学校側は本気だった。この縁により様々な講演に招かれるようになり、遂には米国の名門陸軍士官学校West PointのModern War Instituteにフェローとして参加することとなった。

 

現代の国家安全は戦力だけでは語れない。米国は圧倒的な戦力を見せつけることが戦争抑止につながると考え、湾岸戦争における「砂漠の嵐」作戦を報道させたが、実際は逆効果で、敵は戦場を避けることを学び非対称戦争を仕掛け、サイバー攻撃、貿易、為替操作、情報戦等で連携して米国に打撃を与えることに力を入れるようになった。Modern War Instituteのようなシンクタンクはこのような様々な側面を研究して提言を行っている。


リスクは思いがけない所に潜んでいる。中国企業がゲイを対象とした出会い系アプリGrindrを買収した際にはジャーナリストが警鐘を鳴らした。中国がユーザーをしらみつぶしに確認し、同性愛者であることを公表していない政治家や高級軍人を特定すれば"kompromat" (スキャンダル等弱みとなる情報)になりうる。サイバーセキュリティーは国家の安全保障にかかわる重要課題であり、国際協力体制の整備も急がれる。

 

趣味が出版につながり国家に貢献する専門家となったブルックス氏の経歴を見ると人のキャリアとはわからないものだと思う。

改めて著作を確認して映画『ワールド・ウォーZ』の原作者だと知った。映画とは全く異なるそうなので是非原作と"The Zombie Survival Guide"を読んでみたい。