暴君!ヒヨちゃん | ケロケロの散歩道

暴君!ヒヨちゃん

小学4年の時だったか、
学校帰り、ふと気がづくと足もとに
うす汚れたヒヨコがいた。

どうやら、いつの間にか自分の後を付いてきたようだった。

お祭りで売られているのよりは
少し大きくなってきた位のヒヨコを
抱き上げて、家に連れて帰った。

当然、母親からは怒られたが
私はガンコだった。

キチンと育てるから。と約束し、
そしてそれを守った。

ヒヨちゃんと名付けられたヒヨコは
1年後には、名前に似つかわしくないほど
いかつい顔をしたオンドリへと成長していた。

「飼い主に似たんだ」

と周りは言った。
かなり強気な性格だった。

隣の家の犬の餌は(鎖につながれてるが届く距離)
その犬の目の前で平気で食い、

郵便屋さんからは、「つないで下さい」
と泣きつかれるほど、
番犬並みによそ者に対しては容赦ない攻撃を加えた。

家族でさえも被害にあう中、
ヒヨちゃんは、飼い主だけはちゃんと理解していた。

呼べば駆けつけるし、腕の中で寝たりした。
ちゃんと芸覚えた。
(パンを持って、反対の腕を突き出すとその腕に飛び乗った)

そんな私とヒヨちゃんの幸せな、ある日
家の前に3羽(オス2、メス1)のニワトリが捨てられていた。

すっかりヒヨちゃんにも慣れた家族が
ヒヨちゃんの小屋にこの3羽も一緒に入れて飼い始めたところ

この3羽は『バカ』だった。

夜中、早朝問わず「時の声」をあげる『バカ鶏ども』

当然、近所から苦情が出、
ニワトリ達は親戚のおじいちゃんの家にもらわれることになった。

「ヒヨちゃんだけはダメ!」

泣いて反対した私に、父は言った。

「こんな狭い所で飼うより、おじいちゃんのところには広い庭もあるし、
小屋だって広い。ヒヨちゃんも1人になるよりみんなと一緒のほうがいいだろう?」

ヒヨちゃんの幸せのため、と泣く泣くおじいちゃんの家へ連れて行くことを
了承した私。

「ヒヨちゃん、幸せになってね」

そして、その年のお盆…。

おじいちゃんの家に行くのを楽しみにしていた私は、
すぐさまニワトリ小屋へと走っていった。

しかし、小屋には何もいなかった。

「おじいちゃん、ニワトリは…!?」

「あぁ、ニワトリ。

おいしかったよ。ありがとうね~」

…、子供の頃のつらい思い出。
でも、今でも思い出すのは
ヒヨちゃんの勝ち誇ったように
グイッと胸をはった、
あの勇ましい姿…