「あーっ。今動いたわ」
とダンナさんの手をとり私のおなかに当てる。
ダンナさんは目をつむり、手に全神経を集中させ、
我が子の動きを感じ取る。
そして、
「本当だ。元気に育っているんだね僕たちのこども」
と、二人見つめ合い手を取り合って
家族が三人になった喜びをかみしめる。
という感動的なのを予想していた。
でも実際はそんなテレビドラマのようにはいかなかった。
出産のために入院する時、問診表に
はじめて胎動を感じた日付を書く欄があったが、
これが書けない。
だってそんなにはっきりしたものじゃなかったんだもん。
こういう欄があるってことは
他の妊婦さんたちは○月×日って書けるくらい
はっきり感じられるのかしら?
私は結局適当に十月初旬って書いてごまかした。
最近やけにおなかがグルグルいうなあ。
ウンチがたまっているのかなあ。
それともおならがたまっているのかなあ。
そう思う日がしばらく続いた。
これが実は胎動だったとわかったのは随分後のこと。
「オーベイビー、ウンチなんかと間違えてごめんね!許してー」
と、こんな風に私の初胎動はとてもあいまいなものだった。
それからしばらくすると、
ウンチと間違えてしまうような微々たる胎動も
日増しに力強くなっていき、おなかの中で何か別の物体が
動いていることがはっきりわかるようになってきた。
このおなかの動きはなんとも不思議なものだ。
自分の体の一部が自分の意志に反して動く
という初めての感覚。
確かに自分とは違う何かがここにいる。
私が今何をしていようがおかまいなしにマイペースで動き出す。
「私のおなか」に存在はしているものの
私自身でもなければ、私の所有物でもない。
一個の独立した人間なんだ。
などということをひしひしと実感していくこととなった。
私自身こんな風に、胎動を感じることで、
一個の人間としてベイビーが生きていることを実感し、
今までにないいろんな事を考えるようになったので、
今度はダンナさんにもこの動きを感じて欲しくなった。
そして、わたしと同じように、
胎動からいろんな気持ちを湧かせて欲しいと思った。
しかし我が子は本当にマイペースで
ダンナさんがおなかに手を当てたからといって
そうタイミング良くは動いてくれない。
まだ一度も胎動を実感したことのないダンナさんは
「本人以外には、わからんねん」
とすぐにあきらめモードに入っていき、
おなかから手を離してしまう。
もー。何でこんなに動くのに感じないの?
動くと信じてもうちょっと待っててくれたら
絶対感じられるのにぃー。
私はだんだん意地になってきた。
つづく。
一日一善↓

