11月になるとお茶の世界では、「炉開き」となって畳に四角く穴が開いて部屋の中に火床が出来る。
炉の中には灰が撒かれて、五徳が据えられて、炭がつがれ、その上に釜が乗る。
イメージとしては、釜しか掛けられない小さな囲炉裏が部屋に出現するのだ。
夏の間は畳の下でこの小さな囲炉裏は静かに眠っているので、見た目にこの畳の下に囲炉裏が仕込まれて居るとは普通判らないと思う。
そんな風にして、お茶の部屋は冬支度となるのだ。
ボクは初秋いや晩秋・・・最近季節の境目が曖昧に過ぎる。果ては季節すら無くなるんじゃないかとすら思う・・・の茶席の移ろいのころが好きだ。
盛夏の頃は、客へも気を使って火床を見せないように思いを巡らせて居るかのような「切り合わせ」の風炉は次第に客座に近付くかのようにポジションを畳の隅から中央に動いたり、大きく前を開らいた「前欠け」の姿になったりする。
極めつけは夏の間に酷使しましたと「やつれ」た姿になったりと演出を施したりもする。
この季節の移ろいやそれに沿う演出。或いは気遣いの現れ。
古来からのそれらに今も感じ入るのはボクらが日本人だからなんだろう。
何となく当時の工夫が伺えるシーンだ。