其の六 人喰いピアノ
はーい。今からピアノさんにお茶をあげましょうねー。
せんせー。ピアノはお茶なんか飲まないよ。
なに言ってるのしゅう君。ほらっ、あのおっきなお口が見えないの?
せっ、せんせい。なんでピアノに口なんか。
いったいどうしたの?ほらっ、おぼんもってりっちゃんといっしょにおちゃをもっていきなさい
せんせヒ最期マデミテテアゲルカラ
其の三 最期
体が宙を舞うこの感覚。
何だか新鮮。
痛っ。角に脚ぶつけた。
そうか、死んじゃうから新鮮なんだ。
痛っ。腰打った。
輪廻転生とかなないんだったら初めてだもんね、こういうの。
あっ。頭打った。
何か頭から生温かいものが流れ出てる気がする。
気がする。
どうやら階段の下まで落ちきったらしい。
いや、これから地獄まで堕ちるのかも。
まだ下があるさ。
明日はないけどね。
どうでもいいことばかりが頭に浮かんでは消えていく。
そっか、死んじゃうのか。
最期なんだから見たかったな。走馬灯。
あーあ、死んじゃうんだ。私。
この三段の階段から落ちて。
あれっ。三段しかないの?
いやっ。ほらっ。打ち所が悪かったんだってこともあるよね?ね?
いやいや。なぜ死んだことにしたがってるのさ私。
恐る恐る手に力を入れてみる。
………、…………。
こいつ動くぞ。
続いて後頭部に手をやる。液体。
血!
うん。水。
どうやら水溜まりに頭を突っ込んでたらしい。
「だっ大丈夫ですかっ?」
階段を駆け降り、私の顔を覗き込む男。
既に、この男が死神や地獄の使者だとは思えないくらい私の頭はしっかりしていた。
体が宙を舞うこの感覚。
何だか新鮮。
痛っ。角に脚ぶつけた。
そうか、死んじゃうから新鮮なんだ。
痛っ。腰打った。
輪廻転生とかなないんだったら初めてだもんね、こういうの。
あっ。頭打った。
何か頭から生温かいものが流れ出てる気がする。
気がする。
どうやら階段の下まで落ちきったらしい。
いや、これから地獄まで堕ちるのかも。
まだ下があるさ。
明日はないけどね。
どうでもいいことばかりが頭に浮かんでは消えていく。
そっか、死んじゃうのか。
最期なんだから見たかったな。走馬灯。
あーあ、死んじゃうんだ。私。
この三段の階段から落ちて。
あれっ。三段しかないの?
いやっ。ほらっ。打ち所が悪かったんだってこともあるよね?ね?
いやいや。なぜ死んだことにしたがってるのさ私。
恐る恐る手に力を入れてみる。
………、…………。
こいつ動くぞ。
続いて後頭部に手をやる。液体。
血!
うん。水。
どうやら水溜まりに頭を突っ込んでたらしい。
「だっ大丈夫ですかっ?」
階段を駆け降り、私の顔を覗き込む男。
既に、この男が死神や地獄の使者だとは思えないくらい私の頭はしっかりしていた。
其の二 とある夏の夜のこと
今私にはとてつもなく大きな悩みが二つある。
一つは自分の目の前にある扉を開けるべきかどうか、ということ。
そしてもう一つはこの、ただ「MGS」とだけ書かれた看板をさげた、いかにも怪しげな事務所を訪れることになった原因そのもの。
悩みを解決するためにここに来たのに、むしろ悩みが倍増してしまったことをもう五分はぼやいているけど、まだ扉を開ける決心はつかない。
そもそもこの事務所の見た目が悪いのがいけないんだ。
心霊スポットにでもどうぞと言わんばかりに建物全体をあり得ない量のツタが覆い、手作り感満載かつどこかの遺跡の出土品と言われても信じてしまいそうなくらいぼろぼろでとれかけの木の看板。
そして、それにやる気なく巻き付けられたコードについたほんの数個のLED。
この程度の数では、せいぜい肝試しの恐怖演出に一役かうくらいしか期待できないだろう。
LEDは力なく点いたり消えたりを繰り返しているが、オコトワリのサインか何かだろうか。
「あれっ、ひょっとしてお客さん?」
突然自分の横から発せられた大きな声。
驚いた私はつまずき、階段を転げ落ちてしまった。
今私にはとてつもなく大きな悩みが二つある。
一つは自分の目の前にある扉を開けるべきかどうか、ということ。
そしてもう一つはこの、ただ「MGS」とだけ書かれた看板をさげた、いかにも怪しげな事務所を訪れることになった原因そのもの。
悩みを解決するためにここに来たのに、むしろ悩みが倍増してしまったことをもう五分はぼやいているけど、まだ扉を開ける決心はつかない。
そもそもこの事務所の見た目が悪いのがいけないんだ。
心霊スポットにでもどうぞと言わんばかりに建物全体をあり得ない量のツタが覆い、手作り感満載かつどこかの遺跡の出土品と言われても信じてしまいそうなくらいぼろぼろでとれかけの木の看板。
そして、それにやる気なく巻き付けられたコードについたほんの数個のLED。
この程度の数では、せいぜい肝試しの恐怖演出に一役かうくらいしか期待できないだろう。
LEDは力なく点いたり消えたりを繰り返しているが、オコトワリのサインか何かだろうか。
「あれっ、ひょっとしてお客さん?」
突然自分の横から発せられた大きな声。
驚いた私はつまずき、階段を転げ落ちてしまった。
