ねえ、このひきだしはなに?

ねえ、このひきだしはなに?

1日1つ、お話の種を落としています。

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昔あるところに少し裕福な家庭がありました。

すぐ裏手に林がある小さな庭付きの一戸建てにお父さんとお母さんと、お兄ちゃんと妹の四人で仲良くくらしていました。



しかし、お父さんがお友達とある約束をしたことで家族は幸せではなくなってしまいました。



お父さんはお仕事をクビになりました。

お母さんはご近所さんから嫌がらせをされるように。

お兄ちゃんは学校で一人ぼっちになりました。

妹は毎日傷だらけの泥だらけで学校から帰ってくるようになりました。





ある日、とても穏やかな夕陽の差し込むキッチンで食事をとっていたお父さんはつぶやきました。





「……もう、死んでしまおうか。」












みんなが食事の手を止め、お父さんの顔を見つめます。

お父さんはみんなの顔を同じように見つめ返しました。



お母さんの目の下にはひどいクマが出来ています。

お兄ちゃんの顔は真っ白で生気がありません。

妹は顔中が生傷だらけで少し膿んでいます。



みんな諦めたような、疲れきって濁った目をこちらに向けていました。



お父さんは申しわけない気持ちでいっぱいになりました。

そしてもう一度、今度ははっきりと言いました。



「もう、死んでしまおう。」



みんなどこか安心した顔で静かに頷きました。













「8月29日午前9時半ごろ、O市D区の会社員、鯨目一徳さん(41)方で、鯨目さんと鯨目さんの妻、そして子供1人の計3人が死んでいるのを、異変を感じた弟の直哉さんが見つけた。


 〇〇署によると、亡くなっていたのは、一徳さん(41)妻の芳子さん(41)、小学校4年の長女の澪(みお)ちゃん(10)の三人で、中学1年長男の〇〇ちゃん(13)は現在意識不明の重体。


4人は1階の寝室で布団の上に倒れており、冊子や隙間をビニールテープで埋め、完全な密室にして練炭を使用した跡があった。


室内に荒らされた様子や侵入の痕跡がないことなどから、同署は無理心中の可能性があるとみて調査を行っている。