夢は、蛍
幻想と影の間を
ふらふらと飛び回る
夢中で追い掛けたあの頃を
今の私は
理解できない
一夏(人生)の淡い美しさ
握っても潰れ
取っても瞑れ
夢は、必ず消えてしまうそれの意味…
あの頃ならば、関係なく
すぐに次の蛍を
全力で追い掛けるだろう…
泣くほど転んでも、汚れても
愉しくて
何度でも立ち上がり
鬱蒼と 茂る、黒だらけの森を
捕らえるためだけに
恐れることなく…
追い掛けるだろう…
ただ…
その姿が夢を追うと言う
素晴らしいことの一つとして
誰もが語れるのなら
今の私は
口を噤む
なぜなら
私の心象世界で舞う蛍は
青い灰は波のように地を這い回り
微かな残り火が
そこらかしこでゆっくりと点滅した
遠くの赤い地平線
幻想と灰の境界は
きっと、あの津波のように
今も飲み込み続けている
なんと儚き夢の跡
傷だらけの少年時代は
もはや
無い
関心が亡くなって
興味も亡くなって
私は、源典に帰ってきた
絶対に
他人に
踏み込ませない
触れさせない
その場所は湖の様なもの
水晶よりも透き通る水が
静かに宙を見上げる
対岸からは、小さくは見えるが
その実
巨大な枯木が折り重なった
苔の生えた島がぽつんとある
ガラス細工の様な澄んだ蓮の花に囲まれて
苔の上にもまばらに小さな花がさく
中心には小さな泉
その側に
一本
柾のような葉を付けた細い
腰程の高さの樹
その近くには
座るにしろ、もたれるにしろ
ちょうど良い丸太が転がる
私は
隔絶されたその場所から
黙って眺めることにした
ありのままを
素のままを
その場所で最も黒い影を
背負って
梟霊
