村に響く
夕暮れを知らせる音
静か、長閑なその世界
両足の間を、無限の型に
ぐるぐるとすり抜ける
猫、を愛でながら
暗く沈んだこの身を
じりじりと光に焼いた…
わたしは
わたしは、どうしてしまったのだろう
近くの村人が、遠くの小屋で首を吊ったらしい
その小言が
水たまりの小さな波紋のように聞こえるたびに
背を
引っ張られる
遠くの誰かが
何かを殺めたらしい
その小言が
やまびこのように響き渡るたびに
足元の小さな命を
何の加減もなく
叩きのめしたく成る
心の中の
泣き声が止み
薄暗い静寂が広がる
見渡す限り何もない
探しても探しても何もない
生きてきたはずの思い出も
生きていたはずの足跡も
そこにはない
目の前の母も
時に忘れ
誰かになった
知っているはずの声も
時に忘れ
何者かになった
わたしは
わたしは
どうしてしまったのだろうか…
変わらないはずの姿
変わらないはずの場所も
波の満ち引きのように
解らなくなっていく…
あぁ…
仕事を辞めて
手に入れた静寂も
この心臓が、五月蠅くて
眠れない
あぁ…
長くなるはずの時間
黙ったまま固まって
空白になる
もし、先に逝った人に
もう一度会えるのならば
わたしは聞きたい
そこは、幸せか?
そこは、自由か?
もし、先に逝った人に
今一度逢えるのならば
わたしは、問いたい
そこは、心地よいか?
そこへ、行っていいか?
心とは
理解されず
理解されがたい
どうしてこうなってしまったのか
こうなる前に逃げておけばよかったのか
解らせるために
見せつければよかったのか
それとも
見せしめにさらせばよかったのか…
今となっては
答えなど
意味は、ない…
虚しさを
溜息に変え
生きながらえ
運が良ければ
また、歩き出すのだろう
今はただ
小さな水槽の
数匹のメダカを見つめ
まだ、
命をともせているのだから
梟霊