誰も居ない公園
手入れもされず
伸び放題の草木が
誰も乗っていない
赤茶けたブランコと供に
揺れている
茹だるような熱さも
背中からさわさわと冷えて
四肢の爪先からは血液が
何かから逃げるかのように
自分の意思とは無関係に
心臓へと戻る
ぎゃんぎゃんと鳴いていた蝉どもは
いつの間にか静まり返り
鉄の、鈍く、不規則な不快音が行ったり来たり
目をこらせば
何かが居る
ただ、それも…
ずっと同じで在ったなら、の話
ひぐらしが鳴いた
カナカナカナカナ、カナ、カナ…カナ…カナ……
それに釣られ瞬き一つの間ほど
視線をずらしただけだった
ブランコから何かが
飛び跳ねたのだろう
ガラガラとうねるかのように捩れるかのように
暴れていた
そして、確かに人が此方へ駆けてくる
半透明で赤黒く爛れもとい、溶けている皮膚を揺らして
私の躰の全ての細胞が声に成らない悲鳴を上げて
僕の意思を引きずって逃げ出した
どれくらい走ったのか
どこまできたのか
どうでもよく
この躰がようやく止まったのは
町中のアスファルト舗装の上で
躓き 、転んで
膝を擦りむき
その痛みで蹲った時だった
滝のような汗と血が混ざる
背中に焼けるような暑さを感じながら
悶えた
脇の下の隙間から
理性が戻る度、走って来たであろう方向を覗いた
陽炎が中途半端に町中を映し出す意外
特に
無かった
しょぼくれたまま
ただいまと
どんよりと熱を溜め込んだ
我が家へはいった
おかえりなさいと
細く綺麗て
小さく返事をした何かが
西日の影から
此方を見ていた
まだ誰もいないはずの
全ての空間に
魂と言うものが沈む意味を
未熟な僕が理解できた。
逃げ場は、もう、無かった…
事切れる少し前
そのひぐらしかこれでもかと言う程
大きく鳴いていたきがした。
梟霊