3月12日(水)
今日はサムゲタン先生が学校を休んだ。
ズル休みはいつものことなので気にも留めなかったが、代わりに入った先生の話によると盲腸で入院したとのことだ。
ずいぶんあからさまな嘘をついたもんだと考えていたが、代わりに入った先生の話によると証拠として病室でぐったりしている自分を撮った写メールが送られてきたとのことだ。
見てみると確かに病室で寝ているサムゲタン先生がそこには写っていた。
合成写真とは先生もなかなかやるじゃないか、と考えていたら代わりに入った先生に『この話を信じていない人は先生の監視…お見舞いに行ってきてください』と言われた。
そういうわけで今日は学校が終わったらサムゲタン先生のお見舞いに行くことになった。
メンバーは代わりに入った先生によるといつものアレなメンバーに決まったそうだ。


まずは先生へのお見舞いの品を調達しなければ。
盲腸でお腹が痛いようなので無難に正露丸にしとこうかと思ったが、『それでもし治ってしまったら学校に来ちゃうからやめとこう』という暗黙の了解に乗っ取り別の物を持っていくことにした。

スーパーで見舞いの品々を物色してみた。
なかなか品揃えのいいスーパーだ。
・絵本【いたいのいたいのとんでいけ!】(ダビデ選)
・できる限りヌルヌルしたこんにゃく(モンロー選)
・表紙が看護婦の女体学の参考書(ティンコ選)
・刻みパセリ一年分(ブンチャ選)
・ある天才による読むだけで元気になれる格言集ディレクターズカット版(メガネ選)
などが候補に挙がった。
多数決で単三の乾電池に決まった。


サムゲタン先生が入院しているオクラホマ川村式記念病院~零式~に着いた。
受付で『浪花サムゲタンっていうダメな大人はどこの部屋でグ~タラしてますか?』と、看護婦さんに聞いてみたら『一番日当たりが悪くて風水的にも最悪、過去その部屋で病死した人が述べ666人に上る当病院屈指の最低最悪な444号室にいます。』と、丁寧に教えてくれた。
ありがとう看護婦さん。
僕らは鼻毛が出ていることに気づいていない看護婦さんに礼を告げ、教えられた病室に向かった。

なかなか手広くやってる病院のようで、肛門科と一口に言っても<黄門様専用>と<そうでない方>によって診察室が別れているようだ。
黄門様が列を作っていた。
小児科も<小学二年生専用>か<そうでない方>に別れていた。
小学二年生専用診察室からは『てめ~よく見たら三年生じゃね~か!!!!医療ミスで死にて~のか!!!!!?』という怒鳴り声が聞こえてきた。
その一年の違いでどんなミスが生じるのか疑問だ。


444号室に着いた。
扉を開けると、サムゲタン先生は天井にある人の顔のように見えるしみとあっちむいてホイで遊んでいる最中だった。
こちらに気づいた先生は『お~、よく来たなヒトシにガバスにチンコに悶々に文太にギガネ。』と、話しかけてきた。
たかだか一日顔を合わせなかっただけで僕らの名前がひどい仕打ちを受けた。
腹が立ったのでナースコールをピンポンダッシュして逃げた。
だがナースは来なかった。
つまらん。
早くも病院での扱いがここまで悪くなってるとは…。
何をやらかした浪花サムゲタン。
『俺レベルになるとピンポンダッシュなんぞ痛くも痒くもないのだ。みくびるな小童どめもめが。』
意気消沈して戻ってきた僕たちに先生は言い放った。


さっそくみんなで選んだお見舞いの品を先生に渡すことにした。
僕らは純真無垢な笑顔で先生に単三の電池を渡した。
すると先生は『…あれれ~?先生の目がおかしいのかな~?どう見てもこれ電池に見えるんですけど~。マジ受けるんですけど~☆
………………本物の品はどこへやった?』と、妙なノリで聞き返してきた。
入院している分際で気持ちが悪い。
『あっ!!すいません、間違えました!!たんさん違いでした!!!!』と言って、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)(重曹、重炭酸ソーダとも呼ばれる。入浴剤、食品添加物(発泡剤)、洗剤、研磨剤など身近に存在。)を渡してやろうかと思ったがその気すら失せた。
しかたがないので炭酸水素ナトリウムは傍らに置かれた金魚鉢に入れた。
入浴剤としても使われているので金魚もさぞかし嬉しいことだろう。


とりあえずサムゲタン先生に今の容態を聞くことにした。
手術はしたようで、オナラが出たらそれが手術の成功を意味するらしい。
今サムゲタン先生はベッドの上でオナラを待っているのだ。
こちらとしては早いとこ『さようなら』と言ってとっとと帰りたいのだが、サムゲタン先生に『俺のオナラ史上最も気高く価値のあるオナラを教え子のお前たちにも嗅いでほしいんだ。』と言ってその場に残ることを余儀なくされた。


かくして僕たちの、オナラを待つという究極に無意味な時間が始まった。
『いつ出るかわからないから念の為に俺の肛門に常時鼻をくっつけておけ。』と、サムゲタン先生は言う。
先生はどうやら僕たちに死んでほしいようだ。
『逃げなかった奴は成績オール5だ。』
………僕たちの決意は固まった。


静かになった謬質。
目の前にはM字開脚をした中年オヤジのケツがある。
モンローちゃんがこの屈辱に耐えられず泣いていた。
ティンコ君も『…これは女のケツだ。……これは女のケツなんだ…。』と自己暗示をかけて必死に耐えていた。
ダビデ君は呼吸を口呼吸に変えダメージを減らす作戦に出たようだ。
ブンチャ君はゲップでオナラをはね返すという暴挙に出た。
メガネ君は己の身に降りかかるであろう全ての事柄を受け入れる姿勢をとり始めた。
僕はおならが出る瞬間を見計らって単三の電池を瞬時に穴にぶちこむ為のイメージトレーニングを始めた。


サムゲタン先生のケツと見つめあうこと30分、ようやくその時は訪れた。
『……………うっ、こいつは出るぞ。俺のケツの穴の門番が騒がしくなってきたぜ!!お前ら、俺の歴史に新たな1ページを刻むオナラ、心してかぎやがれ!!!!行くぜ!!!!!!!!』
サムゲタン先生は痛むおなかを押さえながら全身全霊をこめふんばりはじめた。


『くっ、…………ぬお~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』




(ブリッ)
『あっ…………!!!!!!!!』




サムゲタン先生のケツが突如膨らんだ。
僕たちは目の前で起きた超常現象の全てを理解し、病室を去った。

2月23日(土)
今日はダビデ君と一緒にデパートに買い物に出かけることにした。
あと約一ヵ月後に僕らも5年生、つまり上級生になるのだ。
下の下級生になめられてはいけないし、万が一6年生のちびっこギャングにからまれたら殺す勢いで立ち向かわなくてはならない。
そのためにも今からなるたけ殺傷能力の高い武器を手に入れなければならないのだ。
表向きは進級にあたっての用具を買いに行くという名目だ。
だがきっとのんきそうな顔をしているダビデ君も心の中では『クックック…。生意気な野郎がつっかかってきたらこの紙やすりで鼻の下を削ってやるぜ!!』などという事を考えているに違いない。


まずは文房具コーナーを訪れた。
するとダビデ君が『このハサミ、段ボールも楽々切れちゃうらしいよ!!これなら工作の時間も安心だね♪』と言ってきた。
なるほど。
今の発言は【ケッケッケ。このハサミ切れ味抜群らしいぜ!!これなら島耕作にからまれても楽勝だぜ♪】という意味だな、きっと。
ダビデ君もなかなかあくどいことを考えるじゃないか。

よし、僕はこの青色のシャーペンにすることにしたぜ!!
ノック式でシャー芯残り1mmまで使える優れものだ。
するとそれを見たダビデ君が『青色かい?僕は赤の方がいいな~。そっちについている花の絵が気に入らないんだよね~。』と言い出した。
なるほど。
今の発言は【青色?青二才のお前にぴったりだな!!俺ならそのシャーペン、気に入らない野郎の鼻にぶっ刺して血で赤に染めてやるぜ!!!!】という意味だな、多分。
なんて恐ろしいお方だ。
いつもメガネ君を殴ったり煮たりすりおろしたりしている僕も今日の君にはタジタジだぜ。


次は食品売り場だ。
お腹が減っていたこともあって僕らは肉のコーナーの前をうろついていた。
するとダビデ君が『そういえばブンチャ君は鶏肉がおやつの日があるらしいよ。肉にたれをたらしておもいっきりほおばるらしいよ!!』と言い出した。
なるほど。
今の発言は【ブンチャの野郎はチキンな奴だぜ!!憎たらしい!!おもいっきり頬を張ってやりたいぜ!!】という意味だな、常識的に考えて。
どちらかというと人畜無害な部類に入るブンチャ君をそんな風に言うとは…。
君の心の闇を垣間見たよ。

おやつの時間だったので僕はグミを買うことにした。
するとそれを見たダビデ君が『そういえばティンコ君が言うには、グミは女の人の乳首と同じ感触なんだって。』と、聞きたくも無い情報を話し始めた。
なるほど。
今の発言は【ティンコのような愚民は俺が打ち首にしてやるぜ!!なんちゃって(真剣)】という意味だな、主観に基づく仮説の一つのアレとして。
…いきなり殺人予告とは恐ろしいぜ!!
君が僕らに見せていた無邪気な笑顔は偽りだったのか…?


次は雑貨コーナーだ。
ふっ、ここなら良い武器が手に入りそうだ。
ここまでダビデ君に押されっぱなしだったからこの雑貨コ-ナーでなんとしてもダビデ君の度肝を抜かなければ…!!
僕は目の色を変えて品物の数々を物色し始めた。
………どれだ?
…どれならダビデ君に勝てる?



!!!!!!!!
こ、これだ!!!!





『ダビデ君、このハンガーをメガネ君の背筋に取れないようぶっさして死ぬまでどこか屋外に服みたいにぶら下げておくのって面白いと思わない?衰弱死寸前になるまでずっとさ!!春休みに入ったら二人でやってみようぜ!!そんで観察日記でもつけようよ♪』

僕は目を輝かせてダビデ君に提案してみた。

するとダビデ君は『ハンガーは人を半殺しにする道具じゃないよ!!馬鹿なこと言うなよ!!それで本当に死んじゃったらどうするんだよ!!ハンガーは衣服をどこかにかけるのに必要なものだよ!!』と言ってきた。
………な、なんて人だ…!!!!
【ハンガーで半殺しにするだと?馬鹿が!!!!やるからには本当に死なせ!!!はんっ、!遺族に情けをかける必要はどこにも無ぇ!!!!】だと…?
半殺しでもやりすぎだと思っていた自分がちっぽけに思えてくるじゃないか…!!!!


ダメだ…。
この人には勝てない…。



買い物を終え、僕たちはデパートをあとにした。
夕日を背中に受け、僕は絶望に似た敗北を感じ家路を急いだ。
ダビデ君は笑顔で『バイバイ♪最近通り魔が出没してるらしいから僕も恐怖を感じずにはいられないよ。お互い気をつけてウチに帰ろうね。』と言い残し帰っていった。
【じゃあな!!最近通り魔が出るらしいが、俺に恐怖を感じさせるまでには至らない。戦い、そして返り討ちにしてやるぜ!!!!】か………。
今日のダビデ君はクレイジーだったぜ…。

2月16日(土)
冬の寒さが厳しい今日この頃だ。
家でこたつにでも入ってりゃあいいのに、アホな僕たちいつもの6人は強風吹き荒れる公園に集まった。
今日はゆとり教育の導入で定められた由緒正しき土曜の休日。
家でおとなしくしているなんぞ僕たちには無理なのだ。


公園には誰もいなかった。
いつもはいるダンボールハウスのおじさんもどこかへ消えた。
井戸端会議で世間話のスキルを日々養っているおばさん軍団もいなかった。
いるのは僕たちだけだ。
全身を突き刺すように吹く風が痛い。
あまりの寒さにメガネ君のメガネが凍った。


早速何かをして遊ぶことにした。
最初は体を温めるべく、公園のど真ん中でせんだみつおゲームをすることにした。

せんだ→みつお→ナハナハ!!
せんだ→みつお→ナハナハ!!
せんだ→みつお→ナハナハ!!
せんだ→…

白熱極まるゲーム展開の中、ダビデ君が『こう寒くちゃ遊ぶ気にはなれないよ…。ここは無理をせずに誰かの家でWiiでもやらないかい?』と言い出した。
ダビデ君がそんな弱気な事を言うなんてショックにもほどがあるぜ…。
『休みの日だというのに子どもが家に引きこもる。そんな世の中でいいのかい?外で元気に走り回ることこそが古き良き理想の子供の姿と言えるんじゃないのか!!!?』
ナハナハのポーズをかっこよく決めながら僕は熱く語った。
『…そうだね。辛いことがあるとすぐ逃げる、僕の悪い癖だね。
さぁ続けよう!!せんだみつおゲームを!!!!』ダビデ君はキラキラした瞳で言った。
するとメガネ君が『でもこの寒さには天才もお手上げだよ。ここは潔くみんな仲良く帰ろうじゃないか!!!!』と言ってきた。
お前は何一つ気にせず帰ってよし。

ナハナハのナハが那覇に聞こえ始めた頃、僕らはせんだみつおゲームをやめることにした。


次はハンカチ落としをすることにした。
これは少人数でやるとなかなかハードな遊びなので体が温まること請け合いだ。
ハンカチが無かったのでブンチャ君が偶然持っていた湯葉でやることにした。
湯葉に気づかずに鬼にタッチされた奴はボットン便所行きだ。
さぁ始めるぜ!!



~数分後~


…ハァハァ
!!!!?また俺かよ!?
待てデブ!!!!俺の背後に物を仕掛けるとはいい度胸じゃね~か!!!?
ハァハァ…ハァハァ…
おい小娘!!!!常に手を後ろに構えるのはやめやがれ!!!卑怯だぞ!!!!
ハァハァ
クッ…あのチンコ野郎…股間に湯葉をいれるなんて汚いぞ…。
後ろに落とされても触りたくね~よ…。
…ハァハァハァハァハァハァハァハァ!!
ちょ、ダビデ君、あんた足速すぎるよ!!!!人だけ筋肉がおかしいよ!!!!
ハァハァ!ハァハァ!!ハァハァハァハァ!!!!



メガネ君はずっと行儀良く座っていた。
何かを訴えるような視線をみんなに送っていたがそれが僕らに届くことは無かった。

湯葉が凍り始めた頃、僕らは湯葉落としをやめることにした。


続いては【だるまさんがころんだ】をやることにした。
『マヌケなだるまもいたもんだねぇ。ちゃんと足元を確認しないから転ぶんだよ。そこらへん注意するようそのだるまさんに言っておいてくれるかい?』と、メガネ君が変なことを言ってきた。
マヌケは貴様だ。

鬼は気分的な何かに従ってメガネ君に決まった。
やるからにはみんなマジだぜ。

メガネ『だるまさんがころんだ!!』
みんな『(ピタッ)……………』
メガネ『全員OUT!!!!心臓が動いた!!!!』
………辛口すぎるぞてめぇ!!!!!!!

鬼をダビデ君に交代した。

ダビデ『だるまさんがころんだ!?』
みんな『(聞くな)……………』
ダビデ『だるまさんがころんだ!?』
みんな『(聞くなって)…………』
ダビデ『だるまさんがころんだ!?』
みんな『(や、やめれ)……………』
ダビデ『だるまさんがころんだ!?』
みんな『…………』
ダビデ『だ る ま さ ん が こ ろ ん だ ! ?』

鬼をティンコ君に交代した。

ティンコ『だるまさんは早漏だ!!』

鬼をモンローちゃんに交代した。

モンロー『だるまさんがころんだ!!』
みんな『(ホッ)………………』
モンロー『うっふ~ん♪』
みんな『……………?』
モンロー『メガネ&ティンコOUT!!下半身の突起物が動いた!!!!』
わけのわかんね~やりとりしてんじゃね~よ!!!!

鬼をブンチャ君に交代した。

ブンチャ『だるまさんがメロンだ!!』
みんな『………………』
ブンチャ『…食べていい?』
………勝手にしろ!!!!!!!!!!!!

鬼を僕に交代した。

僕『よしやるぞみんな!!』
みんな『OK♪』
僕『…だるまさんが殺した』
みんな『………………』
僕『だるまさんを殺した』
みんな『………………』
僕『しかたがなかったんだ。加害者のだるまさんAは被害者のだるまさんBに金を払わなければ妻を殺すと脅されていたのだ。脅し取られた金額は数千万円に上 る。もうこうするしか道は残されていなかった。家も売った。会社もやめた。愛する妻にも一方的に離婚を突きつけた。だるまさんAにはもう失うものは何もな かった。ある晩、上機嫌で酔っ払っただるまさんBが居酒屋から一人ででてきた。その酒を飲むお金もきっと自分から奪ったものだろう、だるまさんAは手に 持ったナイフをさらに強く握り締めた。周りに人はいない。頭の中が真っ白になっただるまさんA。気が付けば目の前には血まみれのだるまさんBが足元で倒れ ていた。…後悔はしていない。だがそんなだるまさんAを法は裁いた。だるまさんは刑務所に入れられた。だるまさんの人生は一気に転落した。そう、だるまさ んが…ころんだ…。』

みんな『………………』


なんだか寒くなってきたな。
きっとメガネ君の薄い頭のせいだ。
僕らはダビデ君の家でWiiをやることにした。
…ったく、こんなに寒いのに外で遊ぼうとか言ったアホは誰だ。

2月14日(木)
今日はバレンタインデーとかいう日らしい。
どんな日かは知らないがどうせろくでもない日に決まっている。


朝、学校に着くと【メガネ様へのチョコ受付所。ご希望の方は書類に住所、氏名、年齢、スリーサイズ、メガネ様を誉め称える言葉を記入した上でチョコをお渡し下さい。
※混雑する恐れがあるので早めにおいでください。】
と書かれた看板を持ってメガネ君が下駄箱周辺をうろついていた。
なんでお前なんぞにチョコをあげにゃならんのだ。
つくづく思考回路が変態だ。

その後、6年生の男子に嫌がらせでラッピングされたウンチを渡され、メガネ君は泣いた。


教室に行ってみるとダビデ君がたくさんのチョコを机に並べ困惑した表情で座っていた。
『…学校に来てみたらいろんな女子からこれを渡されたんだよ…。
ヒロシ君…。これはつまり【生きる価値無し!!糖尿病になって死にやがれ!!!!】っていう僕への憎しみのメッセージと受け取っていいんだよね…?
まさか女子からこんなに嫌われてるだなんて思ってなかったよ…(泣)』
ダビデ君は泣いていた。
なるほど、バレンタインデーとはそういう日だったのか。
元気を出せダビデ君。


ティンコ君はチョコはもらってないみたいだ。
変態の癖に女子から嫌われてないだなんて生意気だ。
本人は『バレンタインデー…?ふん、くだらん。
婆さんが恋して多様に淫らになると書いて【婆恋多淫デー】だぞ!?そんな日をどう喜べと言うのだ!!!?ふざけるのは爺さんの電気アンマだけにしてもらおうか!!!!死ね!!!!エロ動画再生中のパソコン残して死にやがれ!!!!』と、なにやらご立腹だ。
………ほぉ、バレンタインデーとはそういう日でもあったのか。
教えてくれてありがとうティンコ君。
眼球が奥にめり込むほど殴ったりしてすまなかったな。


『やぁ、ヒロシ君。君はいくつチョコを食べたんだい?僕はまだ78個さ。今年は所持金が少なくてね。あまりチョコを買う事ができなかったんだよ。残念無念で鼻血がブーだね(笑)』と、ブンチャ君が話しかけてきた。
せっかくの婆恋多淫デーだと言うのにこの男は何をしているんだ。
大量のチョコを見せびらかすかのように抱えやがって。
糖尿病で死にたいのかクズが!!!!
命を大切にしない奴なんて大嫌いだ!!!!
死ねばいいのに!!!!
………などと考えていたらブンチャ君がクチャクチャ音を立てながら口を開いた。
『今日が何の日か知ってるかい?バレンタインデーだよ。今日一日で一番チョコをたくさん食べた人間には政府が賞品としてチョコ50年分をくれるのさ。しかもその人物の名は世界中に知れ渡る事になり、お祝いとして各地の老若男女からチョコをもらえるらしいよ。』
だそうだ。
チョコを得るためにチョコを食すだなんて無駄な行為にも程があるぜ。
うんちを出す為にうんちを食すメガネ君に匹敵するバカだぜ。


まあみんなの話をまとめるとバレンタインデーという日は『女(婆ちゃん含む)が恋した男にラッピングしたチョコ(うんち含まず)をあげる日』のようだ。
母ちゃんが僕に恋していただなんて初耳だ。

1月31日(木)
今日のメガネ君はなんだか様子がおかしかった。
頭がおかしいのは今に始まった事ではないが、いつものアグレッシブな変態行為の割合が平常時に比べ5%ほど少なかったのだ。
僕は友達として心配になり何か悩みがあるのか彼に相談を持ちかけるような事もせずシカトをしていたが、メガネ君に『ちょっと相談があるんだ…』と言われやむなくみんなで相談に乗ることにした。


話を聞くとどうやら虫歯が痛いらしい。
メガネ君のグロテスク極まり無い口内を見ると確かに黒ずんだ歯があった。
『この痛み、もう僕は耐えられないよ!!!!
日頃、みんなのリーダーとなって頼られている僕への恩返しとして、君達でなんとかしてくれたまえ!!!!』と、メガネ君はたいそうご立腹だ。
何の恩義も忠誠も無いメガネ君だが、そこまで言うならしかたがない。

僕たちは、
『力づくで虫歯を抜く!!』
という答えを提示し、早速とりかかることにした。


道具を集めだした僕たちにダビデ君が『歯医者で診てもらうのはどうかな~?』と、他力本願丸出しな発言をした。
ダビデ君がそんな他人まかせな考えを持っているなんてショックだぜ…。

『友が苦しんでいるのだから僕たちの力でなんとかしようじゃないか!!!!』
僕の言葉に胸を打たれたダビデ君は『…僕が馬鹿だったよ。もう迷わない!!
僕たちだけでやってやろう!!』と、考えを改めてくれた。
僕たちの心は今1つになったのだ。


みんなで持ってきた道具でメガネ君の虫歯を抜くことにした。
まずは僕が持ってきたペンチだ。
しょっぱなから強力だ。
もう早くも勝負が決まるかもしれない。
僕はメガネ君の口の中の虫歯にゆっくりとペンチを近付けていった。
いっそのこと全く関係無い歯を抜いてやろうかとも考えたが勘弁してやることにした。



…よし虫歯を掴むことに成功したぞ。
あとは抜くだけだ。
……………?
僕はその異変にすぐに気付いた。
口内のあらゆる場所からしたたり落ちるメガネ君の唾液によってペンチが異常なまでのスピードで錆びているのだ。
こいつの唾液は一体何で出来ているのだろうか?
ペンチが全て錆びてしまった頃、僕は考えるのをやめた。
変態だからペンチが錆びてもなんら不思議ではないのだ。
変態とはそういうものだ。


次はティンコ君が持ってきた例の女体学の本を試してみることにした。
本人曰く『俺はこれで毎日抜いてるぜ♪』だそうだ。
実績があるとなれば期待も高まる。
方法もいたってシンプル。
ただメガネ君に本を見せるだけだそうだ。
さすればおのずと男は抜く為の動作を本能的に行うらしい。
よし、やってみよう。

僕らはさっそく本を開いてメガネ君に見せてみた。
本の中身を僕らは知らない。
見たら歯が抜けるのだ。
恐ろしい…。
僕は必死に目を閉じ本を見ないようにした。
さあ早く抜け、糞メガネ。





…もういいかな?
僕は目を開けた。
そこには下半身を余すことなく露出したメガネ君がいた。
…変態よ、お前は一体何を抜くつもりなのだ?
呆れ果てた僕は錆び付いたペンチでメガネ君のチンコを引っこ抜いてやる勢いで引っ張った。
だが抜けなかった。
変態共は本当にろくなアイディアを出さない。


次はダビデ君が持ってきた殺虫剤を試してみることにした。
これを見たメガネ君はジタバタと抵抗を始めたのだ。
おとなしくしろ!!
貴様虫歯で死にたいのか?
僕はキモい動作で暴れるメガネ君のこめかみにベストな角度かつ申し分無い威力の裏拳をぶつけた。
メガネ君は『ゴブシュア!!!!』と叫びその場に倒れこみ気絶した。

無防備に開けられたメガネ君の口…。
僕たちはそこに殺虫剤のノズルを差し込み一気に噴射した。
まあそのほとんどが虫歯にかすることなく喉の奥へと吸い込まれていったのだが。
メガネ君は泡を吹いてピクピクしていた。
さすが虫けら。
殺虫剤の効果は抜群だ!!!!

しばらくしたらメガネ君は普通に起き上がってきた。そのまま寝ててくれて一向に構わないのだが。


次はブンチャ君が持ってきたつまようじだ。
『これで虫歯をつっついて蝕まれている部分を剥ぎ取れば万事解決だよね!!』と、ブンチャ君は言う。
よし、僕に貸せ!!
………そりゃ!!!!(ブスッ)
…ここか!!!?(ブスッ)
行け!!!!(ブスッ)
…もう少し左だな、ふぬっ!!!!(ブスッ)
死ね!!!!!!(ブスッ)
死ぬのだ!!!!!!(ブスッ)

僕の放った突きは虫歯には当たらず全て歯茎に刺さりました。
口からは血が出ていました。
メガネ君の目からは涙も出ていました。
それを見て僕は微笑みました。


最後はモンローちゃんが持ってきたローソクとムチだ。
『溶かしたロウを虫歯に垂らせば、熱で虫歯は死滅し、さらに患部がコーティングされることによって虫歯の再発を防ぐことができるのよ!!最悪の場合、ムチで虫歯を痛めつけてひっこ抜いてやるわ!!!!』と、モンローちゃんイチオシのアイテムのようだ。

ローソクとムチを手にしたモンローちゃんがメガネ君に歩み寄る。
今まさに自分の身に危険が迫っているメガネ君。
だが彼は逃げない。
勇ましく男らしく立ち向かうようだ。
『………あぁ……、このいやしい豚のわたくしめを屈辱的に罵って下さい、女王様………。』
何かを勘違いしているようだ。
二人の世界を邪魔するべきでないと判断した僕達はそっと席を外した。



グヒョ~♪
…ブフェア…☆
もっと…、もっとお願いします!!!!
(ハァハァ…ハァハァ)
そ、そんなとこまで…!!!!!!
…も、もう、ダメです!!!!!!!

…フォ~~~~~!!!!
エクスタシ~☆※○△◆℡〒↑↑↓↓←→←→BA…






『終わったわよ…。』


部屋から出てきたモンローちゃんは静かにそうつぶやいた。
部屋の中には真性の変態が一人。
そいつは満面の笑みで倒れていた。
虫歯は抜けなかった。
僕達は彼の魂を抜いたのだ。