- BOLERO/Mr.Children
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概要:1997年に発表された、Mr.Childrenの6枚目のアルバム。前作「深海」ではシングル曲が2曲しか含まれていなかったのに対し、このアルバムでは5曲のシングル曲が含まれており、直後に活動休止に入ったことから、いわば「ベストアルバム」のような、それまでのミスチルを締めくくるものとなっている。
総論:
非常にコンセプト色が強かったためにシングル曲が2曲のみしか入っていなかった前作「深海」と比べて、この作品はコンセプト抜きの「ごった煮」のような印象を受けます。「深海」で漏れたそれまでのシングル曲を詰め込んだみたいな
なので、1枚のアルバムとしてのストーリーは薄いと思っています。
活動休止寸前だったために、バンドとしての方向性を各々が悩んでいたのかなぁという気もします。
ただ皮肉なことに、楽曲の力はものすごいものがあるので(とはいえ、あまり好きでない歌もあるのですが)、私自身はよ~く聴いたものです。
ええ、ゆうに100回以上は聴いた気がします。
ミスチルが青春の1ページでしたからね
抄説:★は5つが満点で☆は0.5点。さらに違う色のタイトルにクリックしていただくと偏狭な思い入れの記事に飛びます。
1.prologue ★
オーケストラのチューニングから、不意に音楽が始まります。この始まり方、なかなか面白い。
0:41からは、11曲目、「ボレロ」でも刻まれるリズムがスネアドラムで打ち続けられ、盛り上がりの中、2曲目につながります。
2.Everything(It's you) ★★★★
これ以前のミスチルによく聴かれた、作りこまれた音、というよりは、割とライヴのような音。
例えば、アコースティック・ギターはこれ以前、「カチャカチャ」といわば打楽器・リズムのような音でさりげなく聴こえる感じが多かったのですが、この曲では割にストレートに響き、エレキ・ギターもアルペジオ(左)とリズム(右)がうまく重なっています。
間奏のギターがピックアップされて、きちんとソロっぽいソロを弾いていることも、なんだか当時のミスチルとしては新鮮な印象を受けました。
特に、このギターはラストのサビでもオラオラうなっています
3.タイムマシーンに乗って ★★★
「Everything(It's you)」よりも乾いた音がします。
しかし、ただ乾いているだけでなく、小林武史アレンジの真骨頂である、丁寧なブラス・セクションのバッキングがあることにより、サバサバ加減も抑えられて、いいバランスです。
このブラス・セクション、バッキングだけでなく、間奏では空虚なファンファーレが聴かれるのでなお面白い
でも、アコギやピアノは結構乾いた感じで暴れているんですけどね。
しっかし、2曲続けてギターソロですか。
なんとなく聴いたことがあるなぁと思っていたら、前作「深海」の「臨時ニュース」でチラッと入っていたメロディでした。
4.Brandnew my lover ★☆
タイトルのさわやかな感じを裏切る、なんだか怖いロック。
前々作「Atomic Heart」の「ジェラシー」と「Asia」を足して、焦がした感じでしょうか。
でもですね、まあかっこいいといえばかっこいいんだけど、社会風刺的な歌詞が続くと、いくらメロディやアレンジが変わってもなんだか面白みに欠けるわけですよ。
Bメロのビブラフォンはなんだか印象的な不気味さがあって好きなんですが。
5.【es】~Theme of es~ ★★★★★
ストリングスを効果的に使い、かなり壮大なバラードに仕上がっています。
実は、私がミスチルを好きになった思い出の歌なのです
ストリングスに限らず、この歌は非常に多彩な楽器が登場し、豪華なんですが、「無駄遣い」がないような気がします。
①サビで出てくる、「ピヤン」っていう音のスチールドラム、これが曲を壊すことなく、いい感じに使われている。このスチールドラムは、すぐ後に、「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」でも効果的に使われているし、確か小泉今日子の「あなたに会えてよかった」でも使われていたんじゃなかったかなぁ。小林武史さんのお家芸でしょうか。
②2番のBメロ「愛とは~」から少し大きめな音でハープの音色。
③間奏が切なくもあり、かといってポップスとよく調和するソプラノサックス。「抱きしめたい」でも使われているので、これも得意技でしょうか。
④展開部、ギターが打って変わってワウで演奏され、「展開」しているパートとして、かなり曲の印象を変えるのに一役買っています。展開部でいえば、それまでのべーっと弾かれていたベースもリズミカルになるので、より◎。
⑤最後は転調し、さらにギターが別のメロディ(オブリガード)を奏で、存在感をアピール。
うーん、ごちそうさまでした
6.シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~ ★☆
この歌、すごく人気ですよね~、嫌いとかいう人は聴いたことがありません。
・・・私くらいでしょうか?
個人的にはあまりサビのメロディが好きでないので、星が低めなのです。
なんかリズムも「タンタカ タンタカ …」の繰り返しで、単調な感じがしてしまって。
アレンジ的には「メインストリートに行こうよ」的な軽やかなピアノや、同じく軽快なストリングスもありますが、何となく売れ線的な作り物感があるんだよなぁ。。。
展開部は物静かで結構素敵なのですが、ソロがテナーサックスごりごりで、若干浮き気味な感じがします。
まあ、終わり方はミスチルっぽいですがね。
7.傘の下の君に告ぐ ★☆
もういいよ、社会風刺は~
ここまでで3曲も社会を風刺している曲があるなんて、苦い薬を何杯も飲まされているような…
この曲に関しては、サビで明るく長調なのがあんまり好きではなくて、その前のアコースティックギターが緊迫感を醸していてなかなかよかったので、残念です。
この曲では、アコースティックギターと、ソプラノサックスがなかなかの役回りを演じていますが、特にソプラノサックスはいい音をサビでオブリガードしてます。
間奏の崩れた音色はあんまりですが。
8.ALIVE ★★★★
雄大なシンセサイザー、羽ばたくようなバタバタしているドラム、高音でハモリを効かせたベースから始まる、「おっ」と思わせる始まり。
前曲のように、AメロBメロ部分は短調、サビは長調なのですが、こちらの方が歌詞の「空しさと再生」に合っているように感じます。
2番からはバタバタドラムは乾いた音に変わり、ベースも無機質なゆったりとしたベースになり、サビではエレキ・ギターが「ジャーン」とコードを鳴らします。
展開部を経てラストのサビになると、ギターはアルペジオとなり、さらに転調によって、上昇気分がさらに歌詞と調和。
さて、しかしなんといっても個人的に大好きな部分は、アウトロ、右から聴こえるギターのソロ
フェードアウトしていく曲ですが、音量をあげて聴こえなくなるまでじっくり鑑賞をおすすめします。
個人的には、なんとなく全体的にもったりしているので、もう少し速いテンポだったら良かったなかぁとは思います。
9.幸せのカテゴリー ★★★★
ギターとスチールドラムの重なった前奏から始まります。「Atomic Heart」の「クラスメイト」のような魅惑的なエレキ・ピアノもなかなかです。
この曲では、間奏も含めてビブラフォンがピックアップされていますが、
2番のBメロで始まり、サビでもお家芸のシンセ・フルートと重なった音が、確かに作り込まれた音が得意のミスチルなんだけれども、新しく聴く一面のようにも感じました。
確かに曲の構成は、「versus」などのようにきっちりしたもので、あまり個性がないベース音やドラムの響きを消している感じも以前聴いたものだったのですが、
この曲に関して、歌詞や演奏を聴いてみると、随分大人なサウンドに変化していっているなぁという風に感じました。
まあ、歌詞も結構男には良く分かる、ストレート過ぎる歌詞です。
ラブラブ真っ只中のカップル、彼氏がこの歌をカラオケで歌ったらどうなるのかしら。
10.everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- ★
「Atomic Heart」の項でも、この「BOLERO」でもしばしば言及しましたが、ミスチルの音は、情熱がほとばしている乾いたロックというよりも、作り込まれた湿ったポップというものだと思っています。
少なくとも、この時期の音は。
しかし、この歌は、作り込まれた湿った感じでロックを演奏しようとしている感じが、どちらの良さも消しているように感じました。
まあ、何度も言うようですが、社会風刺はもういいってって言う気もするし。
個人的には飛ばしてしまう歌です。
まあしいて耳につくところは、
①1番2回目のAメロ(1:01~)にピアノが入っているところ。
②女性コーラスにMY LITTLE LOVERのAKKOがいる
③間奏が終わってBメロに入るとき、ちょこっとベースが面白い音になる。
11.ボレロ ★★★★★
タイトル曲ともあって、物憂げなピアノと、こもったドラム(個人的に好きです)で入り、1曲目で登場したオーケストラが伴奏として徐々に登場する雄大なバラード。
曲の壮大さとは異なり、歌詞はかなり個人的な愛について歌っているという、比例していない感じも好きです。
さらに、おそらく参考にしたであろう、クラシックの名曲、ラヴェル作曲の「ボレロ」のように、一定に刻まれたスネアドラムのリズム音も次第に強くなっていくのもいいですねぇ~。
ただ、このドラムのリズムって水戸黄門なんだよなぁ。
1番や間奏は、弦楽器と木管楽器が主体なのですが、2回目のサビからは金管楽器や打楽器も加わることにより、スケールがどんどん大きくなります。
3:53や4:07付近では、中国の楽器でおなじみの「ジャーンジャーン」というドラの音色が聴こえます。
この音、個人的にすごくすごく好きなので、星も甘めになってしまいました。
ただ、ベースとギターの音が聴こえません。ライヴではどうなるんでしょう
・・・そして、なぜこの歌がラストではないのでしょう
12.Tomorrow never knows ★★★★★
ああそうです。この歌は確かに好きですよ。
それだけではなく、この歌はMr.Childrenの代表作として、そしてこの1990年代の傑作として、後世も語り継がれる名曲でしょう。
しかし、「ボレロ」の項でも指摘しましたが、なぜこの「ボレロ」がアルバムの締めではなく、この歌が最後の歌になってしまうのでしょう?
まるで、ボーナストラック、または食後のデザートのような扱いになっているじゃないですか
あ~、勿体無い勿体無い(笑)
ただ、その1点のみをもって、この歌の評価を落とすことはないでしょう。
これぞミスチル
「CROSS ROAD」や「innocent world」のような若さは抜け(いい意味で)、アレンジも秀逸で展開も構成も面白い。
では、まずイントロ~1番から。
イントロ、それはピアノと時折入る鉄琴、スネアドラムの縁を叩くリムショットが静けさと緊張感を生み、歌が始まると、0:45~は歪んでいないクリアーな音色のエレキ・ギターが加わり、サビからはオルガンによってコードが奏でられるのです。
そして、サビ終わりでアコースティック・ギターも入り、2番に突入します。
オーケストラではないのだけれど、それに匹敵するような音の厚みをもたせる作り方が見事です。
さて、次は2番。
Aメロはバンド + ピアノ +(鉄琴)といったもので、Bメロにはシンセ・フルートが加わります。
ミスチルサウンドの完成ですね。
特に素敵なのでは左から聞こえるエレキ・ギター。AメロBメロでは8分で刻まれた、リズムのようなミュート音なのですが、サビ直前の2:39の「タララー」という音と共にオープンなサウンドに。
曲を壊さない音量が抜群です。
2番の勢いのまま間奏に入りますが、この間奏のソロを受け持つのがテナー・サックス。
そして展開部に入ると、いったんそのテンションを下げ、最後のサビに向け、急激に盛り上げ始めます。
とくにこの部分で必聴なのが、3:33から入ってくるシンセフルート。
もちろん、シンセフルート自体は、何度も言っているようにミスチルサウンドにはあるあるなんですが、ここではなんとまさかの1オクターブ低い音が加わった、オクターブユニゾンを聴かせるのです。
低いことが入ることによって、「ぐぐっ」と厚みが増して「あぁ、盛り上がっていくんだろうな」という気分になります。
さてさて、ラストのサビですが、ここも手を抜いていません。
まずテナーサックスがオブリガードを演奏し、ここの音色・旋律ともにすばらしい。
このすばらしさが引き立つのが4:14、印象的な「誰かの たーめーに~」の部分。
歌、バンドともに同じリズムで「ザザザザ ジャージャージャー~」と演奏されているにもかかわらず、テナーサックスだけは唯一「パーッ」と伸ばす音。曲が途切れないので安心して聴けますね。
アウトロはコードを変えて、印象的なイントロのメロディを奏でて幕を閉じます。
いや~、よくできたものだ