3月13日(金)

エンドロールになっても席を立つ人はほとんどいない。

幕切れになると、自然に拍手が起こった。

映画館では珍しい出来事だった。

イベント自粛ムードが列島を包む中、

大阪では恒例のアジアン映画祭が静かに開かれている。

そのオープニング作品、

マレーシア映画の「夕霧花園」を観た。

観たことのないマレーシア映画への好奇心からだった。

 

見応えのある映画だった。

第二次大戦時の日本占領下、

妹と共に収容所に送られた現地女性が主人公。

妹は慰安婦にされ、やがて命も奪われる。

生き延びた主人公は戦後、

検事となって日本軍の戦犯を追い詰めた。

ある時、日本人の庭師と出会い、

庭造りの修業を積む………。

日本軍の占領で被害を受けたマレーシアで、

加害者側の日本人庭師と被害者側の主人公が関わり合い、

国家や歴史と自らの関係に悩む。

最初は複雑な状況設定を理解できなかったが、

時間が経つにつれ謎ときのように理解できた。

第二の主人公といえる庭師を演じたのは阿部寛。

たどたどしい英語のセリフが屈折した人物像に合っている。

 

日本でも広く公開してほしい映画だが、

難しいだろう。