宮古島ワイドーマラソンは、
まさに自分との二人三脚だった。
私の出た50kmのコースは”人のいない場所”ばかり。
中山間地域、農業地帯、海岸線などだ。
しかも、空には灰色の雲が垂れ込める。
そして、冷たい風が吹き、時折雨が降る。
エントリーは50km約170人。
100kmの部の約560人を合わせても約700人。
長いコースでは散り散りにばらけた。
前後のランナーも沿道の人もほとんどいない。
空は重苦しい。
気晴らしをする相手も、励ましてくれる援軍も
自分しかいない時間が延々と続いた。
苦しく、そして充実した時間だった。

50kmの部のスタートは、
100kmの中間地点にある特別支援学校。
号砲は午前11時。
5時スタートの100kmランナーが続々、通過する。
号砲を待つ50kmランナーが、
100kmランナーを熱心に激励した。

「ワイドー」は宮古島の言葉で、
「ガンバル」「ガンバレ」という意味。
50kmの号砲直前に、声を合わせて「ワイドー」。

まずは海辺へ向かって走る。
まだランナーが集団になっている。

しばらくすると、サトウキビ畑などの農業地域。
海が見えない状態。
サトウキビは人の背より高く育ち収穫期。

山の風景、木立、道路を見ながら真っ直ぐ走る。
「海」は時折、木立の間から聞こえる波音だけ。
前半は「島マラソン」であることを忘れそうになった。
ゼッケンは50kmが青で、100kmはピンク。
同一コースで混在したが、容易に見分けがついた。

エイドは給水、給食の場であると同時に、
気晴らしのために一言交わす場だった。

25kmを過ぎたころから海に向かって走る。
岬に入った。
(100kmの部では75km過ぎ)

遠くに灯台が見えたが、なかなか到着しない。

ようやく灯台に到着。
思わず万歳するランナーがいた。
観光客もいて少し賑わいを感じた。

岬を戻る道が延々と続く。
風が強くてスピードががくんと落ちる。
雨も降りだし、つい前かがみになる。

岬を終えて海岸線を走る。
海が見えても、
残念ながら悪天候でくすんで見える。
遠くに上り坂が見え、
「あそこを上るのか」と気が重くなる。

一山越えたと思ったら、また次の山。
それほど高くはないが、
しばしアップ&ダウンの繰り返しになった。
降り続く雨でカメラのレンズも曇った。

坂道の先に平坦な道が見える。
少し元気が湧く。

残り10kmを切り、綺麗な入り江に到着。
いかにも南国風のリゾートのような風景。
心が和み、戦闘モードが緩む。
まだ終わっていないぞ、と自分に鞭を入れた。

やっとの思いでたどり着いたゴールは、
100kmのスタート地点と同じ下地公園。
ランナーと出迎えの人が完走の喜びを分かち合う。
温かい雰囲気があった。
◇ ◇
100km、50km、22kmで合計約1000人。
都市型の派手なマス大会とはまるで違い、
地味で素朴な大会だった。
でも、人里離れたコースのエイドや道案内など、
地元の方々の真面目さや温かさが大きな支えになった。
苦しみながらも走り切れたことが、とてもうれしかった。
宮古島の皆さん、ありがとうございました。