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5月25日(金)
上映時間2時間40分に及ぶ。今どき珍しい”長編”映画だが、退屈など無縁。じっくり楽しめた。
おなじみ大林宣彦監督が昨年の東日本大震災を契機に日本の未来について悩み、考えた中、
新潟県長岡市の花火にひとつのヒントを見出し、この作品を生み出したという。
 
松雪泰子演じる長崎県天草市の新聞記者が、昔の恋人の高校教師の住む長岡市を訪れ、
長岡花火そして長岡市の過去、現在をひもといていく。
長岡は戊辰戦争、そして第二次世界大戦と二度戦火にまみれ、新潟県中越沖地震という天災にも見舞われた。
全国的に有名な長岡の花火大会は実は第二次大戦の空襲で命を奪われた人々の鎮魂のためだった。
そして、中越沖地震からの復興を目指した新しい長岡花火「フェニックス」も登場した。
長岡の花火は心ならずも命を亡くした人々をしのぶとともに、平和で明るい未来を願う祈りのメッセージだった。
 
戦争被害者の鎮魂という意味で長岡は真珠湾攻撃のパールハーバーにつながり、長崎、広島にもつながる。
震災からの復興を目指すフェニックスは宮城県石巻市にも広がった。
長岡は東日本大震災で被災した福島県の避難者を受け入れ、対原発という共通テーマも持つ。
映画では長岡の人々が花火に込めた思いが様々な地域、人々につながる横への広がりを描くと同時に、
長岡の戦争経験者たちが次の世代へ事実や思いを伝えようとしている縦への広がりも描く。
いささか、きれいごとにすぎるかもしれないが、
こうした縦横への広がりの中に平和で明るい未来へのヒントがあるというのだろう。
 
作品では富司純子、笹野高史、柄本明、草刈正雄ら多くの俳優たちがまるで語り部のように過去を語り、
観る者に問題提起する。
これでもか、これでもかと繰り返される問題提起に圧倒される。
大林監督は映画の公式サイトで「一人の旅人として映画の中をさ迷ってみてください」と書いていた。
まさに、さ迷った感じだが、観終わった時には前向きで明るい気持ちになれる。
何となく友人と話がしたくなって帰り道でケータイ電話のダイヤルを回した。
 
「なごり雪」「22歳の別れ」という大林作品の縁か、伊勢正三が主題歌を歌う。
坂田明もサックスを熱演した。
商業的な成功はかなり難しそうなタイプの作品だが、多くの人々が力を合わせて作っているのが感じられてうれしい。
 
一人でも多くに人に観てもらいたい映画だ。