作ってみるか386

あれこれ思い悩むよりゃ、やってみる方が早いやな

ピグノーズをいじるにしてもアンプを自作するにしても、とりあえず部品として「386」を使った基板がいるわけで。ではなぜ「386」なのかというと、部品点数が少なくてカンタンで、すこぶる「いい音」らしいから。いや……しかし、確かにスモーキーあたりの歪み感も捨てがたいが、身の加齢とともにクリーン~クランチの音の良さが徐々に耳にしみるようになりつつもあり、あれやこれやと考えていたところ「386」でも設計次第でクリーンは作れるとのネット記事を見つけておっと、それは朗報、とそれをたよりに情報を追いかけ、いや、やはり市販の電池駆動の小型アンプの基板をそのまま移植した方が早いだろうか、購入時に値の張ったやつとかはもったいないからいっそこのフェンダーのミニアンプあたりの基板をまるまるそっくりコピーして積み込んだりしてみようかとか、バチ当たりにもろくすっぽ電子工作の腕も知識もないうえにあっちにこっちにさんざん横道にそれたり時にはあきらめかけたりもしながらそれでも情報チェックはかかさず、結局「386の方がシンプルだし元がスモーキーアンプなら出音は世界のお墨付きでもある。それになんかしらんが電子部品業界も型番の撤廃とか東芝問題とか新規部品の乱立とかで古い規格のものは入手困難状態らしいし、だからといって現行の異様にサイズダウンされたチップ類を使っての基板とかではとてもついていけん。なら、トライしてみるタイミングにしても、ちょうどいまがベストな時期といえるのかも……」となり、

 

「……まあ、あれだ。とりあえず386で、アンプ(基板部)から作ってみるか」

 

と見切り発車。うだうだと時間だけかけてなにも進まないよりは、実際やってみた方が早いわけで。あらかじめネットであさっていた簡単そうでいてこちらの理想にも合いそうな基板部の図面数枚と数点のネット記事をもとに、どうせ作るならちょっとはゼイタクな品にしてやろうじゃないかと、さしあたって以下のようなものを制作意図とすることに。

 

①図面はクリーンも意識したというコントロールにボリューム、ゲイン、トーンの3種のつまみのついたやつ

②ピグノーズ好きとして電源スイッチはボリュームポットでのつまみ一体式を

③どうせだからヘッドフォン端子も付けちゃえ

④電源はACアダプター(パワーサプライ)と四角電池の併用可能とし、しっかりギター機材っぽく

⑤そりゃあ見た目もかわいくないとね

⑥部材にはこだわらず。入手しやすくて安いなかでより良いものを材料に

⑦なあに、あきらめなければ、ちゃんと完成するわいな。

資材集め

図面から指定番数どおりの石どもを探しドキドキしながら注文。もちろんこれも初体験。そしてざんねんながら、この馬鹿は、それほど器用でもないし、おのが信頼に足るほどに優れた人間であるというわけでもない。

 

「おれのやることだ。絶対何個かは、確実に失敗する」

 

と、あらかじめ4~5個ほど作れる程度に数を合わせて秋月電子さんにネットから注文。数日もなく届いて検品。当地は田舎でもあり入手しづらいものも手軽に購入可能とあって拙宅でも最近はネットショップを多用することが多いのだが、そうたびたび利用するようにもなってくると、とうぜん、送料も馬鹿にならない。今回の自分用の買い物なども電子石どもは比較的小物ばかりだし単価も安くて助かったが、なるべく注文は店舗ごとに一度にまとめて……あれ? 首尾よく基板ができたとして、スピーカーとか配線コードとか、ボリュームのつまみとかも普通にすぐ必要になるんじゃね?

 

……無知無策にもほどがある。送料の心配なんぞ注文前に済ませとけ。つくづくおまえの間抜けっぷりは一生なおらねえなといそいそ追加発注。が、付属材ともよべるポットなどの外付け部品、こちらは石どもにくらべて意外や若干高コスト。もっとも、手持ちとしてスピーカーだけは安物ブゲラからひっぱぐった4Ω8インチが一本押し入れであぶれているから動作テストだけならいつ完成しようと可能ではあるのだが、やはり目当ての小さいスピーカーもそろえて手元に欲しいし、線材なんかも、なければどのみちはじまらないのだからどうせだ、ついでに全部注文しちゃえとこちらもあわせて注文。以降しばらくは、ヤフオクや各ネットショップ、100均店舗などで目ぼしいスピーカーや筐体に使えそうな手ごろな部材はないかいなと、なにかにつけて物色にいそしむ日々がつづくことに。

 

スピーカー各種。大きい順に、ブゲラもの、秋月電子さま販売のもの、ヤフオク購入の経歴不明なもの、同じくヤフオク購入のパソコン用のもの。交換ブゲラ以外はテスト用お試し品もふくめ、ぜんぶ事後購入という見事なまでの間抜けっぷり。背面の黒い板はブゲラに移植したフェンダーアンプのスピーカーの固定板。板のみといえど、こいつでブゲラの8インチ4Ωをがっちり固定。と、大きさはともかく、歪みで名をはせた「386」なのに、この仕様で鳴らすと、意外や色気のある音が……。

初号機は……?

基板一枚目。電解コンデンサーにだけは左右でプラスマイナスの極性があるからちゃんと確認しつつ取り付けて……などと、付け焼刃の浅い知識ながらも十二分に気をくばりながら、基板穴に電子部品を差し込み差し込みハンダ付けしていく。こんな長いことコテ先当ててたら石ども焼けちまうんじゃないだろうか、曲げすぎて足線に負担がかかりすぎてんじゃないだろうか、ああ、電解コンデンサーか、こいつには左右でプラスマイナスの極性が~等々、いち段いち段、部品を組めば組むほどゆっくりと階段を登るかのように不安も募る。もっとも、豪華仕様とはいっても基板部の部品点数自体はせいぜい十個ほどしかないのだから、組み付けるにしても実作業など半日もあれば充分なほどに、たかが知れている。……よし、できた。ボリューム類や電源、スピーカーなどへの仮組み配線も何度か確認。おーけーおーけー。じゃあ、まずは手軽な電池電源の方でいったん初テストでも……ああ、だめか。ドシロウトの組み付けでは、さすがに一発目から鳴らさせるには、すこし構成が贅沢すぎたかしらん。さて、ここからだ。電源投入と同時にプツッと一瞬、スピーカーは反応したようだったが、いったいどこで間違えたんだろう? あれだけ確認したんだし、いくらなんでも組み間違えはないと思うんだが……うん? ひょっとして、この電源ジャックのプラスマイナス端子の絵の書き方って、読みとしては逆になるんじゃね?

 

……そうか、勘違いか。そりゃ、プラスマイナス逆に流しちまっちゃ電解コンデンサーどころか基板そのものが反応せんわな。しかもいち度流れちまった電気だもの、コンデンサー、だめだろうな……。

 

2枚目。鳴らない。一ヶ所ながら恐れていた電解コンデンサーの逆組みという単純ミス部を発見。どうやら拙宅のネコが「なんだよ、くだらねいことやってねいでほれ、撫でてさすって、アタシをかまいなさいよ」と作業場所を荒らしにきてしまい、にわかに集中力が途切れてしまったあたりで組み間違えたものらしい。

 

3枚目。……なにがどこでどうなった? 386ICを境に基板への組み付け向きが上下と左右とで四方がまったくバラバラに。ド素人のぶんざいで、生意気にもより楽な配置の方法はないだろうかと模索しながら組み付け作業した点が最大の敗因となった模様。

 

ここらで自分の間抜けぶりがどうにも情けなく、いったん作業そのものを中止して、すこし日を置いたりして気分転換してみたりする。

 

「基板は魔物でだれもが失敗するするし、初見で組むぶんにはベテランも初心者もその成功率にあまり大きな差はない」なんてネット記事になぐさめられつつ再挑戦。ちゃんと音が出た瞬間は、そりゃあうれしかった。で、勢いに乗って3枚もの失敗基板どもをそれぞれバラいて電解コンデンサーだけ交換して再度組みなおしてなんかみるものの、ああ、鳴らない。やっぱりICとかほかの石にも影響がいったのかもと、この3枚はこれ以上ヘタに手をつけずにいさぎよく、すべてほかす決心をする(でも、まだ残してあったりする)。いち応、今回の場合、初号機は4枚目ってことになるのかしら? それに、もちろん初めてのことなのだからとうぜんではあるのだろうが、そこかしこ、手際の雑さが目についてしまって、仕上がりが気に入らない。なんか下っ腹あたりのどこかがいやに不愉快な気がするので、さらに3個分ほどの材料を注文。その間、手元に残っている部品をより効率よく組み上げるべくちくちく作業に熱中していると「……増産してる」と、娘さんにボソッとつぶやかれてハッとする。仕上がりこそすべて。長年仕事人の世界で過ごしてきた人間の、意外な盲点をみょうに痛感させられる。でも、もう材料再発注しちゃったしぃ~。完成品見ながら組みさえすればそもそも失敗なんかしないわけだしぃ~。それにやっぱ、モノ作るのって楽しいしぃ~。

 

 

残骸。面倒になってやめてしまいましたが、上記の豪華仕様でも基板面のカットはまだまだ可能です。一応、とっぱらったフィルムコンデンサーはしっかり使えましたし、残した抵抗器もはずせば使えるのでしょうが、……ねえ。

 

 

ジジイ知恵袋、フル回転

歳相応に経験だけは蓄積されているので、無事基板ができたからといえどなにかと不安要素がアタマをよぎる。仮組みテストをして気づいてみると、3インチ程度の小さいスピーカーでもいざ鳴らしてみると、小さいながらに、やはりかなりの振動が。プリントではない各電子部品のハリガネ足をハンダで繋いだだけの配線では、実作業者がシロウトであるゆえにどこかしらなおさら心もとない気がしてしまう。バイクでもスピーカーでもギターの弦でも、とりわけこまかい微振動は予想以上になにがしかの影響を、本体に与えていたりするものだ。ふんむ~、と考えていて偶然見知ったのが「グルーガン」と「グルースティック」というコンビの道具。なんかテレビの番組でタレントさんが使ってみせて大好評だったとかで、嫁さんが100均店舗で購入していた戸棚の奥の眠りもの。数年前に購入したってわりにはまったくの未使用ってのがすこし哀愁ものだったが、ローソク状の樹脂を銃型の放熱器具で溶かしながら押し出して硬化接着させるパテ、といった具合のもの。成分的にみても絶縁体のようで、しかもある程度の厚盛りも可能な特性を持っているらしいので、基板裏の足配線やコード組みした根元あたりなんかに、こいつをうりゃうりゃと塗り付けて固着補強をさせてみる。おお、これは便利。

 

ほかにも不安点をあげるとすれば、組み込み時の穴あけ作業なんかも、予想外に困難なものとなってくるはず。ピグノーズにならって、とりあえず木製の小箱状のものを入れ物として使えたらなあ、とぼんやりと考えていたので、最悪、中学のときに授業の教材として買わされた木工道具のキリやらノミやらで穴あけしてヤスリで仕上げてはどうだろう、程度に思っていたのだが、ええいとここで一念発起、ヤフオクで中古の電動ドリルを600円ほどで落札。しかもこれが、小型といえど天下のリョービ製で、日曜工作程度とあらば機能は充分。刃先は出向いたついでにとりあえず100均店舗で数本パックのセットものをあらかじめ購入。どうせアンプにまで仕上げるのならスピーカー用の穴も必要だろうからと自在錐なるものも、見かけたついでに新規にネットで購入。こちら、同じくヤフオクにて中国産のコピー製、900円ほど。いやあ、やった人にしかわからない、ヤスリ掛けの苦しさよ。そこはできるだけラクしたい。

 

しかし、ほんと振動対策には重々気を配っておかないと、最悪、せっかく作り上げてもすべてがパーにもなりかねない。ピグノーズはたしか5インチスピーカーだったはずだから、シロウト回路であるからには理想と現実とをしっかりと見きわめて、基板部とピグ本体を別体式としてしまった方が案外確実かもしれない。いや、しかし、バネ固定なんて方法もあるにはあるぞ。いやいや、ならば基板はもう板面に固定させず各配線を極力みじかく張りまわすことでクモの巣的な宙ぶらりん状態としてしまえば、振動自体はもっと分散するんじゃねえか? などなど、思いつく懸念をなにするともなく四六時中、自然に脳内に送り込んでは、自問煩悶をくり返す。それにつけても、100均店舗にヤフオク、各種ネット販売店ってすんげー便利。もはやいまさら事ではあるものの、思いついたら指先ひとつで見たこともない商品なんかが数日ほどもなく田舎に届く。なるほどこうして利用してみると、そりゃあ地元の小売店舗や雑貨ストアなんかが、ことごとく姿を消していくわけだ。これらに勝つには、よほどのアイデアとサービス心と、その土地に見合った、思いやりのある運営が必要だわな。

 

あったらうれしい変わりダネたち。みな安物ですが、性能は充分。自在錐だけはすこし不安でしたので、到着してすぐにいち度、かるく砥石をあててから使いました。まあ、おまじないみたいなものですかね。そして電子工作時の終了間ぎわに思いもよらぬ活躍をみせたのがこの、グルーガンとスティック樹脂のコンビ。メーカーものでも、よく基板面での部分補強なんかにつかわれている白や半透明のアレなんかは、まさしくコレだったり……?

完成……か?

まだすべてがむき出し状ではあるものの、とりあえず「いろんな電子部品の数々」は「386回路ASSY」として無事(?)完成。不思議なのはテスト時、箱から出してつないだだけの素裸3インチスピーカーでは、音量も出音も、そう評判ほどのものではないという点。う~ん、なんじゃこりゃ。やっぱりこの図面の方法だと構成的に、どこかに無理があるのだろうか? それとも、またどこかで組み間違えでもやらかしているのではなかろうかと、ためしに4Ω8インチスピーカーを押し入れから引っぱり出してくる。外すのがメンドーだったので板面付きのまま保管しておいたものなのだが、ほぼ新品だし、まま、充分に使えそう。いざとばかりに「386」に繋いで鳴らしてみると、いわゆる試し弾き程度でしかないものの、それだけでも充分、音質、音量的に、なかなかにこちらの弾きっ気をソソるものが。3インチスピーカーとの歴たる差は、もちろん径そのものの大きさも充分関係しているのだろうが、4Ω8インチのほうは板面付きで、スピーカー自体がしっかり固定されているというところ。つまり、音質を決定づけているなにかが、振動となって逃げたか逃がしていなかったかという差でもあるわけだ。E=MC2の法則。ふんむ~、ピグノーズの堅牢なあの箱の造りは、やはりダテではないらしい。

 

スピーカーって、きっちり固定されてはじめてまっとうに機能するものなのだと、またひとつ勉強になる。

 

 

 

 

※へっぽこさんのSNS初出品となる利用ホームページ「Ameba Ownd」が今季をもって急遽仕様を変更し、データ量の減少とページ枠の現象から無料公開分は縮小限定となるとのことですので、その内容だけ、まるっとこちらのブログページへと移植させていただきました。

 

まったく、困ったもんだ。

 

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