‪「◯◯◯をぶっ壊す!この国を、人々を守るために」‬
‪彼は固い決意の下で全てを捨てて蜂起した。‬
‪この国を奴らの思い通りにさせる訳にはいかない。いつだって権力者の我儘に振り回されるのは力を持たぬ弱き人々なのだから。‬

彼はこの国の権力者の腐敗した行いを次々と咎めていった。‬彼の壮大な主張は、当初は知識や社会的地位のある人々にしか受け入れられなかった。しかし彼や優秀な仲間たちの地道な努力によって、社会に興味を持たないような人々にも受け入れられるようになった。‬
‪もちろん彼に対する冷ややかな意見も多かった。馬鹿だの、偽善者だの。著名人や知識人からの批判や圧力にも彼の熱い信念が揺らぐことはなかった。‬
‪むしろ彼は一つ一つの批判に対して真っ直ぐに、飾らずに反論していった。正義の行いには嘘も飾りも必要ない。誠実さこそ最大の説得力なのだから。‬
‪社会に対して意見を言えなかったような弱き人々にも彼は知恵と声を与え、彼らのような弱き人々を虐げる権力者たちを共に打倒しようと誓った。

‪ところがある日彼の目に一つの批判が目に留まった。‬
‪「お前みたいなやつが俺の住んでるところの市長なんかになったら終わりだ」‬

‪拙い意見だった。権力者の流す風評に踊らされた、知識なき人々の一人の妄言だ。それで済ませばいいようなものだった。‬
‪しかし彼は気付いた。このような意見を発する人々こそ自分が守ろうと決意した、権力者の我儘に振り回される弱き人々ではなかったか。‬

‪弱き人々が権力者達に洗脳され、間違ったことを言っている。‬
‪自分たちは弱き人々に正しいことを伝え、社会を変えようとしている。‬
‪彼は自分の正しさは確信していた。ただ同時に、一つの疑念を抱いた。‬
‪形は違えど権力者たちと私たちは、お互いに弱者を味方につけて戦っているのではないか。‬
‪それはまるで戦争ではないか。弱者に武器を持たせ、自分たちの信念のために戦わせる。知識を持たぬ人々はそれに疑いも持たず戦う。‬血は流さない。弱者達が死ぬこともない。ただ彼らは結局権力者や私たちの駒として使われてるだけではないか。
‪「俺は誰を守ろうとしているんだ?何をぶっ壊すんだ?」‬
‪彼は呟いた。‬