四年半。
末期がんと診断されてからよくもった。

晩年の父は無欲だった。
自分はもう十分楽しんだから、もう何も思い残すことはないと。

お気に入りのソファーに座って朝から晩までテレビと新聞を見て亡くなる前日までトイレに自分で行っていた。

つい最近まで晩酌が唯一の楽しみで

でも一緒に住んでくれている姉がいうには食欲が落ちてこの夏痩せてしまったという。

体調をくずして入院した次の日にあっという間に亡くなった。
最期には間に合わなかったが、なくなる数日前に会いにいけたことがなぐさみだ

思えば母が亡くなったときも二日前に会えた。その時は母はめまいのせいか半狂乱で「落ちる、落ちる、捕まえて、捕まえて」とせがんだ。手を握っても「へたくそだな…もっとちゃんと捕まえて」と私を叱責した。

最後の記憶が怒られたことだったのに比べれば、今回は「またくるね」「ん」
優しい会話だ。

だからといって何かが軽減されたということではなくやっぱり同じように辛い。

目をつむると、どこからかSalut d'amourが聴こえてくる。CMの影響かな(苦笑)
娘と連弾で弾くために三週間本気で取り組んだから、結構からだの髄まで染み込んでる。

実家に向かう下りの電車で下を向いて座っていたら両脇に中高年のハイキンググループの人たちが私を囲むように座った。
私越しに元気に会話していて朝から賑やかだ。

並んでお話してもらおうと席をたつと「ごめんねえ」と優しく笑う。

親よりもちょっと若い世代かな、いつまでも皆さんお元気でいてください

そう思ったら

泣けてきた