本日2人目はHC佐竹彰さんです!
「本気で全道制覇を成し遂げたい」
去年の秋、男は俺にそう話した。
口だけで行動が伴わない人間はこの世に五万といる。
だが、この男は違った。
体づくり、練習強度、チーム運営、全てにおいてチームへ求めるレベルを根本から引き上げ、
今までの風習に真っ向から立ち向かい、新しい風をチームに吹き込もうとした。
「ああ、こいつは本気なんだな」
そう思った。
男は超がつくほど不器用だ。
自分の想いを伝えることが苦手だ。
優先順位を間違えることもある。
そして頑固だ。
そんな男が今、数えきれないほどの苦難困難を乗り越え、自身最後のシーズンを迎えようとしている。
入部当初自分しか同期がいなかった一年目。
何もわからずに終わった二年目。
何もできずに終わった三年目。
そして、仲間が多く去っていった四年目。
男は今、何を想うだろうか。
男が道に迷う度、何度も助けたいと思った。
しかし、殆どのことは助けることができなかった。
全ては俺の力不足だった。
何故俺はコーチをしているのか。
何のためのコーチなのか。
何度も自分に問うた。
何度も俺はコーチに向いていないと思った。
試合でコーチボックスに入った。
上手くいったことが本気で嬉しかった。
負けたことが本気で悔しかった。
仕事の合間に何度も試合の分析をした。
家に帰って飯も食わずシャワーも浴びずに何度も動画を見返した。
気づいたら4時になっていたこともあった。
不思議と辛さは感じなかった。
多分、俺も男と全道制覇を成し遂げたいんだと思う。
多分、だから俺はコーチをしているんだと思う。
男に伝えたい。
ここまでの道程が正しかったかなんて誰にもわからない。
結果でしか判断できないということ。
だから俺たちは結果を残さなければならない。
結果を残すことでしか俺たちの努力は報われない。
結果を残さなければ俺たちは次のステップに進むことができない。
このプレッシャーを一身に背負うこと。
最後の使命だ。
俺は全道制覇を成し遂げた男とキンキンに冷えたビールを喉に流し込むことだけしか考えていない。
その時初めて俺はコーチのやり甲斐を感じるのだと思う。
その時初めて男の四年間は報われるのだろうと思う。
その瞬間は必ずやってくると信じている。
HC 佐竹 彰