最近「フランス人は10着しか服を持たない」という本が人気ですね。
気になりつつ、自分では真似できそうにありませんが……

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日本人が憧れるフランス生活の「本当の質」

フランスで実際に暮らしてみると、がっかりしたり、苦労したりすることが多い。

いちばん困るのは、家の中の設備が次から次へと故障するうえ、なかなか直せないことだ。どんどん建て替える日本と違って建物が古いうえ、水道水に石灰分が多いため、トラブルが起こりやすいという面もある。

私が家族で住んでいたパリのアパルトマンの建物は築50年とパリでは新しいほう(周囲の建物は築100年を超えていた)だったが、たびたび災難に見舞われた。

入居早々、トイレの水が止まらなくなった。水道修理工を呼ぶが、すぐには来てもらえない。3日後に来てくれることになったが、約束の時間は「午後」という大ざっぱなもの。午後中ずっと待って、やっと修理してもらえたが、修理工が帰った後、水を流すとまた止まらなくなる。同じ修理工が再度来ても直らず。3度目に「修理工の学校で教えている」というベテランが来てやっと直った。問題解決まで1カ月近くかかった。

故障を直そうにも、問題解決に1カ月……

また、大人が3人入ればいっぱいになる小さなエレベーターが2機あったが、しばしば故障した。幸いすぐに救出されたが、閉じ込められたことも2回。帰国する3カ月前には、うち1機が動かなくなってしまった。

エレベーターは8階まで昇るものと、6階までのものがあったのだが、故障したのは我が家がある8階までのほう。修理業者が調べたところ、直すにはある部品が必要なのだが、昔の部品なので在庫がないとわかった。型を作って、その部品を作らなければならないので、3カ月以上かかるという。というわけで、帰宅する際には、6階までエレベーターで昇った後、2階分を階段で上がるはめになった。降りるときにはその逆をたどる。帰国のためにアパルトマンを引き払う日まで、ついにエレベーターは直らなかった。

顧客へのサービスを重視しない、フランス人の働きかたにも悩まされた。渡仏し、入居するアパルトマンを決めたとき、不動産会社の担当者が冬休みに入る前に、契約に必要な書類をそろえるよう要請された。書類が間に合わなかった場合、担当者が冬休みを終える2週間後まで契約できないという。休暇中の引き継ぎはない、とのことだった。夫と夫の会社のスタッフが大慌てで書類を準備し、どうにか担当者の休暇前に契約できた。

日常的に利用するスーパーや郵便局でも、従業員の休養は優先されている。

スーパーでは、お客に比して稼働しているレジが少ないうえ、商品を通すスピードが遅い。たいてい各レジに数人は待っている。行列が長くなっても、開けるレジを増やすことはほとんどなかった。それどころか、レジ係の休憩時間になれば、どんなに行列が長くても、そのレジは閉めてしまう。大半のスーパーは日曜休業なので、前日の土曜日は大混雑となる。私は一度、土曜日のスーパーに買い物に出かけて、二度と週末には行かないことに決めた。

「フランス人は10着しか服を持たない」で紹介されている貴族のマダムは、毎日買い物カートを引いて専門店を回り、上質な食材を手に入れる。実際は、八百屋、肉屋、チーズ屋、パン屋と回ると、1時間くらいかかってしまうことがある。それぞれの店で、接客の順番を待ち、「ボンジュール」とあいさつをかわし、商品を注文し、代金を支払い、袋詰めしてもらう。別れ際には、「良い一日を」などとまたあいさつし、店を出る。時間に追われている人にはとてもできない。

治安も日本ほどには良くない。スリが多いので、外出するときは地味な服装を心がけた。ハンドバッグは斜めがけ。地下鉄の構内にエレベーターやエスカレーターはほとんどないので、運動靴かヒールの低い靴を履く。おしゃれな服を手に入れても、披露するチャンスはあまりなかった。

地下鉄車内では、居眠りなどとんでもない。バッグに手をかけ、常にスリに対する警戒態勢をとる。駅名のアナウンスもほとんどないので、到着する駅の表示に目を光らせておかなくてはならない。ブランドのバッグを持ち、おしゃれな服を着て外出できるのは、運転手付きの車で移動できる人だけではないか、とやっかみたくもなる。

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やはり、いいことばかりではないんですね……
日本とフランスのいいところを合わせられないものかなと思います。
1時間かけて専門店を回るのは気が進みません。

優雅な生活を楽しむには、便利さを犠牲にしなくてはならないこともあるんですね。
「ふらんすへ行きたしと思えども、ふらんすはあまりに遠し」ですが。