”おなかの風邪”流行中です
「今年は、吐き気と下痢の風邪が流行っていて、点滴になる患者多数。」と前回書きましたが、全国的な傾向のようです。特に抵抗力のない老人では亡くなるケースも多くて、広島や神奈川の老人施設での集団発生が報道されています。
いずれも問題となっているのは、ノロウイルスみたいです。(参照リンク)「おなかの風邪」とはいうものの、この場合は、実際は食中毒でして、参考リンクにも書かれているけれど、一般的な食中毒は、腐りかけを食べたときなどに起こるのに対して、ノロウイルスによる食中毒は、もともと、生カキなどに蓄積されているので、どんなに新鮮なものを食べても、起きうるわけです。そんなわけで、決して生カキを食べないドクターもいます。
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広島でのケースでは、保健所への報告が遅れたとのことで、業務上過失致死うたがいなどで捜査中とのことです。発症者が出てから報告まで9日間とのことだけど、この期間を長いと考えるか、妥当と考えるかで評価が分かれるところでしょう。
最近、医療関係者が業務上過失致死罪に問われるケースが目立ってきていますが、この手の報道を聞くと、ますます日本の医療が(医療者側の)自己防衛の医療になっていくのではないかと不安になります。自己防衛の医療を望んだ結果、そもそもリスクの高い科である、産婦人科、小児科、外科はますます志望者が減ってきています。
また、自己防衛医療の結果として、たとえば、今の時世では、小児科医以外は救急での小児の診察を拒否するようになってきています。どんなに軽症だと思っても、急変がおきる確率が決してゼロにはならないし、もし急変したときに小児科医でない自分に課せられる責任を考えると、はじめから専門外であることを理由に拒否したほうがいいわけです。そもそも、親が小児科医の診察を望んでいるわけだし。
そんな事もあってか、最近、オールマイティーに疾患を診ることのできる、かかりつけ医的な「家庭医」を育てようと国は考えているみたいですが、「広い範囲の疾患を扱う=リスクの高い」家庭医になりたがる医師が果たしているでしょうか。この訴訟社会になってきた日本では、まず無理だとおもいます。「家庭医になって、子供から老人まで全部を診察しろ。ただし、医療事故などがおきたら医者側が責任を負え」という、国側の自分勝手な言い分が見え隠れしてるような気がします。
解決策としては、国、又は地域が主導となって、(特にリスクの高い科の)医師をきちんと保護してくれる体制を最低限つくらなければならないと思います。そうでないと、リスク回避の医療がますますはこびり、医療サイド・患者サイド共に不幸になってしまいます。そろそろ何とかしないと、本当にまずいと思うのだけど。
いずれも問題となっているのは、ノロウイルスみたいです。(参照リンク)「おなかの風邪」とはいうものの、この場合は、実際は食中毒でして、参考リンクにも書かれているけれど、一般的な食中毒は、腐りかけを食べたときなどに起こるのに対して、ノロウイルスによる食中毒は、もともと、生カキなどに蓄積されているので、どんなに新鮮なものを食べても、起きうるわけです。そんなわけで、決して生カキを食べないドクターもいます。
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広島でのケースでは、保健所への報告が遅れたとのことで、業務上過失致死うたがいなどで捜査中とのことです。発症者が出てから報告まで9日間とのことだけど、この期間を長いと考えるか、妥当と考えるかで評価が分かれるところでしょう。
最近、医療関係者が業務上過失致死罪に問われるケースが目立ってきていますが、この手の報道を聞くと、ますます日本の医療が(医療者側の)自己防衛の医療になっていくのではないかと不安になります。自己防衛の医療を望んだ結果、そもそもリスクの高い科である、産婦人科、小児科、外科はますます志望者が減ってきています。
また、自己防衛医療の結果として、たとえば、今の時世では、小児科医以外は救急での小児の診察を拒否するようになってきています。どんなに軽症だと思っても、急変がおきる確率が決してゼロにはならないし、もし急変したときに小児科医でない自分に課せられる責任を考えると、はじめから専門外であることを理由に拒否したほうがいいわけです。そもそも、親が小児科医の診察を望んでいるわけだし。
そんな事もあってか、最近、オールマイティーに疾患を診ることのできる、かかりつけ医的な「家庭医」を育てようと国は考えているみたいですが、「広い範囲の疾患を扱う=リスクの高い」家庭医になりたがる医師が果たしているでしょうか。この訴訟社会になってきた日本では、まず無理だとおもいます。「家庭医になって、子供から老人まで全部を診察しろ。ただし、医療事故などがおきたら医者側が責任を負え」という、国側の自分勝手な言い分が見え隠れしてるような気がします。
解決策としては、国、又は地域が主導となって、(特にリスクの高い科の)医師をきちんと保護してくれる体制を最低限つくらなければならないと思います。そうでないと、リスク回避の医療がますますはこびり、医療サイド・患者サイド共に不幸になってしまいます。そろそろ何とかしないと、本当にまずいと思うのだけど。
医局制度の功罪
年末年始は、田舎の某救急病院で日当直でした。
かなり田舎の病院で、おばあちゃんに「ちょっと、ちょっと」呼び止められて、何かと思えば、「エレベーターの使い方が分からないから、代わりにボタン押して」と、頼まれるような病院(笑)。
今年は、吐き気と下痢の風邪が流行っていて、点滴になる患者多数。そのほか、外傷・狭心症発作などなど。72時間連続の業務でした。土日の48時間日当直とかはよくあるけれど、さすがに3日間の連続だと、さすがに最後のほうは精神的に疲れてしまいました。
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で、今回グチりたいのは、忙しさを愚痴るわけではなく(愚痴りたいですが)、医局制度についてです。一般の人は、医局を「白い巨塔」のイメージでとらえていて、諸マスコミも「医局=悪」でとらえていることが多いです。私も、医学生のときまではそう思っていたのですが、医師になってみると、医局のメリットが見えてきました。
その大きな役割は、今日まで私が当直していたような田舎の地方病院への医師派遣の役割です。従来の教授を絶対とする医局制度下では、手術のほとんどないような病院でも命令とあらば行かなければなりませんでした。そのおかげで、誰も行きたがらない病院でも、ある程度、医師が充足され、地方医療に役立っていました。
最近、医局制度廃止を行う大学が出てきましたが、いずれの病院も、その結果、誰も地方の田舎病院に希望する医師がいなくなり、医師不足という状況になってきています(参考リンク1)。
医師側としては、当然予測していたことなのですが、その辺のところを、マスコミは分かっていなくて、例えば、2003年7月の、NHKクローズアップ現代の番組紹介では次のように書かれています。
「医師自身も、医局制度の弊害に気がつき始め、医局を自ら飛び出し、臨床医としての腕を磨こうとするケースが増えている。」
一見、かっこいい文句だけれども、結局、地方の小病院に勤めるのを拒否して、大病院(雑用の多い大学病院は除く)・報酬の多くて手術も多い民間病院に医者が流れていってしまっている、ということなんだけどなぁ。
ただ、札医大の学長が述べている、医局制度を廃止する理念は理解できるわけで、今後、医局制度を廃止した大学が、どのようにシステムを良い方向に変えていくのかを注目しています。結局、重要なのは、医局制度をなくしたから医療が良くなるのではなくて、なくしたあとに、どのようなシステムを作るか、ということなので。
かなり田舎の病院で、おばあちゃんに「ちょっと、ちょっと」呼び止められて、何かと思えば、「エレベーターの使い方が分からないから、代わりにボタン押して」と、頼まれるような病院(笑)。
今年は、吐き気と下痢の風邪が流行っていて、点滴になる患者多数。そのほか、外傷・狭心症発作などなど。72時間連続の業務でした。土日の48時間日当直とかはよくあるけれど、さすがに3日間の連続だと、さすがに最後のほうは精神的に疲れてしまいました。
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で、今回グチりたいのは、忙しさを愚痴るわけではなく(愚痴りたいですが)、医局制度についてです。一般の人は、医局を「白い巨塔」のイメージでとらえていて、諸マスコミも「医局=悪」でとらえていることが多いです。私も、医学生のときまではそう思っていたのですが、医師になってみると、医局のメリットが見えてきました。
その大きな役割は、今日まで私が当直していたような田舎の地方病院への医師派遣の役割です。従来の教授を絶対とする医局制度下では、手術のほとんどないような病院でも命令とあらば行かなければなりませんでした。そのおかげで、誰も行きたがらない病院でも、ある程度、医師が充足され、地方医療に役立っていました。
最近、医局制度廃止を行う大学が出てきましたが、いずれの病院も、その結果、誰も地方の田舎病院に希望する医師がいなくなり、医師不足という状況になってきています(参考リンク1)。
医師側としては、当然予測していたことなのですが、その辺のところを、マスコミは分かっていなくて、例えば、2003年7月の、NHKクローズアップ現代の番組紹介では次のように書かれています。
「医師自身も、医局制度の弊害に気がつき始め、医局を自ら飛び出し、臨床医としての腕を磨こうとするケースが増えている。」
一見、かっこいい文句だけれども、結局、地方の小病院に勤めるのを拒否して、大病院(雑用の多い大学病院は除く)・報酬の多くて手術も多い民間病院に医者が流れていってしまっている、ということなんだけどなぁ。
ただ、札医大の学長が述べている、医局制度を廃止する理念は理解できるわけで、今後、医局制度を廃止した大学が、どのようにシステムを良い方向に変えていくのかを注目しています。結局、重要なのは、医局制度をなくしたから医療が良くなるのではなくて、なくしたあとに、どのようなシステムを作るか、ということなので。
