職場に50歳代の人がいる
俺は彼を仙人と呼んでいる
50ちょいくらいなのにおじいちゃんみたいだからである
俺は彼に気に入られている
休憩時間には必ず隣に座ってくるのだ
ある時、そんな彼の耳の中に毛が見えた
髪の毛が抜けて耳の中に入ったのだと思った
長さにして2,3センチはある立派な毛だった
その日はそのままやり過ごした。
次の日、それがまた見えた
俺は軽く息を吹きかけてみた
彼は俺を見た
俺は口笛を吹いてるふりをした
しっかりと根付いている毛
これは・・これは髪の毛じゃない
俺はそう確信した
耳の中に一本、質の良い黒く太い毛
彼は気づいていない
正面からはまだ見えないのだ
正面から見えるようになるには
あと数年はかかるであろうと俺は予測した
俺はこの毛を大切に見守る事を心に決めた
このあと仕事が手につかなかった
自分の耳の中にも毛が生えているのではないかと
気になってしかたないのである
自分には見えなくて他人には見えるもの
誰もがそれをもっているのかもしれない
少し離れた路肩に車を停めて
そこから一本の桜の木を見ていました
自転車に乗った地元の小学生グループが
車の横を通り過ぎて行きます
彼らが桜の木を指差し一言、
「なんだあれ!?」
笑ってしまった
地元の子供たちにとっては
通いなれた場所にあるただの桜の木
そこに群がるカメラを構えた大勢の人達
異様な光景なんだろな









