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そんなことないわよ、いま一寸、用があって来たのよ――」
 葉子も、これほど熱烈な黒吉の気魄に、少し可哀想になったのか、しんみりそうはいったものの紛れ射す月の光に、この呪われた醜怪無残な彼の顔が写ると、ぞっとして吐出すように、
「黒ちゃん、もうお互いにサヨナラしましょうよ、それがお互いのためだわよ――ほほほほ、ねエ黒ちゃん、もう昔のことはいいっこなし、『極東』の解散と一緒に、他人になりましょうよ。……少しでも、あたしに可愛がられたあんたは幸福もんだと思いなさいよ……あたしはね、これから仰言る通り、あの人に逢いに行くの……今夜は向う泊り――羨
うらやま
しくって……」
 靄を透して来る、弱い月の光りにも、ロシア 結婚彼女の顔には、黒吉にとって、最早絶望の、鋭い険があった。
「葉ちゃん、もう一度でいい、その手を握らしてくれ、その円い胸を抱かせて……、それでいい、俺はそれで満足するんだ、ね……もう一度――」
「何、いってんのさ、跛足のバカ……お前さんの顔は、化物そっくりだよ、ヘンだ、そんな顔でよくも図迂図迂
ずうずう
しいことがいえたもんだね……せいぜい、由公でも抱いてるさ……」
 秋の飛行場は、物寂しい闇につつまれていた。周囲はほの暗く、憤怒に燃え立った黒吉の瞳

は、殺意を含んで、ギラギラと輝き、無恰好な体からは、陰惨な血腥
ちなまぐさ
い吐息が、激しく乱れた。
「うう……畜生」