釜崎には老若男女のホームレスがいると以前書いたが、もちろんトランスジェンダーの人もいた。
私が出会ったのは数人であるが、その中で私に友達になって欲しいと詰め寄った男??がいた。
彼の心は女であった。
彼は救急車で運ばれきた。搬送理由は意識障害(もちろん泥酔による・・・)
救急車から出てきた時には女だと思った。
ストレッチャーに乗っている人の服装は女なのである。
花柄のスカートにビリビリに電線の入ったパンスト・・・・・今時こんな靴は履かないだろう・・・という真っ赤なパンプス・・・・スカートとのコンビネーションが悪すぎのブラウス・・・・その上の顔は・・・汚い顔ヾ(。`Д´。)ノ
メイクはおまえ歌舞伎役者か??(;´Д`)ノと思わせるほどの白さ・・・・
キレイに塗れていればまだしも、ヨレヨレでゴワゴワ・・・・所々剥げてて、ヒゲがボツボツ・・・・とにかく汚い顔なのだ・・・・
髪の毛も長く伸ばしているが、刺さったら痛いようなゴワゴワの毛髪・・・・・ゲイってやつだろう・・・・
入院しても他の患者さんとのトラブルが予想されるので、点滴して酔いが醒めたら帰ってもらおうことにした。
見た感じは若い・・・・
半日ほどして覚醒した。
それからが大変だった。
とってもおしゃべりなのである。仕事している私の後ろをついて周り、ずっとしゃべりまくる。
生い立ちとか、今の仕事とか、心の悩みとか・・・・・
以前は今宮のニューハーフの店に勤めていたらしいが、うまくいかずに辞めて、今は西成のホームレス専門(そんなものが存在するのかは知らんけど)の酒場で働いてる(自称)らしい。
年は私と変わらない。2、3上だったように記憶する。
「ねえ、おねえさん女友達いるの?」
「おるで・・・」
「いいわねぇ~ 私も女友達欲しいわぁ・・・」
「作ったらええやん・・・ホステス仲間おるやろ」
「だって私とだれも友達になってくれないわよ・・・それにホステスじゃなくて普通の友達よ」
「なに贅沢なこと言うてんの・・それよりもその話し方どうにかならへんの・・・」
「なに言ってるのよ、私は心は女なのよ!」
「そうやろな・・・・なり(外見)見たら分かるけど・・・・」
・・・・・とずーーとこんな調子で点滴しながら、しゃべりかけてくるのである。
まったく仕事にならない。
点滴も終わり、酔いも醒めて歩いてもふらつかなくなったので帰ってもらうことにした。
「暗らならんうちに帰りや~」
「もう~おねえさん・・・帰れ言うけど帰るところないのよ」
「そやろな・・・・この病院に運ばれてくる人で帰るとこある人は殆どおれへんから、めずらしないで」
「もういじわる言わないで、今日はここに泊めてよ。私おねえさんの女友達になりたいの、友達になって」
「泊めてよ言うても、ここはホテルちゃうから、いつもの寝てる場所に帰り。それに女友達って、あんた男やろ」
「うーーん♪私は心は女なの!」
「はい、はい分かったからもう帰り」
こんな会話が延々と続きまた身の上話が始った。
一向に帰る気配がない。その身の上話も私からしたら普通に不幸な人の話であって、同情に値するほどのものでもなかった。
もし不幸自慢するとしたら、私の身の上話の方が絶対勝ってるし・・・・と思う程度である。
その間もどんどん救急車は到着し、外来はごった返していた。
だんだん柔和な私も・・・・切れモードに入ってきた。
屈強の事務員が出動・・・・・難なく帰った・・・・
それから毎日・・・病院の入り口に待ち伏せして、「おねえさん、友達になって私寂しいの・・・」と言い寄ってきた。
彼はいつも汚かった。メイクの仕方がなってない。色も悪いしノリが悪いのである。
私はいつも「メイクの仕方がなってないでぇ~もっとキレイにならんとな~」といいながら地下鉄に消えてった・・・・一週間ほどで彼は・・・いや彼女は現われなくなった。
それから一度も会っていないけど・・・・たぶんもう死んでるやろな~