西成人は尋常ではないが・・・・そんな人ばかりではない。


10年間、西成での病院勤めの中で強烈にインパクトのあった人を紹介していったが、これがエブリディではない。


こんなことがエブリディだと、持つはずがない。


飲んでない人も中には(稀だけど)いるし、大人しい理解力のある人ももちろんいる。


救急外来の仕事に慣れた頃、私はとっても虚しくなった。


何をやっているかよくわからなくなってきたのである。


元気になって退院しても、2、3日にしたら国から支給された日用品の3万円を全て使い果たし、ベロンベロンに酔っ払って救急車で運ばれる。


それで「入院さして~」とくる・・・


そんなことが続くとホント疲れてくるし、私のいる意味がわからなくなってきたのである。


西成人はアル中の人が多い。


運ばれて入院が決まっても、直ぐに病棟に上がることができない。


アルコール臭が消えない限りは病棟には上がれないのである。この病院には個室というものがない。


リカバリー部屋(重症者用の部屋)は唯一、5人部屋と少人数であるが、殆どが12人から15人部屋と大掛りな病室でカーテンもない。(火とか・・・・危ないから)


女性のホームレスは少ないが、時々運ばれてきて入院となる。


その場合にはカーテンがついているベットが3つあって、そこに入ってもらうのだが、部屋自体は混合部屋なのだ。


今から考える、非常識な話であるが誰も何も言わないし、気にもしない。患者さんもスタッフも。


患者(女)本人も気にしていないし、うれしいそうなのである。


みんなやっぱり女には優しいし、気にかけてくれるからであろう。


で、話は長くなったが、個室がないからアルコール臭があると同じ部屋の患者さんがその匂いに感化されてしまい、皆飲みたくなって脱院が多くなるし、ケンカが始ったりする。


そんなアルコール臭のある患者さんの看護をするのが救急外来に常設された簡易ベット。


点滴を打って、翌朝になると禁断症状が出始める。


意識が泥酔とはまた違う様子で混迷してくるのである。


あきらかにそれは見るとわかる。


酔っているのか、禁断症状の意識レベルの低下か・・・・


ブルブルと全身が震え始め、意味不明な言葉を口走るようになる。発汗、高熱・・・頻脈・・・症状は様々である。


そうするともう輸液管理、体液の管理をしっかりと行い、抜けるのを待つしかない。


難しいところなのであるが、この禁断症状を改善させるための一番の方法は、もう一度「酒」を飲むことである。


飲むと意識はシャンとし、全ての症状が消える・・・・でもね・・・・って感じ・・・


難しいところ・・・


帰すなら禁断症状が出る前に帰さないといけない。その判断を鈍ると2、3日はその禁断と付き合うことになる・・・・


禁断から抜けて入院しても、退院するとまたアルコール漬け・・・・そしてまた禁断・・・・


虚しくなるでしょ・・・・そりゃ~


続く