この病院は救急外来のつくりがちょっと違っていた。


正面玄関はレール式の大きな鉄製の門扉(格子状)があって、夜はそれがしっかりと〆られて、中からも外からも出入りできない状態となる。


その門扉を入ると車が横付けできるスペースがあって、直接救急外来に入ることができる。


横には通用門があり、歩ける人はそちらから入ってもらい、事務手続き行ってから診察室に入る。


ここまでは普通・・・・・


で、どこが違っているのかというと救急外来入った直ぐ横にシャワースペースがあるのだ。


一応血圧も測れる、採血もできる聴診器も胸にあてられるという基本的な事(私達が触れる)ができる程度の汚れ具合の場合には先に診察をする。


その結果、入院が決定するとシャワーを浴びてもらいキレイになってから院内着を着用して、診察室横に常設されている簡易ベットで点滴を1本~2本程度打って酔いを覚ましてから病棟に上がる。


一晩はその簡易ベットで寝てもらうことが殆どである。泥酔から醒めるにはやっぱり8時間は入る。


しかし殆どが入院となる・・・からこのケース。


自分で歩ける程度であれば、帰ってもらうこともできるが・・・患者さんも入院するつもりてきてるから、入院できないとなると、入院できるまで繰り返し救急車を呼んで、どっちが負けるかみたいな・・・根競べになるのは目に見えているので、特に問題がなければさっさと入院をしてもらう。


救急隊員にも迷惑をかけるし・・・・


で!


どうしょうも手がつけられないほど汚れている場合・・・(/TДT)/


重症でなければ、とりあえず血圧だけ測ってそのまま横のシャワースペースに入る。


酔っ払っている人が殆どなので、床に転がった状態で服を脱がせて、洗い清める。


イスやベットなどに乗せた状態だと危なくて仕方がない。


見た目は床に転がして人間扱いしていないみたいだけど、これが一番安全で患者さんもストレスがない。(酔っているからじっとしていられないのである)


救急隊から連絡があると、まず症状の他に汚れ具合が報告される。


その報告によって私達ナースの出で立ちが変わるのである。


清拭必要という連絡であれば、私達はナースはナースシューズを脱ぎ、白い長靴に履き替える。


そして予防着(白衣の上に着る割烹着みたいなもの)の上から魚屋さんが着用しているような足首まであるビニールのエプロンをする。


手はよくナースが着用しているような半透明の薄っぺらいポリの手袋ではなく、家庭用で肘まである厚手のピンクのゴム手袋をし、ナースキャップは邪魔なので取り救急車を待つのである。


1人が血圧を測り、DrからOKサインが出ると服を脱がせ(ハサミで着ることが殆ど・・・ムシがいるから)大きなビニール袋に脱がせた服とバリカンで刈った髪(シラミが大群をなしているので)を全てて入れてシミスリンを振りかけて封印!!!!


片手に柄付きタワシを持ち、片手にピーチの香りボディーシャンプー(中身は台所用中性洗剤)


おもむろに中性洗剤をふりかけ、ゴシゴシと擦る。


どんどんピカピカ☆なってくると患者さんの全容が明らかになるのである。


「こんな顔やったんや・・・・・(・ω・)b」


さてどうして中性洗剤かというと・・・これは患者さんの負担を少なくするためなのである。


お肌に優しいボディーシャンプーだと汚れが落ちないのである。


だからゴシゴシ擦ることになり肌がボロボロになる。


ところが色々と試す中、中性洗剤だとそんなに擦らなくてきれいになるのである。特に油でギトギトした黒ずみなんかはボディーシャンプーでは落ちない。


中性洗剤ならではなのである!テレビのCMではないが、「すすいだ瞬間キュキュと落ちてる♪」って感じ・・・


しかし傍から見ると食器洗いの中性洗剤を体洗いに使用しているのはちょっと見た目も悪いし乱暴に思われるので、ピーチの香りの容器に移し替えて・・・・使っていた。


これは一般的なケース・・・・


さて・・・・特殊なケース・・・・・


汚れ具合は最強なのに、重症だから洗えない場合・・・・・これ最悪・・・・


シラミだらけで血圧計も巻けない・・・・・


それはそれはかなり壮絶な模様となるのである・・・・


ここから先は耐えれない方もいると思うので、自分は無理と思う人は次回は読まないでください。


続く・・・・